全興連、映画館営業再開に向け今後の見通しを説明 新型コロナ感染拡大予防ガイドラインも改訂
2020年5月28日 17:10
[映画.com ニュース] 全国興行生活衛生同業組合連合会(以下、全興連)の佐々木伸一副会長は5月28日、都内で映画館の営業再開について、今後の見通しや取り組みについて会見した。
全興連は映画館の全国組織として知られているが、生衛法(生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律)に基づいて組織された、各都道府県の生活衛生同業組合によって構成される唯一の団体を指す。同団体は、5月22日付で「映画館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(https://www.zenkoren.or.jp/news-pdf/0522_COVID-19_guideline.pdf)を改訂している。
佐々木氏は、劇場の換気に関して「非常に厳しく取り組んでいます。映画館は、そもそも密閉ではないんです」と説明。映画館は、興行場法に基づいた館内空調の常時換気を行うことを徹底している。換気能力は1平方メートルあたり毎時75立方メートル以上と厳密で、観覧室の床面積が400平方メートルを超えるもの、地下に観覧室があるものは空気調和設備もしくは第1種機械換気設備を設けることが義務づけられている。
今回改訂されたガイドラインでは、施設内各所における対応策として、行列や混雑が想定される場所では可能な限り2メートルを目安(最低1メートル)に間隔を空けた整列を促すとしている。また、客席は「十分な座席の間隔の確保(前後左右を空けた席配置、距離を置くことと同等の効果を有する措置等)に努める」と明記している。
懸念されるシチュエーションとして、上映終了後の退場時を挙げる。「退場時はお客様が一斉にひとつかふたつしかない出口に向かうわけで、ソーシャルディスタンスの確保は必要になってくる。列ごとの退席とか、その点は工夫しないといけないでしょうね」。さらに、「幕間の時間も、通常20分だったものを40分かかると考えておくべきだし、そうすると上映回数が減るということも避けられないだろう」と見解を明かす。
全国各地で映画館の営業再開が発表されているが、東京都では3段階に分けて実施する休業要請の緩和措置のうち、博物館や図書館が第1段階の「ステップ1」(26日午前0時から移行)なのに対し、映画館は「ステップ2」に分類されている。早ければ月内にも段階的な緩和を前倒しするとも言われているが、佐々木氏は「(ステップ2に分類されて)愕然としました。文化的生活の必要性というのはひとりひとりの気持ちの問題ですし、それを行政が判断するのは非常に怖いことだと思います。我々は文化的に貢献しているという自負が当然ありますし、これに関しては抗議しました」と表情を引き締める。
興行としての見通しについては、慎重な姿勢を崩さない。日本映画界では、10年以上前から映画人口2億人を目標としてきた(過去最高は1958年の約11億2000万人)。昨年ようやく1億9000万人を突破し、“悲願”へ到達間近となっていたが「夢のかなたに……。東京の映画館が閉まっている状態なので、新作がほとんど出てきていない。夏休み興行に向け、需要の高まりを期待したいところ。ただ、前年の50%くらいは覚悟しないといけないだろう」と語った。
また、公開延期になった作品が劇場公開を断念し、配信を選択することについても言及。「我々は映画文化を守るということが大前提ですが、映画館文化も守っていかなければならないんです。作り手の方々により多くのリターンをと考えたとき、まず映画館で上映し、それから2次利用、3次利用という流れが一番リターンは大きいはずなんです。製作者たちが無視されないようなマーケットを維持していかなければならないと思っています」と締めくくった。
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