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いまや“戦争状態” 一般市民によるSNS投稿映像も用い、若手作家たちが匿名で独裁体制を映画で告発する「ミャンマー・ダイアリーズ」

2023年8月5日 08:00

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自国の危険な状況について伝えるマイケル(仮名)さん
自国の危険な状況について伝えるマイケル(仮名)さん

軍の弾圧によって国内外に情勢を伝えることが困難なミャンマーで、若手映画作家たちが匿名性を維持しながら結成した「ミャンマー・フィルム・コレクティブ」メンバー10名の短編作品と、SNSに投稿された一般市民による記録映像をつないで製作した「ミャンマー・ダイアリーズ」が公開された。

民主化へ向けて変革が続き、人々が自由と発展への希望を抱き始めていたミャンマー。しかし2021年2月1日に軍事クーデターが発生し、市民の自由と平穏な暮らしは突如として奪われた。本作では、圧政下のミャンマーにおける市民たちの日常を、ドキュメンタリーとフィクションを行き来しながら描き、2022年・第72回ベルリン国際映画祭パノラマ部門でドキュメンタリー賞を受賞した。このほど、製作者のひとりである、マイケル(仮名)さんに話を聞いた。

画像2(C)The Myanmar Film Collective
――まず「ミャンマー・ダイアリーズ」を制作した匿名の映像作家集団、ミャンマー・フィルム・コレクティブとはどんな集まりなのか、教えてください。

ひとりひとりの名前は明かせませんが、その多くがもともと知り合いだった10人のミャンマー人映画作家が集まったグループです。クーデターが起きて約1週間後に自然と話し合いの場を持つことになって、「何かやるべきだよね」と意気投合した仲間たちの総称です。メンバーの年齢は20代から30代半ば。公的な機関でもないし、代表者がいるわけではありません。こういうインタビューの機会があれば、誰か空いている人が出て答えるようにしています。私は、仮名で“マイケル”とさせてください。

とはいえ、私たち作家の周りには、編集や撮影を手伝ってくれたり、生活をしていく現場に携わってくれる人たちもいるので、実際はもっと多くの人たちがこの映画に携わってくれています。厳密なメンバーのリストがあるわけではないけれど、「助けてくれるからあなたもコレクティブだね」というほどくだけた集まりでもなく、「私はあなたのことを知っているよ」以上の「あなたのことを信頼しているよ」というところまでいった仲間たちの集まりです。

それぞれの作家が「僕は君の映画ではカメラをやる」「君の映画には出演するよ」とか助け合いをしながら、できた映画なんです。とはいえ、その計画を大っぴらにはできませんから、SNSのグループチャットを使って飲み会とか食事会の名前をつけて、食事とか料理とかのことを隠語にして「ちょっと皿洗いを手伝ってよ!」みたいなコミュニケーションの中で協力者を募ったりして、映画づくりを進めて行きました。

画像3(C)The Myanmar Film Collective
――「ミャンマー・ダイアリーズ」の制作上、どんな困難がありましたか?

撮影をはじめたのは2021年2月下旬から。クーデター直後はわりと自由で、軍も警察もそんなに威圧的ではなかったから、みんな、結構自由にデモができていました。だから2月に撮影を始めたチームは結構、順調に作りはじめていました。けれど、3月になってから状況が結構厳しくなってきました。カメラを持っているのを見られたら殴られたり。それだけではなく、逮捕されたりと、残虐な行為が見受けられるようになってきたんです。

ですから小型カメラとかiPhoneを使うようにして、撮影場所の隅には3~4人見張り番を立てたり。で、なにかがあったら「ちょっと休憩しよう」と携帯でコールし合う、みたいな小さなシステムを作って撮っていきました。しかし、5~6月にはほぼ撮影は不可能になってしまい、3人の映像作家が脱落。でも、そうやって撮ったものを編集して、ちょっとずつ海外にいるプロデューサーに送っていきました。

一番最後に参加した監督が21年8月に、学生たちがジャングルに入って行くパートを撮りました。映画に登場する彼らのストーリーが向かう先の映像として、最後のパズルのピースがハマって、映画が完成するだろうという感覚をみんなで共有できました。それで、10月にすべてが完成しました。編集が終わった作品をみたら、自分たちのプロジェクトをやり遂げた、という意味では嬉しかったですが、やはり悲しくなりました。それは、いまだに状況は変わっていないからです。自分たちができるのは映画を見せることだけです。それ以上はできないよな、と考えたりして。

画像4(C)The Myanmar Film Collective
――ベルリン国際映画祭などでも上映されたわけですが、観客からはどんなリアクションがありましたか?

映画について、いまのミャンマーの状況について、知ってもらうには国際映画祭は効果的だったと思います。ヨーロッパでは「ミャンマーってどこにあるの?」という人が結構いるんですよ。まず彼らに対して、僕らみたいな存在がいること、こういうことが起きてるんだという事実をちゃんと示せたらと思いました。

映画を観て「じゃあ、観客となった私たちには何ができるの?」って言ってくれる人も出てきてくれました。自分の国の政治家・政府に対して「もっとアクションを取るように」ってロビー活動をするのもいいと思います。周辺国や世界各地に亡命し散らばった人たちへの支援・寄付をするのもいいです。また、抵抗勢力の戦いの味方をするのもいいんじゃないか……そう答えて寄付先のリストを渡したら、観客だった人たちがアクションをとってくれたことが心に残っています。

この映画は2021年の末に完成しましたが、私たちを取り巻く状況はさらにひどくなってしまっています。いまや「戦争状態」とさえ言える状態になっていることを知ってほしいと思います。抵抗勢力の力が強まり、軍の力が弱まってきて、戦闘が至るところで見られるようになってきました。東京に例えれば、長野あたりで戦争が起こっているという距離感です。身近なところで大変なことが起こっている、という感覚がずっと続いています。

軍の行動が残酷になってきていて、最近も抵抗する活動家が2人、公式に処刑されました。違法な形でも、10人以上の活動家をある刑務所から別の刑務所に移管するという理由で連れ出しながら、逃亡したと見なされ処刑されました。いま、そんなことが現実に起きているのを、この映画を通じて知っていただきたいと思います。


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