映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

ドキュメンタリーの巨匠ニコラ・フィリベール「映画はすべてが可視化される社会に抗うもの」

2019年10月31日 17:33

リンクをコピーしました。
ニコラ・フィリベール監督
ニコラ・フィリベール監督

[映画.com ニュース]「すべての些細な事柄」「ぼくの好きな先生(2002)」などで知られるフランスのドキュメンタリーの名匠ニコラ・フィリベール監督の最新作で、11年ぶりとなる日本公開作「人生、ただいま修行中」が、11月1日から公開される。今作はパリ郊外の看護学校で、年齢、性別、出身も異なる40人の実習風景に150日間密着。来日したフィリベール監督に話を聞いた。

--懸命に勉強し、誰かのために働きたいという若者たちの真摯な気持ちを捉えるとともに、さまざまな性別、人種が暮らすフランス社会の縮図を映したようにも見えます。

生徒たちはいろんな出自を持っています。肌の色もさまざま、属する社会階層も、信じる宗教も違う。看護学校、そして病院はいろんな人びとが否応なく集まってくる場所。具合の悪いところがあれば、労働者もブルジョアも看護の世話にならなくてはなりません。社会的には一番多くの種類の人びとが集まる場所、まさに社会の縮図であると思います。

--看護職、介護職はどんな社会でも必要とされる職業である一方で、日本では労働条件の厳しさなどから、誰もが憧れるような人気の高い職業とは言い難いです。フランスではいかがでしょうか。

もちろんフランスでも、人々が抱く看護職へのイメージに矛盾があります。路上でインタビューをすれば看護師に対して、賛美の声ばかりが聞けると思いますが、社会的にどうかというと、彼らの立ち位置は、仕事も過酷で給料も良くない、医者ほど社会的評価が高くないというところがある、二つの面がある職業です。

けれども、こういった仕事にモチベーションを持つ若者は少なくありません。なぜなら、自分がこの世の中で役に立っているということを実感できる職業だからです。他人の為に働けるという実感を感じ、チームでの作業もある。給料が良くない、労働環境が厳しいという条件がありながらも、人の役に立つという動機でこの職業を選ぶ人が多いようです。

--撮影対象のリアリティと共に人間の持つ良心も映しています。そういった作品に仕上げるためには、編集の役割も大きいのではないでしょうか。

私にとって編集の段階は幸せな時間であると同時に、非常に悩む段階です。いつも何かをあきらめて、カットしなければなりません。撮影のときは素晴らしくうまくできたと思っても、様々な理由でカットしなければならない時があります。今回、最後の面談のシーンは60パターン撮りました。しかし、最後に13パターンしか採用していないのです。60のインタビューは40時間のラッシュになりますから。映画的観点で難しい選択をしなければなりません。

また、映画というものは撮ったすべてを見せることはできません。それと同時に、すべて見せない方がいいということもあるのです。語られない部分、ミステリアスで想像させる余地を残すことで、その作品が強くなることがある。映画はひとつの構築物ですから。今の世界はSNSなどですべてが可視化される社会になっています。映画はそういうムーブメントに抗わなければと思っています。映画は観客の視点を構築していくものでなければいけない。すべてを差し出すのではなく、見る人の視点も構築するのです。

--40年近いキャリアをお持ちです。年を重ねるにつれ、自身の変化や進化、発表する作品への手ごたえを感じますか?

社会が進化するにつれて、私自身が変化していることはあると思います。人間は社会の進化に知らず知らずのうちに取り込まれていくものですから。しかし、私はそれと同時に身に付いてくるノウハウには興味がないのです。どんな時も学びなのだと考えています。経験は積んでいますが、私たちの社会や人間について知りたい、学びたいという欲求に突き動かされて映画を撮り続けています。

人生、ただいま修行中」は、11月1日から新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。

ニコラ・フィリベール の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

aftersun アフターサン

aftersun アフターサン NEW

父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版

セルビアンフィルム 4Kリマスター完全版 NEW

内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。

おすすめ情報

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る