「マクドナルド」モスクワ1号店開店日に起こった悲劇 アフガンから脱出した青年をアニメで描くドキュメンタリー「FLEE」本編映像
2022年6月8日 17:00
第94回アカデミー賞で史上初めて国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門ノミネートを果たした「FLEE フリー」の本編映像の一部を映画.comが入手した。主人公アミンが少年だった頃、滞在先のモスクワで遭遇した歴史的イベントと、そこで起こった悲劇を回想するシーンだ。
本作は、登場人物の安全を守るためにアニメーションを採用し、20年の時を経て、亡命先のデンマークで祖国アフガニスタンからの脱出を語る青年の姿を描いたドキュメンタリー。監督は自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセン。
父がタリバンに連行されたアミンは、アフガニスタンでの内戦の拡大をきっかけに、家族たちと着の身着のまま祖国を脱出。数年後、ひとまず観光ビザで入国していたロシアを脱出してヨーロッパへの密入国を目指したが、バルト海で警備艇に見つかり、ロシアに連れ戻されてしまう。その後、アミン達は警察を恐れて自由に出かけることもできずにふさぎ込む日々が続いていた。
このほど公開された本編映像は、アミンと兄が、気分転換のために家を抜け出しモスクワの街に出かけた様子を捉えたもの。冷戦終結を間近に控えた1990年1月31日、資本主義の象徴とも言える「マクドナルド」が旧ソ連に初出店を果たし、モスクワ1号店がオープンした日だった。ふたりは羨ましそうに賑わう店内を見ながら、兄は「ロシアを出られたらマクドナルドで祝おう」などと話しかける。ところがふたりは警官に見つかり連行され、アミンは父の形見である大切な時計を奪われてしまう。乗せられた車にはひとりの少女がいた。このシーンの後、その時のことを回想するアミンは、その車に残された少女の姿を実に克明に語り、「なぜ何もせず、彼女を見捨てたのか。今までで最も心が痛む辛い経験のひとつだ」と悔しそうな表情で振り返るのだ。
このシーンでは「マクドナルド」の開店の賑わいが伝わる貴重な当日のアーカイブ映像も使用。そして2022年5月16日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、米マクドナルドは30年以上続けてきたロシアでの店舗展開に終止符を打った。アミン達が歴史の1ページとも言える場所に確かにいたことを、観る者に強く意識させる映像となっている。
アミンの心のペースに寄り添いながら約4年という長い時間をかけてインタビューを行ったラスムセン監督は、“難民である”ことをかつて経験した人間の心に及ぼす影響を少し理解したという。その上で、「アミンに関して言うと、どれだけ長い年月を経ても、彼は今も心の中に追放された感覚を持っているのだと気付きました。それは彼がこれまで自分の過去に向き合い、誰かに自分の物語を共有する機会を一度も持てなかったからだと思います。その物語こそがこの映画のストーリーなのです」と語っている。
映画は6月10日、新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国で公開。公開初日に新宿バルト9でラスムセン監督によるオンライン舞台挨拶が行われる。
■会場:新宿バルト9 https://tjoy.jp/shinjuku_wald9
■チケットご購入方法
通常料金。ムビチケ、各種割引もお使い頂けます。
【オンラインチケット予約KINEZO】 6月4日(土) 0:00~
※事前に無料の会員登録が必要です。
※先着順
【劇場窓口】 6月4日(土) 劇場OPEN 7時15分~
※オンライン予約にて残席がある場合のみ販売となります。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。