エマニュエル・ベアールが性的虐待を受けていたと告白 幼児の虐待をテーマにしたドキュメンタリーを制作【パリ発コラム】
2023年9月30日 10:00

2019年に女優のアデル・エネルが、#MeTooの告白をしてから4年、再び幼児虐待の問題が大きくクローズアップされている。幼児の性的虐待をテーマに、エマニュエル・ベアールがアナスタシア・ミコヴァ(『Woman』)と共同監督を務めたドキュメンタリー「Un silence si bruyant」(やかましい沈黙)が、地上波のテレビM6で放映されたのを機に、彼女自身も10歳から14歳のあいだ、親族の男性から性的ハラスメントを受けていたことを告白したためだ。ベアールはこの男性を公に特定はしていないものの、両親に告げたときはあまりわかってもらえなかったと語っている。
彼女自身、告白するのにこれほどの時間を要した理由は、恐れと恥があったからだという。逆に告白せざるを得なくなった理由は、自分のなかでつねに鳴っている不協和音に耐えられなくなったからだとか(それがドキュメンタリーの題名の由来でもある)。幼児虐待に遭った人間の反応はさまざまだが、共通していることは、相手を非難するよりもまず、自分に非があったのではないかと自虐に向かうこと、そしてその傷跡を生涯抱え続けることなのだそうだ。
数年前からこうしたテーマをフィクションとして映画にできないかと考えていたベアールは、ミコヴァとの出会いによって最終的に、ドキュメンタリーという形を選んだ。

本作はベアール自身もカメラの前で語るほか、幼児虐待を経験した3人の女性とひとりの男性が登場する。父親、祖父、あるいは両親に性的虐待を被ったケース、娘が彼女の父親から虐待を受けているのを知って訴えるも、逆に子供を操って父親から引き離そうとしていると、母の親権を取り上げられそうになった例などが語られる。それぞれのトラウマのあり方も様々で、何十年も経ってからフラッシュバックのように突然記憶が戻り、打ち震えるケースもある。
ぽつぽつと語る彼らの横顔からは、誰もが現在も苦しい心境にいることが浮かび上がり、さらに彼、彼女たちの話を聞きながら、自身の経験が走馬灯のように浮かび上がり涙ぐむベアールの横顔が胸に迫る。
ときにアニメーションを織り交ぜたスタイルによって、息をつきながらも、その深刻な内容に思わず前のめりに見入ってしまう作品だった。
今日、フランスでは人口の10パーセントがなんらかの性的虐待を被っており、そのうちの80パーセントは、親族によるケースだという。また3分に一度、幼児虐待が起こっているということを聞くと、暗澹たる気持ちにならざるを得ない。ベアールがいま訴えることは、司法制度や社会そのものが変わっていかなければならないということである。
ベアールのように著名人が勇気を出して、そのネームバリューを使い行動を起こすことで、広く大衆の意識に訴えかけ、社会が変革に向かうことを願わずにはいられない。(佐藤久理子)
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