【舞台レビュー】小池徹平&城田優の新生「キンキーブーツ」は“違う”からこそ楽しめる!
2022年10月3日 18:00

ブロードウェイミュージカルの傑作「キンキーブーツ」日本キャスト版が10月1日から東京・東急シアターオーブで開幕。それに先がけ、9月30日に公開ゲネプロ(最終舞台稽古)が行われたので、公演レポートをお届けしよう。(執筆:若林ゆり)
本作は2005年に公開されたイギリス映画をミュージカル化。経営が傾いた靴工場を建て直そうとするチャーリーと、ドラァグクイーンのローラが、互いを理解し合うことで成長&成功する姿を、シンディ・ローパーの素晴らしい音楽で彩った大ヒット作だ。日本では16年と19年にチャーリー役を小池徹平、ローラ役を三浦春馬さんというキャストで上演し、熱狂的な人気を博した。


3回目となる今回は、ローレン役のソニン、ニコラ役の玉置成実、ドン役の勝矢、ジョージ役のひのあらたら初演・再演に出演したキャストの多くが集結するなかで、ローラ役は小池・三浦さんの友人でもある城田優によって演じられることに。ローラ役が変わることで「こんなにも変わるのか!」という印象を受けるが、この「違い」こそが楽しめる理由でもある。そう言えるのも、作品本来の楽しさ、クオリティが確かに守られているからだ。


まず驚いたのは、小池の成長だった。表情豊かでキュートな個性はそのままだが、かわいい要素より明らかに男っぽさが増し、色気も力強さも前2回とは段違い。惚れ惚れする。彼に恋するローレンへの共感度は倍増である。

そして、城田ローラ。三浦さんがあまりにもハイレベルだったため、想像を絶するプレッシャーがあったことは想像に難くない。が、それをはねのける好演なのだ。本当に、よくぞやってくれたと思える。とくに面白かったのが、小柄な小池との身長差。ヒールでその差に拍車がかかり、まるで(「指輪物語」の)ホビットとエルフのよう。しかし、小柄でかわいいが力強く前進するチャーリーと、ビッグでたくましいが硝子のハートをもつローラというふたりの対比が、俳優の個性にピタリとはまり、「人は違う。違うからこそ受け入れ合えば世界が広がる」というテーマをより強調して見せてくれる。

城田は、自分で演出も務めた「ファントム」の怪人役も「傷ついた少年」のような繊細さで表現した俳優。このローラ役でも、「Not My Father’s Son」のシーンなどで見せる「傷ついた少年」のように繊細な優しさが心に染みた。よく伸びる声は緩急が利いて、とても美しい。ハイヒールでの美しい歩き方や、いかにもドラァグウイーンらしい身のこなしなどはまだ改善の余地があるが、どんどんよくなっていくだろう。公演中の成長も楽しみだ。


この作品ほどミュージカルのもつ力が、醍醐味が、心躍るような楽しさと胸を熱くする感動が、めいっぱい詰まっている作品もめったにない。この楽しさと感動は、いまこそ人々が必要としているもの。それを最高の形で観客席に届けようと、懸命に挑んでいるすべての出演者、クリエーター、スタッフに心から敬意と感謝を捧げたい。



演出家、ジェリー・ミッチェルからのコメント全文は以下の通り。
ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」は11月3日まで東京・東急シアターオーブで上演中。11月10日~20日には大阪・オリックスシアターで上演される。

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