「クィア・アイ」ファブ5が伝える“愛”の重要性「ほかのことは単なるおまけ」

2019年11月3日 12:00

ファブ5が東京での撮影を述懐
ファブ5が東京での撮影を述懐

[映画.com ニュース] Netflixオリジナルシリーズ「クィア・アイ」の日本を舞台にしたスペシャルシーズン「クィア・アイ in Japan!」が配信中だ。悩みを抱えて自信を失った人々を魅力的に生まれ変わらせるファビュラスな5人のゲイの男性、通称ファブ5のメンバーが、日本での撮影を通して感じた文化、そして自分を愛し、他者から愛されることの大切さを語った。(取材・文・写真/編集部)

「クィア・アイ」は、米Bravoの大ヒットリアリティ番組「Queer Eye for the Straight Guy(原題)」のリブート版。ファブ5のメンバーには、美容担当のジョナサン、フード&ワイン担当のアントニ、ファッション担当のタン、カルチャー担当のカラモ、インテリア担当のボビーという各分野のスペシャリストがキャスティングされた。現在シーズン1~4、そして「クィア・アイ in Japan!」ががNetflixで独占配信中。5人の匠の技はもちろんのこと、相手を尊重する人柄が愛され、世界的な大ヒット作品となっている。

――日本での撮影はいかがでしたか?

ボビー 日本は世界で1番好きな国のひとつで、東京は1番好きな街のひとつ。秩序正しく、清潔で、すべてのものが時間通りに動くのが大好きなんだ。日本のスタッフは絶対に優秀だろうと期待していたし、撮影は順調に進むと思っていたよ。意思の疎通を図る上で、言葉の壁に少し不安はあったけど、そんな心配も無用だった。なんの問題もなく気持ちが通じ合うことができた。予想外のことはなくて、そこが日本のいいところ。期待を裏切らないという意味でね。

――今作が国や文化の壁を超えて多くの人に愛される理由は何だと思いますか?

カラモ 世界の共通語は「愛」で、誰もが愛を求めている。誰もが愛されたいと思っているし、誰かに存在を認めてもらいたいと思っている。周りから否定的な目で見られているんじゃないか、愛されていないんじゃないか、嫌われているんじゃないかという思いを抱えながら生きている。だからこそ、人に勇気を与える「今のままで十分素敵だ」「みんな君を愛しているよ」と言ってくれる番組にひかれるんじゃないかな。

――みなさんは非常に褒め上手ですよね。

ジョナサン これまで僕が出会った人たちは、少なくとも僕が知る限り本物の悪人はいないし、何らかの形で通じ合うことができる。ほとんどの話題で根本的に意見が合わない人たちでも、「自信を持ちたい」「気持ちを聞いて欲しい」という思いには共感できるから。自分と違う部分にばかり目を向けるよりも、どこか共感できる部分を見つける方が気持ちが満たされるよね。

ボビー ゲイの男性としてアメリカで育って、これまで嫌なことを散々言われてきたから、人を褒めてあげることや、その人の良い部分を見つけてあげることがいかに大事かということを身をもって学んできた。言葉によってどれだけ傷つけられるかがわかっているんだ。だからこそ、言葉が人に与えるプラスの効果も、ちょっと褒めてあげるだけで、その人の生き方を変えることができるのもわかっているつもりだよ。

――固定概念にとらわれない、あなたたちの思う“幸せ”について教えてください。

ジョナサン 例えば結婚しなければ幸せになれないという固定概念について、僕はいつも愛情を持って「セックス・アンド・ザ・シティー症候群」と呼んでるんだ。「何があろうと絶対に別れないほどの深い愛で結ばれたい」って願っちゃうみたいなね。僕は常にそれに抗ってる。みんなそこに重点を置きすぎだと思うから。何よりもまず自分を愛せなければ駄目。番組のなかでも、恋愛を成就させるお手伝いをしてきたし、見ていて楽しいのは確かだけれど、1番重要なのは自分自身を愛することだって僕たち全員が思っている。

――日本では、幼いころから自分のことよりも、まずは周り人のことを考えて謙虚であることが美徳と教育されることがあります。日本で暮らす若者たちが自分の夢を追いかけるために前に踏みだすには、どうすれば良いと思いますか?

