膨大な磁気テープの映画遺産を失う前にできることは? 国立映画アーカイブで緊急フォーラム、10月16日開催
2021年10月1日 09:00
ビデオテープで撮られた多くの映画を失いかねない危機への警鐘を鳴らす緊急フォーラム「マグネティック・テープ・アラート:膨大な磁気テープの映画遺産を失う前にできること」が10月16日、国立映画アーカイブ(長瀬記念ホール OZU)で開催されることがわかった。ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」(10月27日)の記念特別イベントとなっており、ビデオレクチャー、トークイベントなどが行われる。
フィルムからデジタルへの緩やかな移行期といえるこの50年間は、磁気テープの時代でもあった。プロの映画人からアマチュアまで無数の人々が、映画はもちろん、地域や職場、家庭で多様な記録映像を生み出してきた。だが、ユネスコはこのような警告を発している。それらの膨大なビデオ、オーディオテープの映像や音は、2025年までにデジタルファイル化されなければ、永遠に失われかねない――というものだ。
ビデオによる映画は、80年代後半以降、プロによるVシネマ、文化・記録映画、インデペンデント映画など多数あるが、それら以外にも、テレビ放送用の映画、テレビ番組、メディアアート、自主映画、ホームムービー、会社や学校、地域の記録映像など、膨大に存在している。だが、丁重にテープを保管していたとしても、動作可能な再生デッキが無くなれば、記録された映像や音は“二度と読み出せなくなる”“失ったも同然になる”のだ。
今回のフォーラムには、その危機意識をしっかりと抱き「今のうちにデジタルファイル化を始めてほしい」という思いが込められている。なお、メーカーが再生機の保守サービスを完全終了するのは、2023年3月。再生機の生産は終了しているため、“デッドライン”は2025年よりも早まる可能性もある。
国立映画アーカイブ主任研究員・冨田美香氏が、前述の内容に加えて、広く呼びかけたいと思っていることは「手元にビデオの再生機がある人は大事に使ってほしい」ということ。高校、大学の放送部、映画部、映像制作系の学校・大学には、U-マチック、Hi8、BETACAMなどの古い再生デッキが使用可能な状態で、まだまだ残っているはず。既に生産中止になって保守サービスも終わっている再生デッキの台数は、動作可能な台数は減る一方の状況だ。その貴重な再生デッキは決して捨てずに、デジタル変換の“自炊”、もしくはデジタル変換をしている専門機関に寄贈するなど有効利用を行ってほしい。
「マグネティック・テープ・アラート:膨大な磁気テープの映画遺産を失う前にできること」への参加は、事前申込制。本日10月1日の16時より、受付を開始する(料金:無料/定員:155名)。詳細は、公式HP(https://www.nfaj.go.jp/exhibition/unesco2021/)で確認できる。プログラムの詳細は、以下の通り。
ユネスコと国際音声・視聴覚アーカイブ協会(IASA)が発した「Magnetic Tape Alert Project」(2019年7月~)に先鞭をつけ、磁気テープの音声・映像は 2025年までにデジタル化しなければ永遠に失われてしまう、と問題を提起したオーストラリア国立フィルム&サウンドアーカイブ(NFSA)のキャンペーン「Deadline 2025: Collections at Risk(危機に瀕したコレクション)」(2015年10月~)の解説。
ミヒャエル・レーベンシュタイン(オーストリア映画博物館長、FIAF 事務総長、オーストラリア国立フィルム&サウンドアーカイブ前CEO)
最も喫緊性の高い「磁気テープの映画原版」を中心に、独立プロダクション、映画制作教育機関、公立フィルムアーカイブの報告から、デッドラインまでの限られた時間の中で“今できること・すべきこと”そして“課題”を検討する。
映画100年、日本映画監督協会50周年を機に、「先輩監督の貴重な証言を磁気テープにおさめ、監督協会に永久保存する」と、当時の第一線の監督たちが手弁当で作ったインタビュー映画シリーズ(1988年~)を、磁気テープの貴重な映画遺産の例として紹介。
崔洋一(日本映画監督協会理事長)
再生機の保守サービスが2023年3月終了と明らかになった2014年以降、危機回避に向けて多様な分野におよぶ磁気テープ保管者に積極的にデジタルファイル化を働きかけてきたポスト・プロダクション、ラボ、倉庫会社の報告を中心に、国内の現状、マイグレーションまで含めた保存のあり方を検討する。
鈴木伸和(株式会社東京光音、視聴覚アーキビスト)
藤原理子(株式会社 IMAGICA エンタテインメントメディアサービス メディア営業部 フィルム・アーカイブ営業グループ)
緒方靖弘(寺田倉庫株式会社アーカイブ事業グループ)
司会:三浦和己(国立映画アーカイブ研究員)
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
クリスマス映画の新傑作、爆誕
【「ホーム・アローン」級の面白さ】映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
死刑囚の告発をもとに、雑誌ジャーナリストが未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化。取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。