ダニエル・シュミット×坂東玉三郎「書かれた顔」4Kレストア版、3月11日から劇場公開 予告も披露
2023年2月6日 12:00
退廃的な映像美で80年代に熱狂的なファンを生んだ伝説の映画監督ダニエル・シュミットが、坂東玉三郎を主人公に日本で撮影した「書かれた顔」の4Kレストア版が、3月11日から公開されることが決定。あわせて、メインビジュアル、予告編、場面写真が一挙に披露された。
歌舞伎界で当代一の人気を誇る女形・坂東玉三郎。本作では「鷺娘」「積恋雪関扉」といった歌舞伎の舞台映像や、芸者に扮した彼を2人の男が奪い合う挿話「黄昏芸者情話」を通して、玉三郎の濃厚な美の世界へと観る者を誘う。そこへ俳優の杉村春子や日本舞踊の武原はんの談話、現代舞踏家の大野一雄の舞踏が挿入され、ドキュメンタリーでもフィクションでもない、夢の中をさまようような作品になっている。
撮影はジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメール、マノエル・デ・オリベイラらの作品も手掛けてきた名手レナート・ベルタ。盟友シュミットと生み出した夢幻の映像美は、今なお多くの作家に刺激を与え続けている。また本作に挿入されるフィクションパート「黄昏芸者情話(トワイライト・ゲイシャ・ストーリー)」では、22年3月に亡くなった青山真治監督が助監督を務めている。
1995年のロカルノ国際映画祭で上映された本作は、27年の時を経て、4Kレストア版が同映画祭(2022年)で世界初上映された。日本では、同年10月に開催された「現代アートハウス入門ドキュメンタリーの誘惑」で4Kレストア版が初上映され、歴史的アートフィルムの色褪せない魅力が大きな話題となった。
シュミット監督は、公開当時のパンフレットに、以下のコメント(抜粋)を寄せている。
「この映画はドキュメンタリーではありません。フィクションです。わたしは、黄昏についての物語、すなわち映画についての映画を作り上げようとしているのです。わたしは坂東玉三郎という奇跡を何度も目のあたりにしてきました。けれど、わたしはその謎を、その秘密を、解き明かそうとは思いません。この作品は、その坂東玉三郎という秘密とともに作った映画であり、日本という秘密とともに作った映画なのです」
「書かれた顔 4Kレストア版」は、3月11日からユーロスペースほか全国順次公開。公開決定に際して寄せられた著名人コメントは、以下の通り。
女形を演じることについて坂東玉三郎が語り、役のために顔を塗る姿をカメラがとらえるとき、フィクションの世界が現実を侵食する。作中の『黄昏芸者情話』の悲しくも甘美なノスタルジーと大野一雄の舞踏に心打たれた。
魂の水底の深い暗闇から湧き起こる大野一雄の踊りは、シュミットの映像の中でほわっと浮きがり、まるで水面を滑るように軽やかで優雅、しかもこの上なく愛くるしい。
その顔は誘う。ふと僕を香らせたかと思えば、ほの暗い奈落へと姿くらませて。いま追いかける、目くばせの先を。ひそやかに踊る唇を。
幕が閉じて映画が始まる。
かけがえのない芸で舞台のためにご自身を手放していく姿。
舞と弦、隠れた鏡、重なる層。あやつる指と、舐める指。見終わったあと、私の心に青い宝石箱がありました。アメイジング!
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