【インタビュー】真田広之、プロデューサー兼務の「SHOGUN 将軍」で日本の魂を追求

2024年2月28日 12:00


真田広之「間違いを払拭したい、いずれは正したいという思いが、今回は自分のエネルギー源になった」
真田広之「間違いを払拭したい、いずれは正したいという思いが、今回は自分のエネルギー源になった」

ハリウッドの制作陣が戦国時代の日本を描くドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」で、主演・プロデューサーを務めた俳優の真田広之が、プロモーションのため“凱旋帰国”を果たし、取材に応じた。日本の魂を本気で描くため、真田自身が尽力した渾身作。その誕生の裏には、たびたび見受けられるハリウッド作品の“変な日本”描写への違和感や悔しさがあったという。「間違いを払拭したい、いずれは正したいという思いが、今回は自分のエネルギー源になった」と振り返る真田が、完成に至る長い旅路を語りつくす。(取材・文/内田涼、撮影/間庭裕基

本作は、1980年にアメリカで実写ドラマ化され、驚異的な視聴率を記録したジェームズ・クラベルのベストセラー小説「SHOGUN」を、新たに映像化した戦国スペクタクル。「トップガン マーヴェリック」の原案を手がけたジャスティン・マークス、レイチェル・コンドウらハリウッドの制作陣が、関ヶ原の戦い前夜の日本を舞台に、徳川家康や石田三成ら歴史上の人物にインスパイアされた、天下獲りに向けた陰謀と策略の“謀り事”を壮大なスケールで紡ぎ出す。

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――企画からおよそ8年の歳月を経て、完成した「SHOGUN 将軍」。真田さんにとっての“長い旅路”は、どのように始まったのですか?

真田広之(以下略):当初は、一俳優として出演のオファーをいただきました。そこで、現代において「SHOGUN 将軍」をどんな風に作りたいのか、誰に見せたいのかーーと、いろんな質問をこちらから投げかけて、「自分が出演するなら、日本から時代劇のスペシャリストを雇わないと難しいですよ。それが可能なら、考えてみます」とお伝えしました。

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――真田さんご自身は、現代に「SHOGUN 将軍」を復活させる意義をどのようにお考えでしたか?

私が演じた吉井虎永という武将は、徳川家康にインスパイアされています。そこで考えるのは、やはり家康公の偉業ですよね。戦乱の世を終わらせて、その後260年に渡って、平和な時代を築き上げた。それが故に、自分にとってもヒーローでしたし、「まさにいまの時代に、こういうヒーローが必要なんじゃないか」という思いがよぎり、それこそが(オファーを)引き受けるモチベーションに値するんじゃないかと。

――真田さんが、米制作の連続ドラマで主演を務めるのは初めて。さらに、プロデューサーとして「SHOGUN 将軍」に深く関わることになりました。

出演オファーをいただいた後、2~3年、紆余曲折あったんですが、ジャスティンとレイチェルがクリエイターとして参加してくれることになって、彼らから「日本の文化を尊重したいので、プロデューサーも兼ねてくれないか」とお話をいただいたんです。これまでも、「日本人が見てもおかしくない日本」をハリウッド作品で描きたいという思いがあったので、これはいいチャンスになるんじゃないかと。それで、プロデューサーもお引き受けする決断をしました。

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――真田さんが指摘する「日本人が見てもおかしくない日本」を描くため、プロデューサーとして、どのように現場に働きかけたのですか?

まず、条件として「日本のスペシャリストを雇いますよ」と。美術、衣装、メイク、所作、それに殺陣ですよね。そういった各パートに、時代劇のスペシャリストを置くことが第一段階でした。30~40年前に、お仕事をご一緒した方々に声をかけましたし、適材適所で“チーム・ジャパン”を結成したんですね。

――これまで、ハリウッド作品が描きがちな“変な日本”描写に対して、違和感や悔しさを覚えるご経験はありましたか?

はい、多々ありますね。悔しさ、それにもどかしさも感じていましたし、そんな経験がバネになって、「間違いを払拭したい」「いずれは正したい」という思いが、今回は自分のエネルギー源となり、全てを注ぎ込むことができたと自負しています。

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――真田さんご自身も、日本人の立ち振る舞いや話し方、小道具に至るまで、入念にチェックし、現場でご尽力されたとうかがいました。

出来あがってくる衣装や小道具、美術セット。全てを倉庫でチェックし、ときにはダメ出しもして、修正をお願いしたり。今回、カルロス(・ロザリオ)が、コスチュームデザイナーとして頑張ってくれましたが、まれに帯や襟の幅が、若干違うこともありました。そういった部分を逐一チェックするわけで、大変といえば大変ですよね。それに、俳優部の皆さんには、お膳の配膳から、武器の使い方まで、所作にまつわる全てを学んでいただきました。

