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ロバート・マッコールは善人か、悪人か アントワン・フークア監督が語る「イコライザー THE FINAL」撮影秘話

2023年10月5日 09:00

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アントワン・フークア監督
アントワン・フークア監督

デンゼル・ワシントンが主演を務める大ヒットアクション「イコライザー」シリーズ3作目にして最終章となる「イコライザー THE FINAL」(10月6日公開/R15+指定)。同作の監督を務めているのは、前2作を成功に導いたアントワン・フークアだ。

元CIAトップエージェントのロバート・マッコール(ワシントン)が、世の悪を完全抹消する“仕事”請負人(通称:イコライザー)として暗躍する姿をスタイリッシュに描いた「イコライザー」シリーズ。新作の舞台は、イタリア。ローマ、ナポリ、アマルフィなどで、シリーズ初の海外ロケを敢行している。

このほどフークア監督へのインタビューを実施。ワシントンとのコラボ、演出の意図、印象に残っているセリフなどを語ってくれた。


【「イコライザー THE FINAL」あらすじ】
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ある時、訪れたシチリアの事件で生死を彷徨う大怪我を負い、肉体的にも精神的にも限界を迎えたマッコール。アマルフィ海岸沿いの美しく静かな田舎町にたどり着き、善良な人々に癒されるなか、静かに引退を決意。この地で穏やかに残りの人生を送るはずだった。しかし、イタリアン・マフィアによる事件が町で次々と起こっていく。素性の知れないよそ者である自分にも身内のように接してくれた、心優しき町の人々が恐怖に怯えるさまを黙ってみていられるはずがない。静かに、しかし確実に増幅していったマッコールの怒りは、シリーズ史上最も激しいといわれるバイオレンスとして爆発。狼藉を働くイタリアン・マフィア相手に、ときには銃で、ときには拳で、その場にある全てのものを武器に変えて、正義の鉄槌を下していく。

●重要視したポイントは「マッコールの暴力に対する内なる葛藤」
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――本作は3部作の3作目にして最終作です。妻が去り、元上官のスーザンも去り、マッコールは遂に一人きりになっているという状況ですが、「マッコールの物語」の最終章として、重要視したポイントはなんでしょうか?

重視したのは、暴力に対するマッコールの内なる葛藤です。マッコールは“家”と呼べるような場所を探してもいます。そんななか、彼は「自分は善人なのか、悪人なのか」ということを自問しているんです。


デンゼル・ワシントンと5度目のタッグ「常にサプライズを与えてくれる」
――デンゼル・ワシントンとは5作品目のコラボレーションとなりました。本作で改めて知った、俳優デンゼル・ワシントンの“凄さ”や“新たな一面”はありましたか?

デンゼルについては、常に新しい発見の連続です。途絶えることがありません。それほどフレッシュでいてくれる方ですから。だからこそ、彼は素晴らしい役者なんです。彼がシーンを作り上げたり、時には2人でシーンの可能性を探求したり……そんななかで、彼はこちらが想像もしていなかったことをするんです。常にサプライズを与えてくれます。

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――具体的な例を教えてくれますか?

撮影中、いきなり歌い出したことがあったんです。「何を歌っているんだろう?」と気になっていたんですが、それは“血”に関する歌。その姿にかなり引き込まれました。つまり、劇中でマッコールが歌っているシーンは、デンゼルのアドリブなんです。脚本には書かれていない部分なんです。


●過激さが倍増! 仕事シーン(=アクション)について
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――マッコールが仕事を遂行するシーンは、前2作よりも、恐怖が倍増していたように思えます。特に「仕事シーン」は、まるでホラー映画を観ているかのような恐ろしさすら感じました。本作での「仕事シーン(=アクション)」でこだわった点を教えてください。

一番こだわったのは、最初のアクションシーンです。あの時のマッコールは、よりダークな場所にいました。自分は暴力を楽しみすぎてはいないか……そういうジレンマを抱えながらのアクションとなっています。もうひとつこだわったのは、最後のアクションシーンです。ここはしっかり描かないといけない部分だと思っていました。最初の仕事ぶりから、彼は変わっています。最後は正しい理由のために仕事をする。そういう道程や変化を感じさせるようなアクションでなければいけませんでした。「人を殺す」という行為に添えるには適切ではないのかもしれませんが、最後は名誉や矜持のようなものを持って、仕事を行っているんです。

――「イコライザー」シリーズといえば、「時間(=時計)」が重要なファクターとなります。「1」では始末するまでに「19秒」、今回は「9秒」。カウントを短くした理由や、それによって狙った効果はありますか?

