北村匠海×山田裕貴×永山絢斗×村上虹郎×高杉真宙×吉沢亮が挑んだ、廃車場での“決戦” 映画「東京リベンジャーズ2」撮影現場レポート
2023年5月16日 07:00
社会現象級のヒットを生んだ「東京リベンジャーズ」の続編2部作の前編「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 運命」が現在、公開されている。そして後編「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 決戦」が、6月30日に公開を迎える。2022年9月4日、映画.comはある倉庫で行われた撮影現場を訪れた。本記事では現場の様子をレポートするとともに、キャスト陣と岡田翔太プロデューサーのインタビューを紹介する(取材・文:飛松優歩)。
北村匠海をはじめ、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮らが共演し、和久井健氏の人気コミックを映画化した「東京リベンジャーズ」シリーズ。主人公・タケミチ(北村)がタイムリープを繰り返しながら、事故で命を落としたかつての恋人・ヒナタ(今田)を助けるために、事故の原因があると思われる不良組織「東京卍曾」(東卍)に潜入し、未来を変えようと奮闘する物語が紡がれた。
続編には新たに、永山絢斗が場地圭介役、村上虹郎が羽宮一虎役、高杉真宙が松野千冬役で参加し、原作の人気エピソード「血のハロウィン編」が描かれる。前編「運命」では、凶悪化した東卍によって、再びヒナタが殺される。彼女を救う鍵となる、東卍結成メンバー6人を引き裂く“悲しい事件”の全貌が明らかとなり、さらにマイキー(吉沢)と一虎の深い因縁で、さらなる悲劇が引き起こされることを知ったタケミチ。ヒナタと仲間たちを救うため、全ての元凶である「血のハロウィン」と呼ばれる決戦を止めるべく、再び過去へタイムリープした。後編「決戦」では遂に、東卍崩壊の危機をもたらす、敵対組織「芭流覇羅」(バルハラ)との一大決戦が勃発する。
東卍結成秘話にまで遡り、それぞれのキャラクターたちの“運命”が交錯し、ついに決着を迎える“決戦”の舞台となるのは、2カ月間以上かけて作られた、日本映画史上最大規模のロケセットとなる廃車場。映画.comが現場に足を踏み入れると、目の前に広がる原作さながらの圧巻の光景に、言葉を失った。屋根を黒いシートで覆われた2000坪もの倉庫内に廃車が積み上げられ、その高さは3階建てのビルに匹敵する、約10メートル。約100台の車が黒々とした“山”を形作り、全体では150台にもおよぶ車が使用されているという。なかにはブルドーザーもあり、物々しい雰囲気を、より一層盛り上げている。
この日の撮影は、東卍VS芭流覇羅の戦いの火蓋が切って落とされる重要シーン。東卍メンバーは、かつての仲間でありながらも、敵の芭流覇羅に寝返った場地を取り返そうとする。「運命」のラストで衝撃の事実が明らかになったマイキーは、場地奪還と同時に、兄・真一郎(高良健吾)の死に何らかの決着をつけようとしているようだ。そして、その過去の事件を機にマイキーに激しい恨みを抱く一虎は、東卍崩壊を狙う。現代で「血のハロウィン」の顛末を知ったタケミチは、悲劇を止めようと奔走する。渦中にいる場地は、衝突する仲間たちを前に、何を思うのか――。キャラクターたちがぶつかり合いながらも、胸に秘めた真意が明かされる。そんな廃車場のシーンに、キャスト陣は「2部作一番の見せ場」と、太鼓判を押している。
北村は、「(廃車場は)すごいセットでしたね。この『血のハロウィン編』は廃車場のセットに説得力がなければ、全てがダメになると思っていました。あのセットが象徴だと思うので」と、シーンにかける覚悟をにじませる。山田は、「1番大変だったのはマイキーだと思うんですよ、車が積み上がった場所でのアクションが多かったので」と、吉沢を労う。続編から参加した永山も、現場の規模に圧倒されたようだ。
永山「廃車場のセットはすごかったですね。ただ写真で事前に見ていたこともあり、ここでここから何日か過酷なシーンが続くんだな、『よろしくお願いします』という気持ちの方が強かったですかね。テンションが上がるというよりは、無事に乗り越えようという気持ちの方が強かったです」
