【「ブルー・バイユー」評論】アメリカの移民法に引き裂かれる韓国系移民と家族の物語を、小さな名優が支える!
2022年2月6日 18:00

アメリカは多くの移民たちにとって、けっして夢の国なんかじゃない。移民問題がいま、さまざまな波紋を呼んでいる。韓国系アメリカ人のジャスティン・チョンが製作・脚本・監督・主演作「ブルー・バイユー」で描くのは、アメリカの非情な移民政策によって引き裂かれていく、ある家族の物語。
韓国で生まれ、3歳のときに養子としてアメリカ南部に引き取られたアントニオ(チョン)。看護士のキャシー(アリシア・ディキャンベル)と結婚し、幼い連れ子のジェシーと3人で貧しいながらも幸せな家庭を築いている。キャシーが妊娠し、タトゥーアーティストとしての収入では不十分だと思った彼は職を探すが、窃盗の前科もあってうまくいかない。そんなとき、ジェシーの父親である警官のデニーとの一悶着で逮捕されたアントニオは、30数年前の養子縁組書類に不備があったと告げられ、国外追放命令を受けてしまう。
'80年代~'90年代に韓国から養子として渡米した多くの移民たちが、似たような憂き目に遭っているという。それを知ったチョンは彼らの悲劇に思いを馳せ、ごくパーソナルな、感情に訴えるやり方でドラマを構築した。16mmフィルムで撮影されたホームビデオのような映像に映し出されるのは、アイデンティティに悩みながら懸命に生きるアジア系移民の肖像。妻と義理の娘を心から愛し、このふたりからも深く愛され、なんとかこの幸せを守りたいと切望する男の叫びだ。
不器用な生き方しかできないアントニオのように、映画もときに不器用さを露呈する。デニーのキャラはブレすぎて戸惑いを呼び、その相棒はあまりにステレオタイプ。アントニオの浅はかすぎる行動にも「?」が浮かんでしまう。度々登場する、青い水の中に浮かぶ幻想的な回想と独白のシーンも、癌を患ったベトナム移民女性との交流も、過剰な自意識とメロドラマ性を感じさせるだろう。でも一方で、この不器用ささえも「愛しい」と思わされてしまった。
それは、生まれてくる赤ん坊にアントニオの愛情を取られてしまうのでは、と恐れるジェシーと、父親としてのアントニオとが一緒に過ごす時間があまりに美しかったからだ。共感できるかどうかは、キャストに依るところが大きいとつくづく思う。ディキャンベルの存在と演技がアントニオの舌っ足らずな人物像に絶対の説得力を与えている(彼女の歌う「ブルー・バイユー」は心に響く)し、なんといってもけなげで、ディキャンベルの娘にしか見えないシドニー・コウォルスケ! 彼女が見せるラストの演技に涙を流すなというのは無理な話。小さな名優が、映画の「訴える力」を支えている。
(C)2021 Focus Features, LLC.
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
感情ぐっちゃぐちゃになる超オススメ作!
【イカれた映画を紹介するぜ】些細なことで人生詰んだ…どうにかなるほどの強刺激
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
映画ラストマン FIRST LOVE
「ドラマの映画化か~」と何気なくつぶやいたら後輩から激ギレされた話「これ超面白いですから!!」
提供:松竹
年末年始は爆発・秒殺・脱獄・名作!!
【全部無料の神企画】今年もやるぞ!ストレス爆散!!劇的チェンジ!! 1年の疲れを吹き飛ばそう!!
提供:BS12
こんなに面白かったのか――!!
【シリーズ完全初見で最新作を観たら…】「早く教えてほしかった…」「歴史を変える傑作」「号泣」
提供:ディズニー
映画を500円で観よう
【2000円が500円に】知らないとめっっっっっっっちゃ損 絶対に読んでから観に行って!
提供:KDDI
今年最大級に切なく、驚き、涙が流れた――
双子の弟が亡くなった。僕は、弟の恋人のために“弟のフリ”をした。
提供:アスミック・エース
ズートピア2
【最速レビュー】「前作こえた面白さ」「ご褒美みたいな映画」「最高の続編」「全員みて」
提供:ディズニー