日本列島に人類はどのように渡ってきたのか…3万年前の祖先の航海を徹底再現したドキュメント「スギメ」与那国島で上映
2022年4月3日 10:00

台湾と琉球列島の間にある世界最大級の海流・黒潮を越え、3万数千年前に初めて日本列島へ渡ってきた祖先たちが、どの様な航海をしたのかを壮大な野外実験(実験航海)によって解明するドキュメンタリー映画「スギメ」が、作品の舞台となった沖縄・与那国島で上映された。
国立科学博物館が企画・製作した本作は、海部陽介氏の「サピエンス日本上陸 3万年前の大航海」(講談社)を原案とし、国立科学博物館と国立台湾史前文化博物館による国際共同研究「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」で、6年に渡って記録した膨大な映像を門田修氏が監督。博物館として初めて科学技術映像祭文部科学大臣賞を受賞した。

学者、技術者、漕ぎ手ら各専門分野の知識を持つ人々が参加し、旧石器時代の道具・技術と草木など当時想定し得る古代の舟の素材を用い、台湾から沖縄県与那国島までを目指す。まずは草の舟で航海に挑むも失敗。翌年、台湾で竹のいかだを作って再挑戦するが、黒潮に流されてしまう。そして、最後は杉を使って丸木舟を制作。不安定で転覆しやすい丸木舟に手こずるも、試行錯誤を重ね、2019年7月に男女5人が台湾を出航、疲労に耐えながら2晩以上漕ぎ続け、見事与那国へたどり着いた。

日本最西端の島、与那国島で本作が上映されたのは3月20日。与那国の歴史や文化、台湾をはじめとする周辺地域との交流などの展示・イベントを行うDiDi与那国交流館で開催された。映画館のない島ということで、窓に遮光幕を施し暗室に仕立てた会場での手作り感あふれる上映会となった。この日は、子どもからシニアまで幅広い層が参加し、実際に台湾から舟に乗った、与那国町教育委員会の村松稔氏も出席。航海に用いた櫂(かい)を持参し、当時の様子を語った。

村松氏は過酷ながらも見事に成功した航海経験を振り返り、「成功を信じることにつながり、新天地を求めた祖先たちがこうしてやり遂げたことを実感した。次の世代にも乗ってほしいですし、このプロジェクトを子どもたちにも知ってもらいたい」とコメント。

科学技術の発展により、現在は宇宙にも行けるようになったが、はるか昔から人類がその叡智を結集して未知の土地を目指していたということ、そしてプロジェクト参加者の不屈の精神が、観る者の胸を熱くするドキュメントだ。コロナ禍の影響で劇場公開は叶わなかったが(2022年3月現在)、各種動画配信サービスで鑑賞できる。配信先、作品詳細は「スギメ」公式HP(https://www.kahaku.go.jp/sugime/)で告知している。
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