「グリード FROM THE DEEP」中華モンスターは出し惜しみがないのが良い【人間食べ食べカエルのホラー映画コラム】
2022年6月18日 21:00
Twitterのホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、ホラー映画専門の動画配信サービス「オソレゾーン」の配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす! 今回は、食べ食べ氏が「全面的にお勧めする勇気は無いけど、むしろ観てよかったと思っている」と語る「グリード FROM THE DEEP」をご紹介。
とある科学者が船上で恐るべき新種の生物を生み出した。だが案の定実験が失敗し、生物が大脱走!&大繁殖!! 凄まじい勢いで数を増やしながら移動し、やがて津波に乗ってビーチにカチコミ!逃げ惑う人間どもを喰らいつくしながら勢力を拡大していく!!
今回紹介するのはグリード!! 「グリード!?あのグリードがオソレゾーンに!?」と思った方もいるかもしれないが、タイトルをよく見てほしい。後ろにフロムなんちゃらみたいな英語が付いていることにお気づきになられただろうか。そう、つまりはあの世紀の大傑作「ザ・グリード」とは全く無関係な別物の作品である。製作国は中国だし、原題は「食人虫」という遊戯王のモンスターみたいなタイトルだ。1mmも本家とは関係がない。ではこれはどういう内容なのかというと、この原題が示す通り、人を食らいつくす虫がいっぱい出てくるパニックホラーである。
中国は、いつからか凄まじい勢いでモンスターパニック映画を作るようになった。巨大蛇やら巨大ワニやら、果てには何か良く分からない化け物が出てくるものまで、あらゆる怪物が出てくる映画を何かに取りつかれたように作り続けている。今や世界で一番モンスター映画を作っている国になっていると思う。最初の頃は出来がよろしくない作品が多かったが、それでも継続は力なり。最近はVFXの質もだんだんと上がり、普通に面白い作品も増えてきた。これから更に進化していくのかと思うと、中国モンスター映画界から目が離せなくなる。
さて、本作に話を戻すと、正直これは厳しい出来だ。なんせ8年も前の作品なので、今の目で見ると、いや当時の目で見てもかなりチャチい。エンドロールで流れるメイキングで「初めて本格的なVFXを多用した」みたいなことを言っていたから、当時はまだノウハウもあまり無かったのだろう。それを踏まえて観ても、特に前半30分は気を失いそうなほどつまらない。だが、そこを乗り越えれば大見せ場。いよいよ津波に乗って食人虫が襲ってくる。この津波のVFXだけは何故か出来がいい。水って一番表現が難しそうだけど……。
その後は、小っちゃいアルビノのダンゴムシみたいなのが無数に表れて、地面を、やがては人間を覆いつくして喰らい尽くす! この描写は結構悪趣味で良い。これでもっと映像がマシだったら!とは思うが、ここは温かい目で見ていきたい。VFXが壊滅的にしょぼい事以外は頑張っている。あの手この手で見せ場に変化を付けて、飽きさせないように工夫をしている点は素直に評価できる。あと、暗闇で誤魔化すことなく、白昼堂々と食人虫を登場させる気概は買いたい。中華モンスターは出し惜しみがないのが良い。
あと、もう一つ評価したいことがある。それはクライマックスでラスボス級の食人虫を出してくれることだ。このジャンルの映画において、ラストに1匹バカでかいボスを出すことは絶対的正義とされている。ここをクリアしているため、本作は嫌いになれない。しかもただ虫がデカくなったというわけではなく、この1匹だけビジュアルが完全に未知の化け物になっているところが素晴らしい! 舞台が船の中に移り、そこで巨大食人虫から逃げ回るクライマックスは、不覚にもテンションが上がってしまった。ぜいたくを言えば、もっと暴れてほしかったが、全体像もハッキリと映るし、ここまで見せてくれたら「まあ、いいか……」となる。
総じてとにかく出来が酷いし、これを全面的にお勧めする勇気は、とてもじゃないけど自分の中には無い。だけど、全てが嫌いかというとそうではないし、観たことを後悔してもいない。超巨大虫の活躍も楽しめたから、むしろ観てよかったと思っている。中国VFXモンスター映画の走りを見てみたい方、世にも珍しい食人虫の暴れっぷりに興味がある方は、是非オソレゾーンで観てみてください。
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