【インタビュー】松村北斗×上白石萌音が体現した、救いあう関係 横並びのどこまでも魅力的な“おしゃべり”
2024年2月7日 10:00
パニック障害とPMS(月経前症候群)を抱え、生きづらさを感じる男女。そんなふたりが、「それでも私たちは救いあえる。」と、互いに手を伸ばす――。三宅唱監督(「ケイコ 目を澄ませて」)が、瀬尾まいこ氏の著作を映画化する「夜明けのすべて」が、2月9日に公開される。第74回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門 に正式出品が決定し、世界から注目を集めている。NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(以下「カムカム」)で夫婦を演じ、本作で再共演を果たした松村北斗(「SixTONES」)と上白石萌音に、話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/間庭裕基)
PMSでイライラが抑えられなくなる藤沢さん(上白石)はある日、同僚・山添くん(松村)の小さな行動がきっかけで怒りを爆発させる。しかし、転職してきたばかりにも関わらず、やる気がなさそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、さまざまなことを諦め、生きがいも気力も失っていたのだった。職場の人々の理解に支えられながら、友だちでも恋人でもないが、どこか同志のような特別な絆が芽生えていくふたり。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。
三宅監督は、本作を作り上げる際の軸として、「一組のユニークな男女が恋愛以外の方法でいかに互いに幸せに生きうるかを描ける可能性」に言及している。藤沢さんの「(山添くんとは)たまたま隣の席に座ってるだけ」というセリフもある通り、恋愛に発展するわけではなく、同僚としてただ「隣にいた」ふたり。しかし、自分だけではどうにもならない状況を、互いのことを知ることで、ともに乗り越えていく。パニック障害とPMSだけではなく、身近な人を亡くした喪失感を描いている点も、見逃せない。息もできないような苦しい日々でも、隣に誰かがいることで、呼吸ができるようになる。本作は、そんなふたりのささやかな日々を、彼らの見つめる日常の美しさや季節の移ろいとともにとらえている。
撮影期間中、山添くんと藤沢さんのコミュニケーション方法に影響を受けたというふたりは、インタビューでも“横並び”で語り合った。互いの声に耳を傾けながら、時折視線を交わす姿は、確かに山添くんと藤沢さんに重なり、その心地よい会話を、いつまでも聞いていたくなった。ふたりだからこそ醸し出すことができた距離感と空気感とともに、どこまでも魅力的な“おしゃべり”が心に残る作品だ。
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若松孝二監督が代表を務めた若松プロダクションの黎明期を描いた映画「止められるか、俺たちを」の続編で、若松監督が名古屋に作ったミニシアター「シネマスコーレ」を舞台に描いた青春群像劇。 熱くなることがカッコ悪いと思われるようになった1980年代。ビデオの普及によって人々の映画館離れが進む中、若松孝二はそんな時代に逆行するように名古屋にミニシアター「シネマスコーレ」を立ち上げる。支配人に抜てきされたのは、結婚を機に東京の文芸坐を辞めて地元名古屋でビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治で、木全は若松に振り回されながらも持ち前の明るさで経済的危機を乗り越えていく。そんなシネマスコーレには、金本法子、井上淳一ら映画に人生をジャックされた若者たちが吸い寄せられてくる。 前作に続いて井浦新が若松孝二を演じ、木全役を東出昌大、金本役を芋生悠、井上役を杉田雷麟が務める。前作で脚本を担当した井上淳一が監督・脚本を手がけ、自身の経験をもとに撮りあげた。
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