口コミでヒットを記録した「悪なき殺人」再上映! ドミニク・モル監督作「12日の殺人」公開記念
2024年2月24日 10:00
第75回カンヌ国際映画祭のプレミア部門に出品され、第48回セザール賞で最多6部門を受賞したドミニク・モル監督作「12日の殺人」の公開を記念し、モル監督の前作「悪なき殺人」が、3月8日~14日に再上映されることが決定した。
第32回東京国際映画祭のコンペティション部門で最優秀女優賞、観客賞を獲得し、口コミでヒットを記録したサスペンス「悪なき殺人」。フランスの山間の人里離れた町で、吹雪の夜、ある女性が行方不明となる事件が発生する。事件への関与を疑われた農夫ジョゼフ、彼と不倫するアリス、アリスの夫ミシェルら5人の男女が、失踪事件を軸に思いもよらない形でつながっていく。5つの異なる欲望と狂気、そして偶然の連鎖が、フランスの雪深い田舎町からアフリカ・コートジボワールにまたがる壮大なミステリーへと発展する。
モル監督の新作「12日の殺人」では、10月12日の夜、フランス南東の地方都市グルノーブルで、21歳の女子大学生クララが何者かに火をつけられ、翌朝焼死体で発見された事件を描く。事件を担当するのは、昇進したばかりの刑事ヨアン(バスティアン・ブイヨン)と、ベテラン刑事のマルソー(ブーリ・ランネール)。容疑者となりうる関係者への聞き込みのなかで、男たちが全員クララと関係していたことがわかる。やがてクララの殺害が計画的であることは判明したが、容疑者を特定することができずにいた。悲惨な事件であるにも関わらず、マスコミは興味を失い、いつしか迷宮入りに。必死の捜査を続けるヨアンは、知らぬ間に事件の闇へと飲みこまれていく。
物語の見どころのひとつは、クララの親友ナニー、裁判官ベルトラン、新人捜査官ナディアら女性たちが男性社会に切り込む、フェミニズム的なテーマだ。事件を追うヨアン率いる捜査班は、男性7人という男所帯。さらに、捜査線上に浮上する容疑者たちも全員男性。そんな男性ばかりの本作で、女性たちは行き詰まる捜査のなかで、事件の核心を突いていく。
被害者クララは21歳で容姿端麗。捜査班がクララの男性関係を調べていくと、彼女と関係を持っていた男たちは、一様にして彼女が“奔放な女性”だったことを示唆する。捜査官たちは、男性による犯行であることを確信。しかし、ヨアンが親友ナニーにクララの男性関係を聞くと、「なぜクララが誰と寝たかを知ることがそんなに重要なのか」と、泣きながら問い詰められる。
そして事件から時が経ち、裁判官ベルトランは、「男女関係に正解も間違いもない」と諭し、男性による犯行だと信じて疑わないヨアンらの偏った先入観を排し、捜査再開を示唆。新たにチームに加わった新人捜査官ナディアは、「罪を犯すのも捜査するのもほぼ男性って変ですよね。男の世界ね」と、ヨアンに疑問を投げかける。そんな彼女たちの言葉の数々が、ヨアンやほかの男性捜査官たちが気付かなかった、事件の新たな側面を浮き彫りにしていく。
モル監督は、「男性による暴力事件を捜査するのはほとんどが男性です。もし殊勝にも映画やドラマで女性の捜査官が活躍している姿が描かれていたとしても、現実は、いまだに“男社会”なのです。彼ら男性捜査官が自分の娘やパートナー、女性の友人や姉妹が犠牲になった事件を捜査することになったら何を思うだろうか? 容疑者を、そして被害者をどう見るだろうか? これら全ての要素が彼らにどのような感情を引き起こすだろうか? 映画を見る人がそういった疑問を抱くきっかけになり、いわゆる”実存的不安”を感じてもらえればと思います」と、物語の中核を女性に託すことで、観客が現実の男社会に疑問を抱くきっかけとしてほしいという思いを明かした。
「悪なき殺人」は、3月8日~14日に東京・新宿武蔵野館で再上映される。「12日の殺人」は3月15日から、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
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