マッコールは、自分にチャレンジを突きつけるような人物です。1作目から彼はずっと時間をはかっていますよね。それは、マッコールのメンタルがどのような状態なのかという部分に関わっています。長きにわたって仕事の回数をこなしているので、歳を重ねるごとに、その“仕事ぶり”というのは加速しているわけです。ですから、マッコールはいまだに自身にチャレンジをつきつけている。無駄を省いた形で、どのように仕事を完遂できるのか……。悪党どもを最小限の力で倒す。そういう所は、サムライと似ていると思います。


●お気に入りのセリフは?
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――「イコライザー」シリーズでは、アクションだけではなく、マッコールのウィットに富んだセリフや会話も人気の要因です。本作で特にお気に入りのくだりやセリフはどこになりますか? 理由もあわせて教えてください。

「I don't know.(わからない)」というセリフです。これは相手から「あなたは善人なのか、悪人なのか」と問われた際に答える言葉です。マッコールにとっては、もっとも正直で、真実に迫る答えだと思います。


●シリーズ初の海外ロケ「デンゼルも僕もイタリアを特別な場所だと感じている」
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――シリーズ初の海外ロケとなりました。何故イタリアという地を選択したのでしょうか?

イタリアはとても美しい場所ですし、これまでのシリーズとはまた異なる場所でもあります。“オールドワールド”……つまり、ひと時代前の場所という印象で、素晴らしい歴史と芸術を有しています。我々が撮影した村は、とても小さい村で、漁をして生計を立てている方が多いような場所でした。本当に時代をさかのぼったような気がしたんです。ロバート・マッコールという人間のペースを、とてもスローなものにしたら、まさにこんな感じになるのではないかと。デンゼルも僕もイタリアを特別な場所だと感じていて、大好きなんです。それは多分、そこで暮らしている方々が、人生を大事に生きているからだと思っています。


●「マイ・ボディガード」コンビの復活
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――デンゼル・ワシントンダコタ・ファニングは「マイ・ボディガード」以来の共演となりました。ダコタ・ファニングの起用理由はなんだったのでしょうか? また、撮影現場でのワシントンとのコラボレーションは、いかがでしたか?

ある時、プロデューサーのトッド・ブラックから電話がかかってきました。「ダコタが、この企画に関心がある」という内容でした。僕はそれを聞いて、かなりワクワクしましたね。すぐさま打ち合わせをセッティングして欲しいと願うほど。というのも、トニー・スコット監督の「マイ・ボディガード」が大好きだったからです。

彼女とは、まずレストランで会いました。わかってはいたのですが、自分の中にはまだ幼い頃のダコタのイメージがあって、座って話をしていると「マイ・ボディガード」のシーンを思い浮かべてしまうこともありました。とにかく色々な話をして、最終的には「是非やりたい」と。デンゼルに電話したら、彼もものすごく喜んでいました。ですので、現場では、僕はいすに座り、彼らを眺めているという感じでした。「マイ・ボディガード」の関係をそのまま引き継いだような感じで、2人は演技をしていました。一緒に行動し、時には笑い合ったり。それはとても美しい光景で、特別なものが感じられました。


●名優デンゼル・ワシントンとの“仕事”について
――「イコライザー」シリーズは、ひとまず区切りを迎えました。改めてお聞きしたいのは、デンゼル・ワシントンとタッグを組むことについて。監督にとっては、どのような意味をもつものなのでしょうか?

言葉として言い表すのはとても難しいことですが、デンゼル・ワシントンという才能あふれる方と仕事ができるということは、まるで“夢が叶った”といった気分なんです。同時に、僕自身も最高の仕事をしなければいけなくなります。気を緩めることはできません。そんなことをしたら、彼とは二度と仕事ができなくなりますから(笑)。

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