故大杉漣さん出演作「モルエラニの霧の中」予告完成 坪川拓史監督が描く、失われていく街の記憶
2020年1月29日 05:00
[映画.com ニュース]故大杉漣さんが出演し、大塚寧々、香川京子が共演した映画「モルエラニの霧の中」の予告編とポスタービジュアルがお披露目された。北海道・室蘭市の美しい風景とともに、失われていく街の記憶をめぐる7つの物語が紡がれていく。メガホンをとった坪川拓史監督は、大杉さんが室蘭を離れる日にスタッフに残した「映画づくりは同じ船にみんなで乗ること。モルエラニ号という船の乗組員になれて嬉しい。この映画もきっといつかすてきな港に着くと思う」という言葉を紹介している。
長編デビュー作「美式天然」で第23回トリノ国際映画祭グランプリと最優秀観客賞をダブル受賞するという日本人初の快挙を成し遂げ、2011年に東京から室蘭へと移住した坪川監督。街で出会った人々から聞いたエピソードをもとに、7話連作形式の脚本を執筆した。「ここに生きる人々の息づかいを映画に残したい。そして、この街を知ってほしい」という坪川監督の強い思いを受け、14年に市民が有志で映画製作応援団を結成し、資金を集め、クランクインを果たした。その後、度重なる撮影中断を乗り越え、18年10月にクランクアップ。街の約1000人が協力し、5年の年月を経て完成を迎えた。
移り変わる時代の中で地方都市に生きる人々の姿が、優しく慈しむような眼差しで描かれた“街の自画像”とも言える本作。劇中に登場する建物の中には、既に壊されてしまったものも多いという。タイトルにある「モルエラニ」は、アイヌの言葉で「小さな坂道をおりた所」という意味で、室蘭の語源のひとつとされている。
大杉さん、大塚、香川に加え、小松政夫、水橋研二、菜葉菜、久保田紗友、中島広稀、草野康太、坂本長利ら実力派俳優陣が顔をそろえた。さらに、坪川監督が脚本のベースにした実話に登場する本人や、街の中でスカウトした人々など、演技経験が全くないキャストも出演している。
予告編では、「青いロウソクと人魚」「名残りの花」「しずかな空」「Via Dolorosa」「名前のない小さな木」「煙の追憶」「冬の虫と夏の草」という、四季に寄り添う7つの章それぞれの印象的なシーンが切り取られている。前を向いて歩こうという決意の表れのように、登場人物たちの背中をおさめたカットが印象的だ。坪川監督と以前から交流のあった、シンガーソングライター・穂高亜希子の楽曲「静かな空」が、ノスタルジックな映像をあたたかく包みこんでいる。
ポスターは工業地帯として知られ、霧が立ちこめる室蘭の街を背景に、水上で舞うバレリーナが幻想的なビジュアル。「モルエラニの霧の中」は、3月21日から東京・岩波ホールほか全国で順次公開。
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