【「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」評論】サスペンスの妙味をはらんだクライマックスには、痛さと切なさと優しさが同居している
2020年10月12日 20:00

シリコンバレーに近いサンフランシスコは、全米有数の富める者の街だ。1LDKの平均家賃は約37万円。4人家族の場合、年収約1240万円以下は低所得層に分類されるという。
ジミー(ジミー・フェイルズ)は、そんなサンフランシスコの高度成長の歴史に居場所を奪われた黒人青年。税金が払えなくなった父のせいで祖父が建てたビクトリア様式の美しい家を追われ、家庭を失い、コミュニティも失った。今の彼は、環境汚染地区で暮らす親友モント(ジョナサン・メジャース)の家に居候している。いわば都会の難民だ。
しかし、驚くべきことに、ジミーの胸には、彼をこの過酷な環境に追いやった街に対する怒りや憎しみがない。あるのは純粋な愛だけだ。格差社会の犠牲になったマイノリティであるにもかかわらず、ジミーの中では、この街の歴史の一部であることの誇りが何よりも大きな位置を占めている。演じるフェイルズの生い立ちを反映させたジミーのキャラクターと、スケートボードの速度で街を愛でるように捉えた映像が、この映画を特別なものにしている。
ドラマは、ジミーの愛と誇りの象徴である生家をめぐって展開。その家に再び住む夢を見たジミーの奮闘を描く。といっても、それが家を取り戻すための闘いにならないところが、この映画のユニークさ。ジミーが闘うべき相手は自分――過去の幻を追いかけている自分自身だ。そのことにジミー本人より先に気づいたモントが、どんなやり方でジミーに伝えるのか? サスペンスの妙味をはらんだクライマックスには、痛さと切なさと優しさが同居している。
外見は都会の片隅に追いやられたマイノリティの苦境を題材にした社会派映画だが、実体は自立と男の友情を題材にした青春映画。自分の居場所は、探すものでも取り戻すものでも帰るものでもなく、自分の手で作るものだというメッセージが胸に沁みる。
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