最初に、ギャラリーがはやし立てるなか、大勢の不良たちを従え、東卍と芭流覇羅が決戦の舞台に“入場”するシーンが撮影された。おなじみの黒い特攻服姿、約50人の東卍を率いるのは、白いたすきを肩にまいたドラケンと、半裸にサラシ姿で、鍛え上げられた筋肉を見せるマイキー。まさに“決戦”仕様の出で立ちで進み出るふたりの後方に、タケミチ、千冬、キサキが控えている。対して100人以上を誇る芭流覇羅のメンバーは、“首の無い天使”が描かれたジャケットを羽織り、何をしでかすか分からない、どう猛な空気に満ちている。先頭には、鋭い眼差しを投げかける半間と、どこか読めない表情の一虎が並び立ち、メンバーを鼓舞。統率がとれた“静”の東卍と、異様な熱をまとう“動”の芭流覇羅が、一触即発の空気を醸し出しており、後方にはチームの旗がはためいている。スタッフの手でスモークが焚かれ、光でキラキラと輝く粉が空中に漂い、殺伐とした廃車場が、神々しいとすら感じられる空間に変わっていた。
英勉監督は、この特別な決戦の始まりを、さまざまな角度でカメラにおさめていく。集団全体の撮影が終わると、続いては各キャストの決めカットへ。キャストたちはときに談笑し、リラックスした様子を見せながらも、撮影が始まると一瞬でキャラクターに変ぼうし、その表情ひとつで、彼らの思いや、たどってきた軌跡までもが伝わってくる。それは3作品、4年以上にわたって役と向き合ってきたからこそ。全作品で撮影現場を見学してきた筆者も、思わず胸が熱くなった瞬間だ。
そして遂に、両陣営からドラケン、半間と一虎が前に出て、言葉を交わすシーンへ。「俺らの条件はただひとつ。勝ったら場地を返してもらう。それだけだ」と言い放つドラケンに、いら立つ一虎。勢いそのままに、決戦の仕切り役を任されていたチーム「ICBM」(池袋クリミナルブラックメンバーズ)の阪泉(原沢侑高)に殴りかかり、「殺してやるよ、マイキー!」と絶叫する。一見クールな一虎の狂気が炸裂し、その凶暴性や攻撃性を強く印象づけるシーンだ。動きが多いシーンゆえ、何度も段取りが繰り返されるなか、村上の提案で、一虎が怒りの表情を見せるタイミングを、場地の名前が出た後へと変更。一虎と場地の強い絆、後悔にまみれた“共犯関係”、かつての仲間に場地を奪われるというやりきれなさを踏まえての提案だと感じた。村上は本番直前までセリフを口にしながら、集中力を高めていた。
一方の山田も、何度もセリフを繰り返しながら、声のトーンや、顔を上げるタイミングなどを細かく調整。休憩中に、原作を熱心に読む姿もあった。岡田プロデューサーは、「第1作は、キャストの力で作った作品だと思っているので、彼らが思い浮かべるそれぞれのキャラクターを尊重したいんです」と語る。「廃車場のシーンは、僕がいままで作ってきた映画のなかでも、監督と俳優とプロデューサーのコミュニケーションが多くて。皆がそれぞれの目線で見ながら、『こうした方が良い』という意見をぶつけ合うようにしています」。全員が本番ぎりぎりまで、目の前のシーンを良くしようと試行錯誤する。そんな第1作から続く、チーム「東京リベンジャーズ」の“力”を見た。
最後に、東卍と芭流覇羅が雄叫びをあげながら激突する、大きな見せ場が撮影された。キャストたちは、動き出しのタイミングや、正面から向かってくる相手の迎え方などを、英監督と細かく確認し合う。何度も猛ダッシュをするキャストたちを、ドリーやクレーンなどを駆使してとらえ、臨場感たっぷりのシーンが生まれていた。
本作ではキャラクターの個性が、アクションに色濃く表れている。北村と山田は、アクションへの取り組み方を、次のように語る。
北村「今回はアクション部さんと一緒にアクションを作っていきました。ここ2年間、ずっとアクションをやってきたので、1の時と比べると相当レベルが上がったと、自分のなかで思っています」
山田「アクションは実践のなかでアドリブや面白味を足していきました。そのシーンも本当に難しくて。アクションって、ただフリが決まっているだけではなくて、そこに感情が乗っかっていて、『場地!』『稀咲!』『マイキー!』とか言っているだけのシーンもあるので、その間『俺はどうしているんだろうか?』という埋める作業や、お客さんが楽しんでもらえるようなアイディアを、アクション監督の方と一緒に話していました」
では、続編で新たに登場した場地、一虎、千冬は、どのようなアクションを披露しているのだろうか。