ジョナサン 日本文化に関して僕はまだまだ学んでいる段階で、精通しているわけじゃない。だからもっと知りたいと思って日本に来たんだ。そんな僕から日本で暮らす若者に言えることは、僕はアメリカの田舎出身だということ。国が違っていても、みんな同じような問題に直面していると思う。アメリカの田舎の若者も、日本の田舎の若者も、あらゆる類の理不尽な期待を背負わされている。でも、そこを突破して、出ていく人は毎日いる。僕たちはこうして夢を掴んだ。目標に向かって、自分の信じた道を生きている。子どもの頃のお手本は、「ベスト・フレンズ・ウェディング」のルパート・エベレットだった。つまり、「自分もああなれるかも」と思わせてくれる人を見つけたの。だからこそ、こうして人前に出ることが大事だと思ってる。情熱さえあれば、夢を掴んでいる人はたくさんいるってことを伝えたいから」

カラモ 今回出会った日本の依頼人たちも、日本の伝統的な考えや美徳、他人に尽くすことを大事にしながら、自分の幸せを優先できる場所を見つけることがなかなかできずに悩んでいた。でも、もっと大きな夢を思い描くことで、自分が満たされる生き方を手に入れながら、周りを支え続けることもできると気が付いてくれた。でもそれだけじゃなくて、さらに自分の気持ちを伝えることも大事だということにも気付いてもらおうとしたよ。彼らの多くは自分の気持ちや悩みを打ち明けることができずにいた。もし声に出してしまったら、子どもの頃から教えられた人としてあるべき姿に背くことになるのではないかと恐れていた。そんな彼らが、周りの人たちを支えながら自分が本当に望む生き方を手に入れることができることを実感していく様子を目の当たりにするのが、本当に素晴らしかった。この番組ではそういう感動が毎日起きているんだ。

――自分に自信持てないでいる人たちに、何を伝えたいですか?

カラモ 今回日本の依頼人たちと接して気付いたのは、彼らの多くが人には見せたくない部分を抱えていることだった。それは傷ついたこと経験が発端だったりする。誰かから自分のことを変だとか醜いと言われたりして。その傷が今度は恥に変わって、自分もそうだと思い込んでしまう。まず、「その思い込みから自分を解放してあげていいんだ」と自覚する必要があると思う。自分が好きになれる自分の別の部分に目を向けるんだ。自信が持てなくても、そんな自分を美しいと言ってくれる、支えてくれる人たちを周りにおくこと。自信が持てないのは誰だって同じ。人から変だと言われた経験は誰にだってあって、みんな日々自分に「大丈夫だ」って言い聞かせている。ありのままの自分こそが完璧な姿であって、そんな自分を愛するところからまず始まるんだって。そうやって一歩一歩進むことによって、自信が持てるようになるんじゃないかな。

タン ヒーローたちのほとんど全員が、着るものが大事だとはまったく思わないところまでいってしまっているように感じたんだ。服は表面的なもので、まったく重要じゃないってね。だから各エピソードの最後に、彼らが鏡のなかの自分に向かって無意識にほほ笑んでいるのを見るのはとても興味深かった。おそらく本人さえかなり長い間目にすることのなかった、彼らの一面を見ると、それが自信に繋がっていると思ったよ。大胆なことをする必要はなくて、鏡のなかの自分をのぞいたときに幸せな気持ちになれて、今までとは違う振舞いができる自分を見出せること。それがファッションの力。自分自身に満足することを知ることが大切だよ。

ボビー 日本の場合は、さっきの幼い頃から自分を優先させるのではなく、まず周り人のことを考えて謙虚でなきゃいけないという文化の話につながるんじゃないかな。それはある程度までは素晴らしいことだと思う。日本の人が持つ地球上のすべてのものへの敬意がそこから生まれるわけだからね。でも、日本文化全般に言えることは、もう少しだけ自分のことを愛してあげてもいいんじゃないかということ。自分を愛せないなら、結婚相手や家族に対して愛情を伝えられるわけないでしょ? そこが唯一日本の文化に欠けている部分だと思う。もっと自分のことを愛していいと思う。まあ、アメリカ人は自分たちのことを愛し過ぎだけどね。

ジョナサン 日本が抱える問題は、アメリカが抱える問題とさほど違いはないように感じたよ。一見全然違うように見えて、一歩下がって社会学的観点から見てみると、日本文化もアメリカ文化も、南アフリカもロシアも、みんなそれぞれ抱えている問題はあるけれども、突き詰めてしまえば、みんな愛を求めているの。みんな受け入れられたいと思ってる。ほかのことは単なるおまけでしかないんだよ。

「クィア・アイ in Japan!」は、Netflixで独占配信中。

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