「ソワレ」で製作に徹した豊原功補&小泉今日子、日本映画への熱情
2020年8月29日 07:00
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[映画.com ニュース] 豊原功補、小泉今日子、外山文治監督らが立ち上げた映画制作会社「新世界合同会社」の初プロデュース作品「ソワレ」が、8月28日から全国で公開中だ。村上虹郎と芋生悠をダブル主演に迎えた今作では、製作サイドとして裏方に徹した豊原と小泉が、映画.comに日本映画界への“熱情”ともいうべき思いを明かしてくれた。
「ソワレ」は、和歌山県の名所・道成寺にまつわる「安珍清姫伝説」を織りこんだオリジナル作品で、人生の主人公になることがかなわなかった若い男女の切ない逃避行を描いたドラマ。タイトルには、外山監督の「人生の主人公になることがかなわなかったふたりが、自分の人生を主人公として歩んでいく。そういう願いみたいなものを込めました。でも(新型コロナウイルスの感染拡大により)世界が変わってしまったので、今となっては夜明けを待つ人たち全体を称して『ソワレ』っていう意味があるのかなと解釈しています」という思いが込められている。
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そんな今作にあって、豊原と小泉はオーディションの仕切りに始まり、撮影現場での車止めやスタッフの弁当の片づけまで、とにかく精力的に動き回っていたという。さらに宣伝に関してもポスター、チラシ、予告編の制作に参加し、並々ならぬ思いを注いできた。それだけに、日本の映画界に対して長年にわたり感じてきた思いは、溢れ出るほどの勢いがある。
豊原「オリジナルの企画が通らないとか、いろいろネガティブなことは聞こえてくるけど、現場では俳優として役に没頭し、監督やスタッフと作っていく温もりに変化はない。これは何なのか? ということを知りたいがためにやっているということもあります。かつてテレビに押され映画斜陽の時代があり、ビデオ、DVD、ネット、今度は配信がきた。そして新型コロナで劇場はどうなるんだと、もっと顕著になったわけです。そもそも、そういうものを抱えながらずっと来ている。それと、日本が発する映画が面白いか面白くないかは、別問題だと思うんです。作り手の志の問題なんじゃないか。僕らは、いろいろな疑問は解決したいけど、とにかくいいものを作りたい、それだけなんですよね」
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小泉「境界線が曖昧になっちゃっているなあと感じますね。若い頃に感じていた映画界、テレビ界ってちゃんと棲み分けが出来ていました。テレビはテレビでプライドがあって、テレビでしか出来ないことをやっていた。映画もしかり。でもそこが侵食され、大きなプロジェクトとして進めようというのが映画にはみ出てきている感じがして、もったいないなあと思う。テレビでしか出来ないことがあるのに、今はその努力をしていないように見えてしまう。映画も純粋に作っている人はいるけれど、お金が稼げるという部分も見えちゃっているわけじゃないですか。もう一度、綺麗に色を塗り直したいなと客観的に見ています」
豊原「でもそれって、難しいよなあ。お金をもうけるって、仕事としては当たり前のこと。ただ、稼ぐということの天井を、日本のマーケットが作っちゃっているんじゃないの? ということはずっと感じています。映画って本来、新たな発想、突飛な世界とかから生まれてくるはずなのに、この国では異質なものは商売にならないと脇にどけられちゃう。そうすると、一生懸命に発想しなくなっちゃうんですよね」
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また、昨今の宣伝のあり方にも考えをめぐらせている。公開直前になるとバラエティ番組などに出演し、映画をPRする露出が増えているが、そこに意味を見出せずにいる役者がいても、不思議ではない。
豊原「テレビでの露出を通して、いち俳優、いち女優にとって顔と名前を売ることも確かに大事ですよね。でも、僕はあまり魅力を感じることができないんですよね。若い頃から、そういうことをしない人の映画が見たいと思っていましたから」
小泉「わたしは俳優業のとき、そういうことを利用できたし、してきた。歌手だったので、テレビに出るということが日常のなかで、表現者として育ってきたわけです。そんなわたしがインディーズの匂いがする映画の主演をさせていただくことがあって、そこを繋げるという役割が出来ていたのかなと思うのですが……。私たちがそういうことをしたから、こうなってしまったんじゃないかという反省もあります」
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豊原「こういう考え方の話をするとですね、新世界合同会社はもう血みどろですよ(笑)。だって、小泉は時代の象徴ですから。こちらは個で向かう仕事をしてきましたから。両極端ですよね」
小泉「私の出発点が歌手だったわけですが、それがなかったらどんなに楽しかっただろうなと思う瞬間もあるんです。役者さんが役を演じることに集中していることの尊さ、美しさ。そういう人を見ているのが個人的には好き。だからテレビで無理してプライベートを切り売りするコーナーに出ているのを見ると、もったいなく思ってしまう。その人に興味を持つきっかけにはなるかもしれないけれど、映画館へ行こうという行為には繋がっていないように感じるんです」
ふたりがこんなにも真摯な眼差しを注ぎながら話すのは、どこまでも真っすぐに映画を愛しているからにほかならない。その愛を注ぎ込んだ「ソワレ」を、劇場で体感してもらいたい。
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