岡田プロデューサー「場地は型破りな男なので、ルールもなく、突拍子のないことをしますし、すごく強い。誰かを守るためじゃないと拳を奮わないというスタイルで、アクションは常識に囚われない、型がない、自由でやんちゃな感じ。それが、場地のかっこよさでもあるし、めちゃくちゃな部分でもあります。一虎は、喧嘩しなさそうなベビーフェイスでありながら、実は怖くて強いというキャラクター。予備動作があまりなくて、いきなりフルスロットルに入って相手を倒す。スイッチが入ると歯止めがきかない、クレイジーで狂気的な動きを取り入れました。千冬は、タケミチに似たがむしゃらさがあって、不器用に戦うというイメージで作りました」
そんな千冬役を務めた高杉は、「まずは撮影を無事に終えられたことが幸せだなと思います。やっぱり、アクションシーンってすごいなと、あんな大人数で喧嘩シーンを撮影するという経験がなかったので、『映画を撮っている』という感覚になりました。あの大迫力なシーンを映画館のスクリーンで見られるのは幸せですね。いわゆるクライマックスのシーンなので、いろんな感情が交錯するなか、千冬は『場地の奪還』と『タケミチを守る』という目的が明確でしたので、そのことだけを考えて演じていました」と、撮影を振り返った。
決戦は、各メインキャラクターの動きに加え、200人以上が一斉に乱闘を始める、非常に難易度の高いシーンだ。アクション監督の諸鍛治裕太の下、「物語の感情のなかにアクションがある」というコンセプトで作られたリアルで泥臭くもある動きを、2~3カ月間かけて、完全に体にたたき込んだキャストたち。カウントを聞きながら、ゆっくりとした動きから徐々にスピードを上げ、タイミングを合わせていく。スタッフはアクションに合わせ、廃車山を構成するタイヤや部品などを移動して画角を確保し、より良い画を追求していた。
この廃車場での撮影期間は、約1カ月間にもおよぶという。温度が高い廃車場内で、キャストたちは衣装をまとい、全力でアクションをこなさなければならない。しかし、そんなハードな撮影でも、総勢300人にのぼるキャスト・スタッフの集中力やエネルギーを強く感じる。岡田プロデューサーは、その結束力の秘密を、次のように明かす。
岡田プロデューサー「東卍と芭流覇羅のメンバー約200人は、エキストラじゃなくて、全員オーディションで選んでいるんです。数千人規模のオーディションをして、監督と助監督と僕で、ひとりひとりの書類を見て面接して、全員を選びました。特攻服にもひとりひとり名前が付いていて、衣装もヘアスタイルも決まっていて。皆が本当に同じ、並々ならぬ覚悟でやっているんです。そのオーディションで、最後まで残ってトップになると、阪泉やチョメ・チョンボ(田中偉登・今村謙斗/※芭流覇羅の幹部たち)という役付きになる。第1作でも同じルールでやっていて、トップになった湊祥希さんが、長内を演じました。皆が『自分もあの役をやりたかった』と思いながら参加していることが、士気の高さにつながっていると思います」
キャラクター同士のさまざまな思いが交錯するなか、やはり決戦のカギとなるのは、マイキーと一虎の関係だ。演じる吉沢と村上は、廃車山の頂点での、ワイヤーを駆使した対決シーンにも挑んでいる。岡田プロデューサーは、「吉沢さんは割と物静かな方なんですが、撮影が終わったあとに、『虹郎が一虎をやってくれて本当に良かった』『虹郎が一虎をやってくれるから、マイキーを演じられる』と言っていたようです」と明かす。
吉沢自身も、「(廃車山では)上に行くほど、溜まっている空気が暑すぎて、上と下で5度くらい違いました。確か40度は越えていましたね」と、ハードだった撮影を述懐。村上との演技については、「彼の熱量というか、役に全てをかけている感じ、この瞬間を役として生きているようなパワーがすごくて、僕も勝手に気持ちを持ち上げられました。すごい覚悟を持ってこの作品に挑んでいるんだろうなというのが伝わってきて、楽しかったです」「どれだけ体がボロボロになっても、心はずっと燃えている感じがして。芝居をしていてあんなに楽しい感覚は、正直久々でした。痛みを忘れるくらい、アドレナリンが出まくっていました」と、充実した面持ちで振り返っている。
“座長”としてシリーズを支えてきた北村は、「とにかく後編も面白いです。廃車場でのアクションだったり、アクションだけじゃなくて皆の複雑な思いだったり、それぞれ1ミリも見逃してほしくないシーンが詰まっています」と、言葉に力をこめる。劇中でキャラクターたちが、全てを決する戦いに臨むように、同世代の俳優たちが共闘してきたシリーズが、ついにクライマックスを迎える。
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