本格的な文法書も! ゼロから生まれた完全オリジナル言語「ウーパナンタ語」誕生秘話【ワンダーハッチの舞台裏 連載最終回】
2024年1月31日 09:00
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実写とアニメで描く、ディズニープラスの日本発オリジナル冒険ファンタジー「ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」の最終話が、ディズニープラスで配信され、早くもファンから“ロス”を訴える声があがっている。特に大きな話題を集めたのが、本作のために独自に創作されたオリジナル言語「ウーパナンタ語」だ。キャスト陣も習得に苦労したという架空言語は、いかにして生まれたのか? 映画.com独占連載(全3回)の最終回では、異世界のリアリティを揺るぎないものにした「ウーパナンタ語」誕生の舞台裏に迫る。あわせて、ウーパナンタ語の文法書や、本編映像(https://youtu.be/3FH_tMDfHRo?si=7sjJSwR3eG5Oh2Xu)と対応した日本語とウーパナンタ語が併記された資料も入手した。
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原作を持たない完全オリジナルである本作では、詳細な設定資料が作成され、アニメで描かれる異世界・ウーパナンタに住む人の文化、環境、歴史など、作品を見ているだけでは気づかないような、細部にわたるこだわりが詰まっている。
そのなかでも、ウーパナンタに住む人が話すウーパナンタ語は、地球上に存在するどの言語とも違う完全オリジナルのもので、SNSでは「単純にジュブナイルものかと思ったが、アニメの世界の方でオリジナル言語話しててちょっとビビった」「言語までつくりだされてるってすごいな」と、驚きの声が上がっている。
ウーパナンタ語の創作に関して、萩原健太郎監督は「最初は世界中に出ていき、映像として残るので、話者の少ない言語をモチーフにして作ろうと思った」と、世界配信を視野に、オリジナル言語の構想を抱いていたと振り返る。
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萩原監督と共同で作業を進めたのが、本作の言語指導を担当する中野智宏氏だ。小学5年生の頃から、人工世界や人工言語の創作活動を行い、かつてバラエティ番組「タモリ倶楽部」でも取り上げられたことのある異色の経歴を持つ中野氏が、完全オリジナルの言語・ウーパナンタ語を新たに作り上げた。
萩原監督が「どこの国の人が聞いても、全く理解できない言葉になっていると思います」と自信を見せるウーパナンタ語。しかし、「人工言語を作る際に、実在の言語を基準にしてしまうと、文化盗用となってしまう」懸念を乗り越える必要があった。
そのため、中野氏は「文化盗用を防ぐために、特に『この言語を基にした』というのは、あえてないようにしています。ただ、結果発音ができないなど、人間が全く使えないものでは困るため、今回音声の面ではカンボジア語など、文法の面ではチベット語などを参考にした箇所はあります」と解説する。
また「自然に存在していても違和感のないように、実際の言語学の知見を生かして作りました。私の専門が歴史言語学なので、歴史的経緯を踏まえた文法ルールを作るほか、方言やレジスターと呼ばれるシチュエーションごとの語彙・文法の変化などを、ウーパナンタ語のなかにも持たせる工夫をしました」と、ウーパナンタをリアルに感じられる工夫を、言語から取り入れたことを明かしていた。
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一方、強いこだわりと高いクオリティゆえ、「ウーパナンタ語」の習得に苦労したのが、ウーパナンタの落ちこぼれ“ドラゴン乗り”タイムを演じる奥平大兼らキャスト陣だ。
「奥平さんはウーパナンタ語の長ゼリフのシーンがあり、本人もそのシーンはアクションシーン以上に緊張していたのですが、さらっとこなしてくれて。相当裏で努力してくれていたのだろうなと思います」(萩原監督)。
当の奥平本人は、ウーパナンタ語について「とんでもないですね。最初にウーパナンタ語という、このお話だけに登場する言語があると聞いたとき、すごいなと思ったんですけど、ちょっとなめていたところがありました。極端に難しいわけじゃないだろうと思っていたら難しくて」と、架空のオリジナル言語習得という、これまでにない苦労を明かす。
しかし「感情的なシーンなどは、通常日本語でお芝居するときは、トーンが変わったり、気持ちによってセリフの言い方も変わると思いますが、それは日本語でずっと話しているからこそ自然に伝わるもの。タイム自身はウーパナンタ語を話している時間の方が長いキャラクターなので、そこでちょっとでも妥協したりするのは嫌でした」と、ウーパナンタで生きてきた主人公を演じきるため、挑み続ける姿勢を貫いた。
ウーパナンタに君臨する“最恐”にして最悪の存在・ジャイロの声を担当した津田健次郎も「言葉に関してはイントネーションだったり、発音だったりが大変でした」と明かす。「元になる近しい言葉みたいなものから、しっかりと作り上げている言葉なので、オリジナルの言語ですけど、つくり上げた方からの発音指導みたいなものもいただきました」と、現場でウーパナンタ語の指導を行った中野氏の存在の大きさを語る。
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現場の中野氏は、「母音の発音の使い分け。また、日本語には撥音の“ん”と、促音の“っ”以外の子音で終わる音節が基本的になく、一方ウーパナンタ語には、子音で終わる音節が存在するので、そのあたりの注意を伝えました」と、かなり専門的なアドバイスを送ったそうだ。さらに、本格的なウーパナンタ語の文法書や、日本語訳とともに発音が載せられた資料なども作成し、まるで本当に存在する語学の勉強のように、本格的に取り組める環境を整え、キャストの演技をサポートした。
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本作では、よりリアリティを出すためにウーパナンタ語だけでなく、日本語のセリフにも、言語へのこだわりが垣間見える。萩原監督は「ウーパナンタの人々を演じているのは日本人ですが、例えばアクタ(新田真剣佑)は聞く能力が優れているので、日本語の上達能力も早いとか、スペース(森田剛)も10年現実世界に住んでいるのでしゃべれるなど、キャラクターごとにもそれぞれ少しずつ変化させていきました」と、ワンシーンごとに強い思いを込めたと話している。
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当初は、誰も正解を知らなかった完全オリジナル言語・ウーパナンタ語。しかし、ゼロから生み出す創造者のこだわりと熱意、それに応えたキャスト陣の奮闘によって、いまや「ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」を語る上で欠かせない要素となり、視聴者にとっても、未知なる異世界・ウーパナンタを身近に、そしてリアルに感じる理由になっている。
「ワンダーハッチ 空飛ぶ竜の島」(全8話)は、ディズニープラス「スター」で、独占配信中。
フォトギャラリー
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