西島秀俊×佐々木蔵之介×本田翼が「空母いぶき」で放つメッセージとは?

2019年5月25日 11:00


インタビューに応じた西島秀俊、 佐々木蔵之介、本田翼
インタビューに応じた西島秀俊、 佐々木蔵之介、本田翼

[映画.com ニュース] 「沈黙の艦隊」で知られるかわぐちかいじ原作のベストセラーコミックを実写映画化した「空母いぶき」が、全国で公開中だ。平和を願う新時代を迎えた日本だが、世界は戦争や侵略などの脅威に脅かされ続けている中、自衛隊の存在意義や戦争観など、現代日本人が考えなければならない問題は山積している。そんな状況だからこそ、この作品は映画化されたといっても過言ではない、誰もが見るべき問題作に仕上がった。日本初の空母「いぶき」の艦長に抜擢された秋津を演じた西島秀俊、その副長・新波を演じた佐々木蔵之介、そして事件が起きた空母にたまたま乗り合わせてしまったネットニュース記者・本多を演じた本田翼に話を聞いた。(取材・文/よしひろまさみち、写真/間庭裕基

近未来。東南アジアに東亜連邦という武装勢力が台頭し、アジア各国を脅かす存在に。クリスマスイブ前日、沖ノ鳥島沖の群島にその武装集団が突如侵略。現場に急行した海保巡視船は拘束されてしまう。日本が初めて直面する専守防衛の局面に自衛隊、政治家らはどのように対処するのか……。

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――この作品のオファーを受けて原作を読んだとき、率直にどのように感じましたか?

西島「とんでもなくすごい作品だと思いましたし、実写映画化するとなると確実に問題作になるだろうと思いました。監督やプロデューサーにお話をうかがいましたが、そこで一致した意見は“平和のための映画にしよう”ということ。そのときに名前が挙がっていたキャストの皆さんも同じ気持ちで覚悟を決めて現場に入るはずだ、と僕自身も気を引き締めて挑みました」

佐々木「原作は近未来という設定ですが、今のこの世の中、いつこの事態が起きても不思議はないというリアリティに戦慄しました。最初、出演のお話をうかがったときは、正直言って出演すべきか否か悩み、戸惑いは隠せませんでした。でも、西島さんと同じですが、平和のための映画、というテーマに賛同しましたし、それなら挑戦してみようという気持ちになりましたね」

本田「私はおふたりが演じた自衛官とは違い、事件に巻きこまれたジャーナリストを演じていますが、原作にはいない役なんですよね。だから、最初にお話をうかがったときは、いったいどうして私が演じる本多がいるんだろう、と不思議に感じたんです。それで脚本を拝見したんですが、この作品の世界観を説明する、ある意味作品をご覧になっている観客の皆さんと同じ視点の役だということに気づきました。本多はジャーナリストですが、まだ駆け出しで、ジャーナリズムを完全に理解して仕事しているワケじゃない女の子。そんな一般人に近い目線だからこそ、私が演じる意味もあるのかな、と思いながら演じました」

――防衛費が過去最高になったり、憲法解釈などで自衛隊の存在意義自体が見直されるようになった今だからこそ、非常に難しいテーマの作品ですね。

西島「撮影前、実際に護衛艦に乗せていただいたんですが、その見学直後にその護衛艦が空母化するかもしれないというニュースが流れたんですね。コミックとして描かれた世界だったはずなのに、そうやってどんどんと現実が近づいていっているという実感は撮影前から感じてました。そのせいか撮影しながらも、そういったニュースや事件が起きると意識してしまいましたね」

佐々木「その意識は、撮影前や撮影中というより、公開を控えた今の方が強く感じることが多いですよね。というのも、現実社会で起きていることが、あまりに原作に近しいことが多いから。もちろん撮影中もそれを感じずにはいられませんでしたし、現実かファンタジーか、という面では、非常にきわどい作品だと確信しました。完成した作品を拝見したら、どこにも戦争をすすんでしたいと思っているキャラクターはいないですしね。平和のための映画というテーマは貫かれているんですよ」

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――実際の護衛艦に乗ったり、防衛省の協力を受けてみていかがでした?

