消えつつある香港の“ネオン”に思いを馳せて サイモン・ヤム「香港の輝きは永遠に続くと思っています」【アジア映画コラム】
2024年1月17日 07:00
北米と肩を並べるほどの産業規模となった中国映画市場。注目作が公開されるたび、驚天動地の興行収入をたたき出していますが、皆さんはその実態をしっかりと把握しているでしょうか? 中国最大のSNS「微博(ウェイボー)」のフォロワー数280万人を有する映画ジャーナリスト・徐昊辰(じょ・こうしん)さんに、同市場の“リアル”、そしてアジア映画関連の話題を語ってもらいます!
昨年末12月27日より、ウォン・カーウァイ監督のドラマ作品「繁花」が中国で放送・配信され、爆発的な社会現象となりました。80年代下旬~90年代上旬の上海を舞台にした本作は、主人公・阿宝が激動の時代に奮闘する様子、そして数々の出会いを描いた美しい“時代モノ”です。
物語は主に上海ネオンライトの名所「黄河路」で展開されていて、今や多くの市民や観光客が殺到。上海文化・歴史に新たなブームを巻き起こしたんです。多くの市民は、かつての“黄河路のネオン”について、自分の思い出をネット上で共有していました。
ネオンサインといえば、おそらく多くの方が“香港”を思い出すでしょう。
いまの香港からは、どんどんネオンサインが消えています。これからどうなるのだろう……多くの香港市民は複雑な気持ちを抱いています。2022年、新鋭監督アナスタシア・ツァンは“ネオンが消えた香港”を舞台にした素敵なヒューマンドラマ「燈火(ネオン)は消えず」を完成させました(日本公開は2024年1月12日)。
今回は、アナスタシア・ツァン監督、出演したサイモン・ヤムにインタビューを敢行。ネオン、そして香港について、さまざまなお話を聞かせていただきました。
●なぜ“ネオン”を題材に? 未亡人との共通点に「喪失」というテーマを見出す
その後、脚本を書いた時に、未亡人と“ネオン”の共通点を見つけました。それは「喪失」というテーマです。“ネオン”は消えていくものでもありますよね。ですから、今回の物語の中で「妻は夫を失う」「“ネオン”は社会から徐々に消えていく」という2つの要素が融合していきます。
今回の映画は、“いま”の香港をどのように描くかという点で、かなり悩みました。いまの香港の“状態”“変化”“複雑さ”を描きたいと考えました。そこから、香港はいまどのような都市になったのか――いまの香港のアイデンティティを探りたかったのです。
●脚本を読む前から出演を決めていた サイモン・ヤム「“ネオン”は、それほど特別な存在」
“ネオン”の中のフィラメントは“心”だと考えています。これは最新技術にはないものです。“ネオン”でしか出せない色があります。今の香港の経済は少し低迷期に入っていますが、きっといつか“ネオン”が光る。私は、そう信じています。香港は本当に美しい町です。香港の輝きは永遠に続くと思っています。
●シルビア・チャンの起用理由は? サイモン・ヤム「チャン姉さんは私の女神」
正直、こんなに順調に決まるとは思ってもいませんでした。ちなみに、プロデューサーがチャンさんに台本を送った時、私のビデオメッセージも一緒に送りました。チャンさんを説得したかったので、数え切れないほどのビデオメッセージを、満足いくまで撮ったんです(笑)。最終的にOKをいただいた時は、まるで自分がチャンさんが行っていたオーディションを通過したかのような嬉しい気持ちになりました。
でも、実際のところ、チャンさんはちょくちょく私にアドバイスをくれました。脚本を読んだ後、キャラクター設定について、自分なりの考えをシェアしてくれたり、作風に関して意見を出してくれました。「近年やってきた役は、悲しすぎる。息子が死ぬか、旦那が死ぬ設定なので、今回は悲しい雰囲気をあまり表に出さないように、楽しく幸せな映画を作りましょう」と言っていましたね。
また、この作品を撮った時、ちょうどコロナは収束していなく、大変な時期でした。私は大陸でも仕事があったので、この映画のために、合計30日間以上も隔離されました。それでも、私はこのストーリーが大好きだったんです。この作品のためなら、何でもします!
●消えつつある香港のネオン文化について
香港のネオン業界はすでに斜陽となっており、職人も高齢者ばかりで10人足らずの状況です。弟子も募集していますが、ある意味、生涯をかける職業なので、リスクも大きいですし、成功できるかどうかもわからない。ですから、ネオン職人はどんどん減っていっています。更に“ネオン”自体も消えていく状況です……。しかし、いま若いネオンデザイナーは、いわゆる広告としての“ネオン”ではなく、インスタレーション・アートにしようとしています。皆さんが新たな形で、“ネオン”の文化を継続できないかと模索しているんです。
●東京国際映画祭でワールドプレミア 反響は?
●いまの香港映画界について サイモン・ヤム、新人監督には「自分が好きな物語を撮ってほしい」
香港映画界を振り返ってみると“ネオン”のように輝いていた時代もありましたが、今は昔ほどの“輝き”はなく、製作本数も年間100~200本から、現在は20~40本程度にまで落ち込んでいます。 このような状況下で、我々は産業から芸術へ転換するのか、それとも産業から新たな道を見出すのか、という問題に直面せざるを得ません。かつて私たちが誇った警察映画やカンフー映画、更にアクション映画は、もう流行らない。しかし、香港映画人は香港の観客に向けて、常に新しい作品を送り続けています。
昨今、香港の新人監督がとても多くなっていますが、問題は彼らが最初の2本を撮り終えた後、どうなるのかということです。予算は同じぐらいの作品が多いせいか、新人監督たちは皆似たような作品を作っていますし、しかもヒューマニズムを重視した作品ばかりです。映画産業全体がこのまま進むのであれば、香港映画はもっとジャンル映画を発展させる必要があると思っています。
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