山田洋次が描く家族の物語「こんにちは、母さん」美術監督こだわりの日本家屋を徹底解剖!
2023年9月5日 18:00
山田洋次監督が吉永小百合主演で劇作家・永井愛の戯曲を映画化した「こんにちは、母さん」(公開中)。変わりゆく令和の時代に、吉永が母・神崎福江、その息子・昭夫を大泉洋、昭夫の大学生の娘・舞を永野芽郁が演じ、3世代の親子を東京の下町を舞台に描く。細部や小物まで、美術チームの様々なこだわりがちりばめられた神崎家の一軒家セットのラフスケッチや特別カットを映画.comが入手した。
母・福江が暮らす一軒家には、仕事で落ち込む昭夫や、将来に不安を抱える孫の舞、そしてご近所のボランティア仲間など、日々さまざまな人が出入りしていく。 「いろんな人が“こんにちは”って勝手に入ってきて、お茶を入れたりお煎餅を食べたり。ここにいる方が私落ち着くの」という舞のセリフにもあるように、神崎家には自然と人が集まってくるような優しいぬくもりが広がっている。
美術チームの指揮をとったのは、美術監督・西村貴志。1階の居間では福江を中心にご近所の人々とお茶を飲みながら談笑する光景や、2階では母の恋愛事情を耳にし一人ふてくされる昭夫の姿など、印象的なシーンが撮影された。
西村は「かつては足袋を作っていた名残りのある店内、庭から光が差し込む風通しの良い居間と台所、そして2階へ続く磨かれた階段。現在の福江、そしてかつて昭夫を含めた家族三人の暮らしが想像できるようなセットを目指しました」とこだわりを語り、さらに「欄間や建具などの細部には、この家を建てた向島の大工の技術が感じられる粋なデザインを意識しました。室内の家具も、福江が嫁入りしてから現在までの暮らしぶりや、福江のセンスが感じられるものを用意していただきました」と物語の世界観をセットに反映させた。
また、舞台となった下町・向島の雰囲気を感じられるよう、店舗側は消し札の千社札や弓張提灯、大相撲の番付表を設置するなど、リアリティあふれる演出も抜かりない。
神崎家のイメージとして西村が山田監督から伝えられたのは、「現在消えつつある美しい日本家屋であること、細部に洒落たデザインが施されていること、庭から深く外光が差し込む明るい室内」というリクエスト。「打ち合わせの度に、今回はセットの細部までシャープな映像でしっかりと撮りたいとおっしゃっていたので、いつも以上にセット材料の選定からエイジング、そして装飾品に至るまで、何度も検討しながら製作していきました。クランクアップの日に山田監督からセットを褒めていただき、ホッとしました」と振り返っている。
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