西島「実際の自衛官の皆さんにインタビューをさせていただきましたし、普段は見せていただけない護衛艦内部も隠さずに見せていただけて、ものすごく役に立ちましたね」

佐々木「僕が一番驚いたのは、護衛艦に乗っている自衛官の人の話ですね。どうやって不審な船などを見つけ、捕捉して、攻撃されたらどうするか、と、護衛艦で働く自衛官には任務の話しかないんですよ。たとえば、任務を終えて自宅に帰ることを“外出”と呼び、3カ月以上の長い時間を過ごす護衛艦の方がホームということとか。お話をうかがう前は、海軍カレーの話とか聞けるのかな、なんてことをチラッと考えていたんですが(笑)。当たり前のこととはいえ、任務のことだけを考えてらっしゃることは新鮮な驚きでした」

――正直言って、西島さんが演じた秋津のキャラクターには、中盤くらいまでモヤモヤしました。

西島「そうなんですね。脚本を読んだときにどう役作りをすればいいいのか戸惑いましたし、演じているときにもその戸惑いは消せませんでした。でも、監督からはそこを見事に見破られて、動揺しないで秋津の本心は隠し通して欲しいと。本心が見えないまま最後まで引っ張るように演出をつけていただきました」

――撮影で一番厳しかったのは?

本田「みなさん大変そうでしたよね。3月から4月くらいのまだ寒い時期だったので、終盤、艦の外で撮影したシーンは皆さん相当きつかったんじゃないですか?」

西島「あれはずぶ濡れっていう設定だったから、かなり寒かったんですよね(笑)」

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本田「ですよね。私は艦の部屋に軟禁されていて、たまに外に出るという役だったので、自衛官役の皆さんがどうされているか全く分からない状態だったんですよね」

西島「それこそ役と同じで、僕らが何をしているのか全く知らされていないってこと?」

本田「そうです、そうです(笑)。だから、完成した作品を見たときに、こんなことになっていたの!? と、役のまま驚きましたよ。本当にこういうシチュエーションにいるジャーナリストだったら、情報は遮断されて、通信手段も没収されちゃうんだろうな、とも思いました」

西島「それは本田さんが演じた本多……ってちょっとややこしいんですけど(笑)、彼女がとった行動のように、完全に情報をシャットアウトすることは今の世の中ではできないことだろうと思うんですよね。現実社会でも隠そうとすること自体無理だし、むしろ開示すべき情報は開示していく方向にあると願いたいです」

――この作品が観客に放つメッセージはたくさんありますね。

佐々木「新波と秋津の対立関係ひとつとっても、非常にリアルだと思いますしね。どんどんと戦況が悪くなるなか、どのような行動をとっていくのがベスト、ではなくベターなのか、という選択に迫られるところとか、あらゆる問題点を浮き彫りにしながら、ひとつだけにフォーカスしない作品にもなっているのは素晴らしいですね」

西島「ジャンルとしては起こりうる事象を描いた戦争映画に入ると思うんですが、戦争をしない日本で戦争映画を作るとリアリティはないですよね。でも、この作品は、今の日本にも起こりうることだし、見る人はリアルで気を抜けないと思います。だからこそ見終わったあと、外の平和な世の中を見て、改めてこういったことに目を向けて欲しいと思います。それが押しつけのテーマ性ではなく、見た人全てが自然とわき上がってくる気持ちをおさえられなくなる作品になったと思います。特に本田さんのあるシーンはすごいですよ。僕もあそこを見てグッときちゃって……」

本田「ホントですか! うれしいです。そのコメント、使わせていただいていいですか?(笑)」

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