岩波ホール閉館直前、7月13日からヘルツォーク特集を開催 未公開作品を含む6本を上映
2022年7月4日 08:00

7月29日に閉館する岩波ホールで、ベルナー・ヘルツォーク監督の未公開作品を含む6作品を紹介する特集上映「ヴェルナー・ヘルツォーク・レトロスペクティブ 極地への旅」が、7月13~18日に開催されることになった。
特集上映は、ドイツ映画研究者の渋谷哲也(日本大学文理学部教授)をプログラム・アドバイザーに迎え、ヘルツォーク監督の初期作品の16ミリ上映や、特集に合わせて制作した新訳版のDCP初上映を行う。会期中、ゲストを招いたトークイベントも予定されている。
会場となる岩波ホールは、1983年に「アギーレ・神の祈り」で初めてヘルツォーク作を日本で劇場公開。7月29日に惜しまれながら54年の歴史に幕を閉じるが、その最後のロードショー作品も奇しくもヘルツォークの新作「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」(上映中)となった。
異郷の探索者ヴェルナー・ヘルツォークの作品にはドキュメンタリー的な要素が欠かせない。それは劇映画でも変わりなく、人類が見たこともないような秘境を旅し、未曽有の大災害に飛び込み、時には人間の心の暗黒面に迫ってゆく。ヘルツォークのモットーである「陶酔的な真実」とは、その光景に向き合った者に圧倒的な感動と畏怖として開示されるものだろう。だが戦後ドイツ世代としてヘルツォークは、映像による大衆操作の危険も自覚している。彼は風景のロマンティシズムに耽溺することなく、観察者の冷静さを失わない。それは文明社会が培ってきた制度や価値観に徹底的な懐疑を向けるアウトサイダーの態度に他ならない。世界を渡り歩きその出会いを記録しながら、ヘルツォークが自分と同じ漂泊者(ノマド)の魂をブルース・チャトウィンに見出したのだろう。彼らはカフカの掟の門前での求道者のように世界の圧倒的な謎の前で立ち尽くす。だがヘルツォークは絶望せずに進み続ける。そのユニークな功績を改めて日本未公開のドキュメンタリーを中心に辿ってみたい。それはチャトウィンの旅の伴侶としても最適の参照資料となるだろう。
1974年/ドキュメンタリー/45分/ドイツ語/西ドイツ/DCP *新訳版上映
普段は彫刻家として働いているスイス人のスキージャンパー、ヴァルター・シュタイナーが、世界記録に挑戦する。死の危険と隣り合わせの競技に、狂気にも似た恍惚状態で臨むスキージャンパーたちの様子が映しだされる。ちなみにシュタイナーは、1972年の札幌オリンピックで、銀メダルを獲得している。
1989年/ドキュメンタリー/49分/ドイツ語・英語・フラ語/西ドイツ/DCP *日本初上映
サハラ砂漠に住むフラニ族系の遊牧民ウォダベの風習や文化を映したドキュメンタリー。とりわけ、彼らの「ゲレウォール」という祭に焦点が当てられるが、これは、男たちが妻を得るために化粧をし、互いの美しさを競い合う祭である。監督はこの映画を、ブルース・チャトウィンが亡くなる前にみせている。
1985年/ドキュメンタリー/45分/ドイツ語/西ドイツ/DCP *新訳版上映
1984年に、ヒマラヤのカラコルム山脈にある8000メートル級のガッシャーブルームI峰とガッシャブルームII峰の登山に臨んだ、伝説的な登山家ラインホルド・メスナーとハンス・カンマーランダーを記録したドキュメンタリー。地の果てで、不可能なことに挑戦する男たちの執念を描く。
1968年/劇映画/90分/ドイツ語/西ドイツ/16ミリ
ヘルツォーク監督の長編第一弾。第二次世界大戦中、ギリシャのコス島を警備するために、3人の兵士が送られる。だが、平穏な任務に耐えられず、彼らのうちのストロシェクが、次第に狂気と破壊願望にとらわれる。ブルース・チャトウィンは本作に登場する1万機の風車が回転するシーンが大好きで、“錯乱の風景”と呼んでいた。
1971年/ドキュメンタリー/85分/ドイツ語/西ドイツ/16ミリ
バヴァリア地方に住む盲ろう者のフィニ・シュトラウビンガーを追ったドキュメンタリー。子どもの頃に盲ろうになったフィニは、30年あまり家に閉じ込められていたが、56歳の時に、自分と同じ境遇の人々をサポートし始め、この世界で生きていく困難さを分かち合う。監督が、自分の心にとても近しいと表現している、特別な作品。
1977年/ドキュメンタリー/30分/ドイツ語/西ドイツ/16ミリ
カリブ海のグアドループ島にある火山が爆発するという情報が流れた。ほぼ全ての島民が避難するなか、現地にとどまっている農民がいると聞きつけたヘルツォーク監督は、撮影クルーと共に島へ赴く。死の覚悟をしていると言う島民を取材した作品。ヘルツォーク監督をして、これまでで最も困難な状況での撮影だったと言わしめた作品。
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