同性愛が禁じられた時代のドイツの刑務所での唯一無二の関係性描く「大いなる自由」予告編&こだわりのビジュアル
2023年3月10日 12:00
6月に新オープンするBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下が、自社買付・初の全国配給を決めた「大いなる自由」の予告編とビジュアルが公開された。
本作は2021年カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞受賞、2022年アカデミー賞国際長編映画賞オーストリア代表作品。第2次大戦後ドイツで男性同性愛を禁ずる「刑法175条」のもと、「愛する自由」を求め続けた男の20余年にもわたる闘いを描く静かな衝撃作だ。
1871年から1994年までの123年間施行された刑法175条はナチス時代に厳罰化され、処罰者は14万人にも及んだ。自身の性的指向を理由に繰り返し投獄される主人公ハンスを演じたのは、ダンサー・振付師でもあるフランツ・ロゴフスキ。非人道的な法に踏み躙られながらも愛を諦めないハンスの、消えない炎のような魂を、少ない言葉と雄弁な身体で表現する。演技派ゲオルク・フリードリヒが、当初は同性愛者であるハンスを嫌悪しながらも、次第に心をほどいていく殺人犯ヴィクトールを演じている。
このほど公開されたビジュアルでは、主人公ハンスが、独房の小窓から手を伸ばすシーンを配置。チラシの裏面には、当初はハンスを嫌悪しながらも次第に心をほどいていく長期刑受刑者のヴィクトールが通路からそのハンスを覗き込むシーンが配され、二つのシーンとチラシの表裏の関係が、刑務所の通路と扉そのものを思わせるデザインだ。
デザインを担当したのは、ゲルハルト・リヒターやマーク・マンダース、川内倫子、牛腸茂雄らの展覧会や作品集に関わってきたデザイナー、須山悠里氏。洋画のデザインを手がけるのは今回が初となる。実物のポスター/チラシには直径2ミリの小さな穴が開いている仕様(穴の位置は、ハンスが伸ばした手の指の下あたり) 。「劇中で印象的な“部屋の小さな窓” “本に穿った穴” “ミシンの針”に象徴される、微かに、あるのかどうかも分からないような自由へのアナロジーとして穴を開けたかった」と須山氏。自由に向かって手を伸ばすかのようなハンスのまっすぐな目線が印象的なビジュアルとなった。
予告編は、主人公ハンスと、かつての恋人オスカーの幸せそうな8ミリフィルムの映像と、公衆トイレで175条違反者摘発のために隠し撮られた監視カメラ映像の対比でスタートする。執行猶予なしの24カ月の実刑を受けたハンス。長期刑受刑者のヴィクトールと「まだここに?」「おまえは?まだ変態か?」と軽口を叩き合うことから、初めての投獄ではないことがわかる。何度懲罰房に送られようとも愛を諦めず、新たな関係を築こうとするハンスに「どうなるか忘れたのか」と語りかけるヴィクトール。刑務所の中での愛、そして別れを経て、ハンスは何を求めるのかが気になる映像だ。
また本作は、第34回ヨーロッパ映画賞で撮影賞&作曲賞受賞を受賞している。セリーヌ・シアマ監督が初期代表作でタッグを組んだ撮影監督クリステル・フォルニエによる、「レンブラントの絵画のよう」と評された美しい陰影や、北欧のフューチャー・ジャズを牽引するトランペッター、ニルス・ペッター・モルベルによる、予告冒頭に流れるトランペットの音色にも注目だ。
7月7日からBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開。
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