ビム・ベンダース、最新作「世界の涯ての鼓動」で描いたのは「無条件の愛と不可能な愛」

2019年8月1日 16:00

ビム・ベンダース監督
ビム・ベンダース監督

[映画.com ニュース]ドイツの名匠ビム・ベンダースの最新作で、ジェームズ・マカボイアリシア・ビカンダーが主演する「世界の涯ての鼓動」が8月2日公開する。フランス・ノルマンディーの海辺で出会った男女が情熱的な恋に落ち、互いが運命の相手であることに気付くが、爆弾テロを阻止するMI-6の諜報員、深海の調査をする生物数学者というふたりにはそれぞれの任務があった。極限下の状況に置かれた“愛”の行方を描くサスペンスタッチのメロドラマ。常に新しい表現に挑戦し、絶え間ない進化を続けるベンダースが新作を語った。

--現在の地球で起きていること、人間の興味関心の多様性と、人類が持つ愛という普遍的な感情を大きなスケールで描いた作品です。過去作品でも様々な愛の形を描いていますが、この作品で扱われる「愛」について教えてください。

今回の作品では、「無条件の愛」を描いているんです。2人が恋に落ちて、非常に究極な状況での恋をする、無条件な愛であるということ。同時に「不可能な愛」でもあるのですね。今回の愛はこの二つの言葉です。「無条件の愛」と「不可能な愛」です。

--その「愛」をどうやって意識して撮られたのでしょうか?

私は非常に直感的に映画を撮るので、ストーリーボードを作ったり、あらかじめ多くのことをプランニングをするタイプではないのです。その時に正しいと思ったものを撮って進めていくタイプです。その時のムード、俳優の雰囲気、そしてそのシーンを見てその時の映像的に正しいものを撮っていきます。

--ふたりが目と目を見つめるシーンが印象的でした。

目を見つめるシーンについては、カメラが入って切り返していきますが、その2人というのは、カメラを通して見つめ合っているということになります。これはカメラを見つめるということは、観客をも見つめているということになるんですね。非常に強いインパクトを与えるので、私はあまりやらないのですが、今回は一度だけ、つまり一番最初に恋に落ちる瞬間だけ、視線の交わし合いをします。しかし、それは非常に強力なので一度だけしかやらなかったのです。

--ジェームズ・マカボイアリシア・ビカンダーというハリウッドで活躍する旬の俳優を起用した理由を教えてください。

人気があるからだとか、彼らを起用することで予算が取りやすくなるからという理由ではありません。役にぴったりだったからです。ジェームズの出演した映画はほとんど見ています。特に「キング・オブ・スコットランド」で彼の演技に非常に感心しました。彼はアメリカのブロックバスター映画にも出ていますが、私はそれらも見ていて、素晴らしい俳優だと思いますし、彼の世代でのトップの俳優の1人だと思います。アリシアも同じ理由で、あの世代でベストな俳優の1人だと思っています。とても知的な人ですが、同時に大きな心を持っている人でもあるのです。2人とも非常にあの世代ではトップだと思いますし、私自身も2人の化学反応を見てみたい、という気持ちがあり、起用しました。

-ラブストーリーと共に、現代社会での問題も同時に描いています。物語の中で宗教や政治問題を扱うことについて。

宗教と政治が合わさると非常に危険な組み合わせになると感じています。21世紀に入ったのに、私たちが中世に“終わった”と思っていた問題がまた舞い戻ってきている。それは非常に危険な状態です。自分の信仰のために死んでもいい、と思う考え方は、とても危険だと思っています。

--今作は、J・M・レッドガードの小説「Submergence」が原作です。オリジナルではない作品を映像化するとき、どのようなことに重きを置かれるのでしょうか。

映画というのは小説や脚本とは全く違うフォーマットだと思います。ですので、脚本があったとしてもそれは単なる踏み台です。映画を作る上では映画自身の言語あるいは映画自身の真実というのがあるので、基になっている小説などは後において、私の映画なりの言語を語らおうと思っています。

世界の涯ての鼓動」は、8月2日からTOHOシネマズシャンテ他にて全国順次公開。

(映画.com速報)

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