三吉彩花&阿部純子、一心同体で体現した“10カ月の変化” コロナ禍での日々も振り返る
2020年9月16日 13:00
[映画.com ニュース] ルームシェア生活を送る女性同士の、その一方が妊娠してしまったとしたら――津田肇監督が自らの経験を基に描いた「Daughters(ドーターズ)」が映し出すのは、10カ月にも及ぶ“変化”だ。映画.comでは、2019年10月23日の撮影に密着。そこから月日は過ぎ去り、ついに作品が産声をあげようとしている。ダブル主演を務めた三吉彩花と阿部純子は、念願の封切りを目前に、何を感じているのだろうか。(取材・文/編集部)
主人公は、東京・中目黒でルームシェア生活を送る小春(三吉)と彩乃(阿部)。2人が「妊娠」「シングルマザー」という人生の決断を経て、友情、仕事、家族と向き合いながら、過去への固執と現実、そして“その先”を描き出す。現場取材で体感したのは、チーム全体が“映画作り”を楽しんでいるということ。三吉と阿部は互いを信頼し合い、スタッフ陣の笑顔もしっかりと記憶に残っている。きっと素敵な作品になる――その予感は、今となっては正しかったのだ。
寄り添い、時にすれ違う小春と彩乃の心情を、四季折々の情景が彩り、かつて同じ速度で歩んでいた「過去」が介在していく。妊娠と出産までの些細な出来事をすくい取りながら、“人生の速度の変化”にも着眼した、苦くも美しい物語。完成した作品は、チーム一丸の思いが、見事なまでに結実したものとなっていた。
撮影が始まったのは、19年3月。その後、6月、10月と3回に分けて実施されている。つまり、三吉と阿部は、約8カ月もの間、役ととも生きている。「(クランクアップ時は)達成感が凄かったです。自分の中でやっと小春の人生を終えられたイメージ。ひとりでクランクアップをした寂しさもあったのですが、嬉し涙を流していました」(三吉)、「終わった後は、しばらく放心状態でした。妊娠とはどんな感じなんだろうと考え続けた日々でしたし『(彩乃は)もういないんだ』と喪失感の方が大きかったです」(阿部)と打ち明ける。その長きにわたる日々を、2人は「一心同体」となって突き進んでいた。
阿部「(完成した作品は)まだ客観的に見ることができていないんです。葛藤の多い日々でしたから……。彩乃の感情の揺らぎに、小春が呼応してくれている。常にそういう感覚がありましたし、妊娠・出産を経験した方、される方にも分かってもらえるように演じなければならない。常に悩みながら、撮影に臨んでいました」
三吉「私は『一緒にのまれていく』という感覚を抱いていました。月日が経っていくうちに、彩乃のお腹が大きくなり、疲れやすくなって、手足が痺れ、体が痛くなる――それらの変化を経験していない状況で純ちゃんは役を演じていましたし、現場の皆が役と向き合う際の緊張感を感じていました。ですが、純ちゃんの緊張感を一緒に感じることができて良かったです。小春の悩みは、私の悩み。純ちゃんを真隣で見ているからこそ『今、どうしてあげればいいのか』とずっと考えることができました」
撮影現場の“居心地の良さ”を作り上げていたのは、ひとえに津田監督の手腕によるところが大きい。改めて、津田監督との仕事について振り返ってもらった。
三吉「台本のセリフは、ニュアンスが伝われば、言い回しをかえてもいいという方でした。小春の目線、彩乃の目線、劇中で起こる出来事を同じ目線に立って考えてくれる。そこには、監督ご自身の経験が深く関わっていると感じました。役者にしっかりと寄り添ってくれるんです」
阿部「印象的だったのは、彩乃が小春に出産の事実を伝えるシーン。私の感覚ではこっそり教えるものなのかなと思っていたんですが、津田監督は『もっとばっさり伝えてほしい。この瞬間に至るまでに、彩乃は色々考えてきているはず。軽快に話してほしい』と。彩乃は、何事も自分で決められるタイプ。シリアスに伝えるよりも、小春のことを考えながらも、あっさり伝えてしまう。だからこそ、そういう描き方もあり得る。印象的な演出でした」
公開日が発表されたのは、今年の5月20日のこと。言うまでもなく、新型コロナウイルス感染拡大が多方面に影響を及ぼし、それは現在まで続いている。情報解禁とともに「多くの人々が自宅待機、長きにわたる『STAY HOME』によっていつの間にか過ぎ去ってしまった季節、そばにいる人との日々を思い起こし、ほんの一時でもこのうねりを忘れられるような時間になることを願っています」とコメントを残した津田監督。三吉と阿部は、コロナによって“変化した日常”をどのように過ごしていたのだろうか。
三吉「何カ月も仕事をしていない状況は、これまでなかったんです。作品に没頭している時は、作品の事で頭の中がいっぱいになって、時には逃げだしたくなる事もありました。ですが、やはり役に触れあう時間、様々な方とセッションができる日々は、すごく楽しいんです。色々なものが生まれていくワクワク感が薄れていたので『早く撮影がしたい!』と思うようになっていました。一方で、自分と向き合う時間が増えたことも確かです。深呼吸をしながら、1日1日を丁寧に過ごしていました。これまでは24時間があっという間でしたけど『1日の中で出来ることが、こんなにたくさんある』と感じられた日々でした」
阿部「自分のペースを取り戻すことができた日々でした。私は、他人のペースに合わせてしまうことが多いタイプなんです。自分の時間ができると『これは居心地が良い』『これは居心地が悪いな』と考えられましたし、当たり前のことを、当たり前のようにすることができたんです。映画もたくさん見ましたし、映画を通して『何ができるのか』と考えたことも。『映画は、やっぱり必要だ』と感じる期間でもありました」
「映し出される風景、衣装のバランス、インテリアのコントラスト。『Daughters(ドーターズ)』は“美しい”という印象が強いんです。一見重いテーマを含んだ作品に感じるかもしれませんが、きっとフラットな気持ちで見れるはず。さまざまな世代の方に、色々な見方で触れてほしい作品になりました」という三吉。コロナ禍であっても、映画館での封切りは感慨深いようだ。
三吉「映画館で上映できるという事は、作品を届ける立場の私たちにとって、非常にありがたいことです。映画館の大きなスクリーンで『Daughters(ドーターズ)』の世界観に接していただければ、女性の強さとリアル、楽しさを、より感じてもらえるはずです」
阿部「映画は、やっぱり映画館だからこそ堪能できることがあると思います。今は厳しい状況ですが、映画館はなくなってはならない存在ですし、これからも良い映画が続けて欲しいと思っています。それを、私たち俳優も求めています。出演する機会がなくなると、表現の場をどこに求めていいのかがわからない――実際に、私も『どうしよう……』と考えてしまうことがありました。今は演じることが、とにかく楽しい。もちろん失敗することもたくさんありますけど、それでも楽しいと感じてしまうんです。これからも多くの方々に“映画を求めてほしい”と思っています」
「Daughters(ドーターズ)」は、9月18日から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
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