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――殺陣も本当にすばらしい仕上がりですね。

ありがとうございます。今回は「ラスト サムライ」で一緒だったスタントコーディネーターのラウロ(・チャートランド)が来てくれて、プラス日本からもスペシャリスト3人ほどに、参加してもらいました。そのチームで、アクションシーンを作っていき、自分もその場に立ち会いながら、それぞれのキャラクターやシチュエーションに合った殺陣をつけていきました。なので、ガッツリ関わったわけです。エキストラの皆さんも含めて、足さばきや目線、抜刀、納刀まで、手取り足取りお伝えして、撮影が始まると、今度は常にカメラの横でチェックし、アドバイスをして……。

――見せ方にも、強いこだわりを感じました。

やはり、殺陣が単なるエキサイティングな“ショータイム”にならないように。それが基本的なテーマでした。あくまで、アクションは、ドラマの延長線上にあるべきで、アクションとドラマがかけ離れず、一体化するのが理想。見せるためだけの余計な動きはつけないようにしました。

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――ここまでお話を聞いていると、つい忘れてしまうんですが、真田さんは主演俳優として、カメラの前にも立つんですよね。

はい。あらゆる準備や確認が終わると、ようやく自分のトレーラーに戻って、衣装の支度をして、かつらをつけて、現場に戻って「はい、本番」と(笑)。そこで俳優としての一日が始まるんです。

――ということですよね? 率直に俳優とプロデューサーの両立は、かなり負担なのではないかと想像するのですが。

でも、7~8年の間、プロデューサーとして関わると、作品における役割も自分のなかでは腑に落ちていましたし、あらゆる準備に参加したわけで、いざ(俳優として)カメラの前に立つ瞬間は、最高に自由と言いますか。「あっ、役に没頭していいんだ」と、安心して入り込むことができる。まるでご褒美のような感覚なんです。虎永として、そこに立ち、リアクト(反応)すればいいんですから、もう余計なことはしないぞと。そんな無我の境地ですね。

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――プロデューサーも兼ねたからこそ、ですね。

そうですね。プロデューサーとして動いている時間のほうが圧倒的に長いので、いつも以上に演じる楽しさを感じることができましたし、演技の大事さ、面白さを再認識できました。

――真田さんにとって、虎永はどんな人物に見えますか?

ミステリアスであり、策略家。パワフルで、ファミリーマンな一面もあれば、弱い部分をポーカーフェイスで隠し、部下思いの素顔もあるので、とにかく“人間”虎永を表現したいなと。全ての登場人物がそうですが、パターンやステレオタイプに陥らない、人間性にフォーカスした脚本づくりは「SHOGUN 将軍」のテーマでした。

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――本格的にハリウッド進出を果たした「ラスト サムライ」から、20年近い歳月が流れました。

ハリウッドの、アジアに対する門戸が大きく開いてきたなと感じています。自分自身「ラスト サムライ」からずっと、門を開けたい、壁を取っ払いたいという思いでしたし、1作、2作じゃ変えられないことも、わかっていたので、さまざまな作品に関わってきました。常にできる限り、“こじ開けて”俳優業を続けてきましたが、その結果、今回「SHOGUN 将軍」という作品で、プロデューサーとしても関わることができる時代になった。自分自身にとって、これは大きな変化ですし、この作品が将来的に見ても、大きな布石になってくれればいいなと思います。ようやくそんなことが実現できるようになった感慨もありますね。

――門戸が大きく開く、という意味では、「SHOGUN 将軍」がディズニープラスで世界配信されることにも、重要な意義があると思います。

俳優として、そしてプロデューサーとして、完成した作品をひとりでも多くの人に見ていただくのが最高の幸せなので、世界同時配信は本当にありがたいですね。もちろん、劇場公開映画へのこだわりもありますけど、配信が主流になりつつあるいまの時代、「SHOGUN 将軍」を通して、初めて日本の時代劇に触れる人も多いはず。そこから興味を持ってもらい、時代劇ファンが増えればうれしいですし、配信ですから、裾野の広がり方も果てしない。だから“種まき”をしているような喜びも感じますね。

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――ありがとうございます。最後に、ハリウッドで確固たる地位を築いた真田さんが思い描く、さらなる目標を教えてください。

とにかく続けることが大切だと思っています。俳優として、この年だから初めて挑むことができる役どころもありますし、そうなれば自分にとってはデビュー戦ですから。何より「SHOGUN 将軍」の経験で、プロデューサー業の面白さと重要性を改めて感じました。ぜひ、今後も続けていきたいですし、日本のすばらしい人材、題材、美学を世界に伝えていく橋渡しができればいいなと思っています。

SHOGUN 将軍」(全10話)は、初回2話がディズニープラスの「スター」で独占配信中で、毎週1話ずつ配信される(最終話は4月23日配信予定)。

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