ホラーの“怖さ”とは、具体的に何なのか? 秀逸ホラー手掛けた監督&サウンドデザイナーが語る“恐怖の本質”

2023年11月4日 20:00


あの「死霊館 エンフィールド事件」の元ネタとなった、世界で最も有名なポルターガイスト事件を映像化
あの「死霊館 エンフィールド事件」の元ネタとなった、世界で最も有名なポルターガイスト事件を映像化

“世界で最も有名なポルターガイスト事件”を映像化したApple TV+のオリジナルシリーズ「エンフィールドのポルターガイスト」(10月27日から配信中)。ある母子を襲う実際にあった怪奇現象を、当時の音声を使用して再現した意欲作だ。

ホラーは言うまでもなく人気ジャンルのひとつだが、「ホラーの何が怖いのか」を言語化することは意外と難しい。そこで本作監督のジェリー・ロスウェル、サウンドデザインを務めたベン・ベアードに取材し、秀逸ホラーを生み出したクリエイターの視点から「人はホラーのどんなところに恐怖を感じるのか?」を語ってもらった。


【「エンフィールドのポルターガイスト」作品概要】


1977年に発生し、イギリス全土を震撼させた“エンフィールドのポルターガイスト事件”。あの「死霊館 エンフィールド事件」の元ネタとなった、世界で最も有名なポルターガイスト事件である。

心霊現象としては異例なほど長期間かつ詳細に調査されており、記録が多く残されていることでも有名。音声記録は実に250時間を超えているそうで、本作「エンフィールドのポルターガイスト」は、その実際の音声記録を使用するとともに、俳優の演技を用いた映像により、当時の顛末を再現している。


【インタビュー:ホラーはなぜ怖い?】

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●より怖いのは「超常現象が“起こりそう”という予感」

もともとドキュメンタリーを中心に活動し、ホラーの演出は初となるジェリー・ロスウェル監督。本作「エンフィールドのポルターガイスト」は、実際の録音テープから感じた“恐怖”を出発点にしていると明かす。

「私たちの出発点は、1977年から78年にかけて録音されたテープですが、リールが回転する時のシュルシュルというテープの音には、それ自体ぞっとする雰囲気がありました」

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さらに、本作独特の作風として「大部分の超常現象はカメラに写っておらず、証言によって語られています」といい、そのように演出した理由や狙いを「私は出来事そのものと同じくらい、それらを語る人々の物語に興味がありました。“ジャンプスケア”などの演出や、亡霊を映すようなありふれたホラーの常套手段を避け、普通の生活の中に潜む不気味さ、自分の肩越しのよく見えない場所に、見えない何かが潜んでいるような感覚を作り出そうとしました」と語る。

つまるところ、ロスウェル監督は音響や視覚演出など、ホラーを構成する要素の何が最も怖いと考えるだろうか? 「多くの場合、超常現象そのものよりも、“超常的なことが起こりそう”という予感の方が怖い」。

ゆえに本作では、何かが起こる予感がことさら臨場感たっぷりに演出され、観客の背筋を凍らせるのだ。


●“音がする”ではなく、“音がしない”ことで恐怖を煽る…プロの視点が興味深い

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一方でサウンドデザインを担ったベン・ベアードは、ホラーにおける音の効果について「確かにホラーではサウンドが非常に重要な要素を担っています。サウンドによって、その場に存在しないものを作り出したり、見ているものとは真逆の雰囲気を醸し出したりすることができます」と語る。

ベアード「ドキッとする瞬間は、流血しているなどの視覚的表現でも作り出せますが、サウンドによるところも非常に大きいのは間違いありません」

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しかしながら、“音がある”と同じくらい、“音がない”状態も重要なのだという。「ホラーでは、サウンドを一切使わずに緊張感を出すという手法がときどき用いられます。視聴者は無防備な感覚を味わい、突然どこにも逃げ隠れできなくなります。視聴者がそのように無防備な状態になってしまえばこっちのもので、好きなように怖がらせることができます」と、興味深いプロのテクニックを明かした。


●「エンフィールドのポルターガイスト」は、「人生のトラウマに遭遇した人々の物語」

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実話を基にした作品に対し、観客は往々にして「フィクションではなく、実際にあったこと」と感じる。ロスウェル監督も97年の“エンフィールドのポルターガイスト事件”のニュースをリアルタイムに体験した1人であり、当時の驚きが製作に影響しているのだという。

ロスウェル監督「この事件のことはよく覚えています。イギリスで最大の発行部数を誇る新聞の1面トップを飾ったニュースでした。当時のティーンエイジャーはみな、あの事件に動揺したと思います」

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そのうえで、本作の物語の最大の特徴について、こう明かしている。「いくつもの理解不能で説明のつかない体験に直面した人々、何らかの形で“人生のトラウマ”に関連する出来事に遭遇した人々の物語です」。

そして最後に、ロスウェル監督は「日本のみなさんがこのシリーズを観てくださることに心から感謝します。私とは異なる文化を持ち、語り継がれてきた超常現象も異なる日本のみなさんが、この作品をどのようにご覧になるか、大変興味深いです」と、日本の観客に向けメッセージ。

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さらにベアードは、“実際の音声記録”を使用したことの意味を「人は多くの場合、見たり聞いたりしたものによって考え方を操られ、それを真実だと思い込むようになります。オリジナルの録音を提示したり使用したりすれば、その効果はさらに強まります」と明かす。そのうえで、「ホラーというのは、まったくの架空の状況を作り出しつつ、ある程度真実だと視聴者に思わせるような形で表現されます。つまり、悪いことが起きると、視聴者はそれを真実だと感じます。このシリーズにはその手の仕掛けが随所にちりばめられています」と迫真性を強調した。

「エンフィールドのポルターガイスト」は、Apple TV+で配信中。

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