90年代の中国の工場で起こった衝撃的な事件が題材 「ロングショット」監督が製作意図を明かす【第36回東京国際映画祭】
2023年10月25日 17:00
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第36回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された「ロングショット」の上映が10月24日、東京・丸の内TOEIで行われ、本作キャストのズー・フォン、ジョウ・ジェンジエ、ガオ・ポン監督がQ&Aに参加し、観客からの質問に答えた。
テレビ広告のディレクターや、ネットワークTVシリーズの脚本や監督などのキャリアを持つポン監督にとって、長編映画監督デビュー作となる本作は、リストラに揺れる1990年代半ばの中国東北部の工場で起こった衝撃的な事件を題材に、体制の急激な変化の中で苦闘する人々を描く衝撃作。上映後、登壇したポン監督は「この作品は自分の初長編映画であり、日本に来るのも初めてなので、本当にうれしいですね」と笑顔を見せた。
本作は、国営企業の民営化が進行する中、破綻する工場が続出した90年代なかばの中国で起こった事件を題材としている。その時代をなぜ描いたのか質問されたポン監督は、「90年代というのは中国で大きな変化が起こった年でした。ちょうどその頃は、自分にとっては少年時代なので、この時代については断片的な記憶しかないんです。だからロジカルに語ることはできないんですが、大人になってから改めてその時代を知ることとなり、より時代に対する理解が進むようになった。だからその時にどういうことが起きたのか、追求したいと思った」と明かす。
そして主人公が国際大会の出場経験がある射撃選手だったということも踏まえ、「もうひとつ関心があったのがその時代のアスリートについて。あの時代のアスリートを目指す少年少女たちは10代の幼い時に各地から選抜されて、ひとところに集められ、厳しい訓練を行っていたそうです。彼らの目標はナショナルチームで活躍すること、チャンピオンになることだったわけなんです。そんな彼らと、社会の時代背景が結びついていること、それをこの作品を通じて表現したいと思ったんです」と付け加えた。
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一方のフォンは、「最初に脚本をいただいた時に、若い監督の初監督作であることに興味をもちました。でも監督に実際にお会いしてみたらそんなに若くないかもなとも思ったんですけどね」と冗談めかしながらも、「その時に、長い時間を費やして監督と話をしたんですけど、その時に、この監督ならきちんと撮ってくれるはずだ、という信頼が生まれました」と述懐。ジェンジエも「このお話をもらったのが大学3年生の時。オーディションで面接をしてもらえることになり、監督と会いました。僕のような若い学生が役者として映画に参加できるというのは本当に光栄なことでしたし、そして何より僕を惹きつけたのは、(劇中で演じる)シャオジュンが負けず嫌いで、とことん突き詰めていく性格であるということ。そこが胸を打ちました」としみじみ振り返った。
本作では、フォン演じる主人公のグーが射撃の名手であることが、物語に大きな影響を与えているが、その役づくりに関して「この映画は人間が成長していく過程の物語だと思いました。人間が成長するためには何かを犠牲にしなくてはいけない。時には原則を曲げたり、信念を捨て去ったりしなければならない時もある。映画ではその点について明確な答えは出ていないですが、そうしたことを何かしたら感じ取っていただけたら」と切り出すと、「射撃についてはとにかく練習を重ねました」と明かした。
ポン監督が補足するように、「ズー・フォンさんは俳優であると同時に、書家でもあるわけです。毎日書道の練習をしていて、すばらしい書をお書きになります。そもそも射撃というのは、ただ形を練習すればできるというものではなく、非常に内面的な、心のコントロールが必要になってくるわけです。ズー・フォンさんは書の修業を積んでいる方なので、必ずや射撃選手の役をしっかりとやってくれると信じていました」と語るなど、全幅の信頼を寄せている様子だった。
第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
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