フランスに養子に出された韓国人女性が実の両親を探し、運命を切り開く成長物語 「ソウルに帰る」ダビ・シュー監督、パク・ジミンが来日
2023年8月11日 14:00
第95回アカデミー賞国際長編映画賞のカンボジア代表で、第23回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞を受賞した「ソウルに帰る」の特別先行上映イベントが8月10日Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下であり、ダビ・シュー監督と主演のパク・ジミンが来日し、作品を語った。
韓国で生まれフランスの養父母のもとで育った主人公フレディが、ソウルで自身の原点を探し求める姿を描いた本作は、カンボジア系フランス人監督ダビ・シューが、友人の経験に着想を得て脚本を執筆したオリジナル作品だ。シュー監督の長編作品はこれまで東京国際映画祭で上映された「ゴールデン・スランバーズ」(11)、「ダイアモンド・アイランド」(16)に続く3作目。「商業的に日本で公開されるのは初めてで、映画館で上映されることはどんな監督にとってもうれしいこと」と喜びを語る。
また、シュー監督は、カンボジアで撮影が行われ、小野田寛郎旧陸軍少尉を描いた「ONODA 一万夜を越えて」(2021年、アルチュール・アラリ監督)で製作として参加したことから、日本の映画人とのつながりができたそうで、この日来場した西島秀俊、遠藤雄弥、カトウシンスケ、吉岡睦雄、渋谷悠らへ感謝を伝えた。
25歳のフレディは、ふとしたきっかけから初めて韓国へ帰ることに。しかし自由奔放な彼女は、韓国の文化や言葉になじむことができない。そんな中、フレディは、ゲストハウスで働くフランス語が堪能な韓国人テナの協力を得て、自分の実の両親を捜しはじめる、という物語。2022年・カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品され、その後世界中の映画祭で高評価を獲得。ボストン映画批評家協会賞では作品賞を受賞している。フランスでは、公開2週目にして7万人以上を動員するヒットを記録した。
運命に翻弄された悲劇のヒロインとは真逆であり、強く、反抗的でありながらも繊細さを隠しきれない主人公フレディの複雑なキャラクターについて、「一般的にこういうテーマを扱った古典的な物語においては、運命を受け入れるようなキャラクターを期待されたり、想定されると思いますが、フレディは全く反対です。彼女は絶対に運命に逆らい、運命だからと諦めることもしないで自分で戦います」と紹介。「養子縁組に出された子どもと生みの親との後の再会には、複雑で驚くような想定外のことが起こっている。そういうことに自由意志で戦い、そして自分の手で運命を切り開いていく、そんな女性を描きたいと思っていた」とシュー監督。
主人公フレディの複雑な内面を見事に表現し絶賛されたパク・ジミンは、本作が映画初出演。実の父親と母親、それぞれの再会でフレディの異なる心情や態度について問われると、「父親が高圧的だったことで、男性に圧力や緊張感、そしてちょっと息苦しさを感じていたのではないか。逆に女性である母親との再会で安らぎを持つことを空想したのでは、と考えました。ですから、ゲストハウスの受付のテナとのシーンでは、初めて会う人なのに近しいものを感じさせます。フレディの理想として、本当はこういう風にお母さんと出会いたかったのでは、と思って演じました」と役作りを振り返った。
「ソウルに帰る」はBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほかで公開中。
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