のん「私をくいとめて」で魅せた“女優魂” 大九明子監督「まだまだ“狂暴なふり幅”がある」
2020年12月11日 09:00
芥川賞作家・綿矢りさ氏の原作小説を実写映画化した「私をくいとめて」の封切りまで、残り僅かとなった。同作は、第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門で、一般観客からの投票で最も支持を集めた観客賞を受賞。この栄冠へと至った要因のひとつは、主人公に扮したのんの表現力であることは間違いないだろう。
本作で描かれるのは、おひとりさまライフを満喫する31歳のみつ子(のん)が、脳内の相談役「A」とともに年下男子・多田くん(林遣都)との恋に挑む“崖っぷちロマンス”。一足早く本作を見たファンからは「可愛らしい演技はもちろん上手いけど、ダークな一面や激しく感情を剥き出すシーンとかも凄い迫力だった」「のんさんの慟哭するみつ子、リアルでとても良かった~!」「のんさんの多才で多彩な演技は今回も魅力的」と絶賛の声が寄せられている。
みつ子は、会社では少々変わり者だが、気の合う先輩に恵まれ、休日はイキイキと“ソロ活”にいそしむ独身女性というキャラクターだ。のんといえば“伝説の朝ドラ”で老若男女問わず、多くの人を魅了させた初々しくもフレッシュな熱演が印象的だったが、本作ではそのイメージを一新。時にはお酒を片手に愚痴やぼやきをこぼしたり、時には想いを寄せる多田くんとの関係に悩みのたうち回る“おひとりさまヒロイン”を見事に体現している。
「何年ぶりかに主役として呼んでいただき、この映画に参加させていただけたことに心から喜びでいっぱい」と並々ならぬ思いを抱えて、撮影に臨んだのん。そんな彼女を、大九明子監督は「仕事人ですね」と表現する。「撮影前や撮影中も疑問に思ったことは、すぐに連絡をくれたり、合間に直接聞きに来てくれたり……。本当に真面目な方で、私はとてもやりやすかったです」と真摯に作品と向き合う姿に心打たれたようだ。
さらに、オファー当時の様子については「最初に『どうしてこの役をやってくれようと思ったんですか?』と聞いたら、『温泉施設でみつ子が激しく気持ちが揺れるシーンをやってみたいと思ったから』と答えてくださって。吐き出したい何かがたくさんある方なんだろうなと思ったのを覚えています」と振り返る大九監督。のんの意気込み通り、温泉施設でのみつ子の感情の爆発、そしてクライマックスで再び“暴走する”という一連のシークエンスは、大九監督にとって印象深いものになったという。
クライマックスシーンでの撮影では、みつ子の“怒りの沸点”を一番大事にしていたという大九監督。「“A”へ放つ『役立たず!』の一言は、この一発で殺すつもりで言ってほしいと伝えました。朝イチの撮影だったのですが、朝からのんさんにめちゃくちゃ怒ってもらって(笑)。少なくとも私がこの撮影中一度も見たことのない顔をされていたので、この方はまだまだ狂暴なふり幅があるなと内心すごく嬉しかったです」と舞台裏を明かし、のんが魅せた“女優魂”を称賛している。
「私をくいとめて」は、12月18日から全国公開。