ロシアで逮捕令状が出ている監督がとらえた、素顔のプーチン 大統領までの軌跡を追ったドキュメンタリー、予告入手
2023年3月26日 12:00
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ロシア連邦初代大統領ボリス・エリツィンの後を継ぎ、2000年に第2代大統領に就任したウラジーミル・プーチン。大統領選挙PR用に撮影を依頼されたビタリー・マンスキー監督が、引退を宣言したエリツィンの指名を受け1999年12月31日、プーチンが大統領代行に就任してからの1年間を追った映像を編集したドキュメンタリー「プーチンより愛を込めて」の予告編と著名人のコメントを、映画.comが先行入手した。
本作は、若き日のプーチンを映した、カルロビ・バリ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞作。彼は、当時の憲法上の制限から2期で退いたものの、12年の大統領選で復帰した。実質的に、プーチン政権は20年以上にわたり続いている。彼はいかにして権力を握り、現在の統治国家を築き上げたのか。大統領就任後の第2次チェチェン紛争、五輪のドーピング、ウクライナ侵攻のほか、プーチンに逆らった人々の亡命、投獄、謎の死など、改めてロシアの権力者の実体を考える契機になる作品だ。
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1999年12月31日、ロシア初代大統領エリツィンが辞任した。彼は自身の後継者としてプーチンを指名し、3カ月後に行われる大統領選までの間、ロシアの新しい憲法、国旗は若き指導者に引き継がれた。マンスキー監督は、プーチンが大統領選への出馬表明をせず、公約を発表しないまま、名目は違えど“選挙運動”を展開するさまを記録する。ロシア各地へ足を運び、諸問題の解決、第1次チェチェン紛争の“英雄”たちへの慰問、恩師との再会を“演出”したPRチームは、国民が抱く彼のイメージを「強硬」から「親身」へと変化させる。マンスキー監督は、ソ連時代の旗や国歌が使用されていることに不安を覚え、プーチンに直接切り込んでいく。2000年3月26日の開票日当日と大晦日の、エリツィンの自宅での貴重映像をたどることで、プーチンの本当の姿が炙り出されていく。
映像は全て、ウクライナ出身のマンスキー監督が、国立テレビチャンネルのドキュメンタリー映画部の部長だったときに自ら撮影した、未公開だった素材。14年3月、ロシアによるクリミア併合のプロセスが始まったときに、マンスキー監督はロシアを捨てラトビアに移住し、素材の権利処理や編集を始めた。現在ロシアでは、マンスキー監督に逮捕令状が出されており、ロシアに一歩足を踏み入れたら逮捕されるという状況のなか、日本での公開が決まった。
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予告編は、選挙活動では控えめな印象だが、徐々にベールの奥に隠されていた本性が見えてくるさまを活写。「見過ごしてしまうような小さな変化が起こっていた」と語られる通り、大統領になるまでの軌跡は、さながら心理スリラーの様相を呈している。エリツィンは20人の候補者からプーチンを選んだが、やがて自分が利用されていることに気付き、丸1年後の自宅でのインタビューでは、彼について「赤」と断言。終盤では、ソ連国歌の復活に「賛同できないです」というマンスキー監督の言葉に、肩をすくめながらも強い口調で「すべきだ」と言い放つプーチンの姿が切り取られている。
「プーチンより愛を込めて」は4月21日から、東京の池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国で順次公開される。劇場用パンフレットにも寄稿している黒井文太郎氏(軍事評論家)、岡部芳彦氏(神戸学院大学教授、ウクライナ研究会会長)のコメントは、以下の通り。
本作にもあるように、大統領就任後のプーチンはエリツィンからはすぐ離れていき、あっという間に名実ともに権力者になっていった。彼はもともと羊ではなく、狼だったのだ。
元KGB人脈の文化に「人権」や「人道」の文字はない。その後、プーチン政権はロシア国内外で反対勢力への殺戮に邁進し、やがては隣国への侵略にまで踏み入っていくことになる。
エリツィンの「自由なロシア」に終焉をもたらしたのは果たしてプーチンだったのか。それとも自由に戸惑って、徐々にそれを望まなくなったのはロシア国民なのだろうか。そんな正解のない問の答えがこのマンスキーの映画にはある。
(C)Vertov, GoldenEggProduction, Hypermarket Film-ZDF/Arte, RTS/SRG, Czech Television2018
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