2023年アニメビジネス10大ニュース 世界市場が過去最高、スタジオジブリ子会社化など【数土直志の「月刊アニメビジネス」】
2023年12月31日 21:00
映画.comが運営するアニメ情報サイト「アニメハック」(https://anime.eiga.com/)では、アニメに関するコラムを多数掲載しています。そのなかから、今年のアニメビジネスに関する10大ニュースをテーマにした、ジャーナリストの数土直志さんによるコラムをご紹介します。(アニメハック編集部)
何十年も昔から、日本アニメは世界で人気とされてきた。しかし2010年以降の人気の広がりはこれまでを凌駕する勢いで、2020年代はさらなる盛り上がりを迎えつつある。今年12月に発表された日本動画協会の調査では、22年の日本アニメ関連の世界市場は2兆9277億円と史上最高を記録した。
こんな流れはアニメビジネスにも反映し、23年も大激変の様相を呈している。ここでなかでも目立った出来事を10大ニュースとしてまとめてみた。
2. 宮崎駿監督最新作「君たちはどう生きるか」宣伝ゼロで公開
3. 日本アニメの世界市場(2022年)が過去最高、3兆円に迫る
4. ベルリン国際映画祭オフィシャルコンペに「すずめの戸締まり」
5. 新しいCG表現も提示、原作者監督の「THE FIRST SLAM DUNK」が大ヒット
6. ソニー・ピクチャーズがアニメ専門2局をノジマに売却
7. 東宝がタイのCGスタジオ Igloo Studioに出資
8. 日本コンテンツの海外アニメ化相次ぐ、「マリオ」から「ULTRAMAN」まで
9. 国内映画祭が海外長編アニメーションに注目
10. 「狂気山脈」アニメ制作クラウドファンディングに約3億2000万円
23年7月14日に宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」が公開された。前作「風立ちぬ」より10年ぶり、引退宣言撤回後の初長編として関心を集めたが、劇場予告やテレビCMなどの広告を一切せず、試写会もしない異例のプロモーションが話題を呼んだ。綿密にプロモーションを練り、事前に露出を高める現在の映画宣伝に一石を投じる。
興行面では国内84億円とこれまでの作品より小さいが、むしろ熱狂は海外で起きている。「The Boy and the Heron(少年と鷺)」とタイトルを変えて12月8日に北米公開されると週末興行1位に輝き、スタジオジブリ作品最大ヒットになった。12月25日までにニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなどの映画批評家協会で最優秀アニメーション映画賞を受賞、ゴールデングローブ賞にもノミネート、アカデミー賞でも最有力候補と言ってよいだろう。
さらにこれを超えるニュースが10月に伝えられた。日本テレビによるスタジオジブリの子会社化だ。日本テレビは創業メンバーなどの個人株主から株式を取得する。1985年の設立以来、38年間独自の経営を続け、理想のアニメスタジオともされたスタジオジブリが大手放送局の傘下になる。
宮崎駿のように熱狂を巻き起こす日本の監督は今後現れるのだろうか? 日本には才能あるアニメ監督がたくさんおり、そこに期待がかかる。新海誠はその筆頭だ。22年7月国内公開の「すずめの戸締まり」が、2月にベルリン国際映画祭にオフィシャルコンペティションに選出された。日本のアニメ映画としては、02年の宮崎駿「千と千尋の神隠し」以来、実に21年ぶりの快挙である。ゴールデングローブ賞では「君たちはどう生きるか」とともに長編アニメーション映画賞にノミネートされている。日本アニメの2作品同時ノミネートは史上初である。
しかし新海誠の評価と人気は、むしろアジア圏、ファンムーブメントにある。「すずめの戸締まり」が中国と韓国で、日本映画の興行収入1位の記録を塗りかえたのはこれを象徴する。
もうひとつ中国、韓国、台湾と東アジア地域で大ヒットしたのが「THE FIRST SLAM DUNK」である。90年代のアニメ化で東アジアに一大旋風を巻き起こしたが、今回の劇場映画では原作者の井上雄彦が自ら監督・脚本を務めた。ストーリーの面白さだけでなく、漫画の絵がスクリーンで動き出すかのようなCG表現は業界関係者からも高い評価を受けた。
アニメビジネスが大きくなるにつれ、巨大企業がアニメ事業を拡大し始めている。東宝は22年のTOHO Animation Studioのグループ化に続き、タイの有力CGスタジオIgloo Studioに32パーセント出資した。国内で不足する制作現場を海外に求めるだけでなく、成長する東南アジア市場を視野にする。
アニメスタジオの新設やグループ化、海外企業買収など増える一方で、ソニー・ピクチャーズはアニメ事業の一部を切り離した。傘下のアニメ専門放送局(CS)のアニマックスとキッズステーションを家電大手販売のノジマに譲渡した。ソニーグループがアニメ製作や配信により集中するためとみられる。
日本のアニメやマンガが急速に国際化するなかで、逆に日本作品を海外で利用する動きも強まっている。世界的な大ヒットになった「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、ユニバーサル・ピクチャーズと任天堂の共同製作、世界でトップクラスのCGアニメーション技術のイルミネーションが制作する。Netflixオリジナルドラマの実写版「ONE PIECE」も視聴数でグローバル週間1位になる人気だ。
こうした傾向は今後も続く。Netflixでは米国ILMによる「ULTRAMAN: RISING」、中国テンセントビデオは「花の子ルンルン」にインスパイアされた新作、インドではテレビ朝日と共同で「おぼっちゃまくん」のリブート版の制作が進んでいる。今年制作発表された「UFOロボグレンダイザー」のリブート版「グレンダイザーU」も、サウジアラビアのマンガプロダクションの企画参加がなければ実現しなかったはずだ。いまや世界各国が映像化原作の宝庫として日本に目をつける。
アニメビジネスが巨大化する一方で、文化レベルでの相互交流も重要になってくる。日本アニメの海外進出が盛んな一方で、これまで日本は海外作品の取り入れが十分でなかった。近年そうした状況は変わりつつあり、日本での海外長編アニメーション上映がトレンドだ。
23年3月に長編を中心にした新潟国際アニメーション映画祭がスタート、東京国際映画祭もアニメーション部門を刷新して海外長編を大きく取り入れた。24年第2回開催のひろしまアニメーションシーズンも長編コンペティションを開始する。海外作品を上映する場が広がっている。
ファンムーブメントでは、「狂気山脈」アニメ映画作プロジェクトのクラウドファンディングに約3億2000万円が集まったのが大きなニュースだ。パイロット版のクラウドファンディングの約1億2000万円も加えると4億4000万円の支援を受けたことになる。ファン支援だけではアニメ全編制作の資金を集めるのは難しいとされていた常識を覆す。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
映画.com編集部もドハマリ中
【人生の楽しみが一個、増えた】半端ない中毒性と自由度の“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。