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亡命した元シリア兵、高層ビル建設現場で働く祖国の労働者を映し「『メトロポリス』と重なった」

2019年3月26日 14:00

元シリア兵のジアード・クルスーム監督「セメントの記憶」

元シリア兵のジアード・クルスーム監督
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長い内戦を乗り越え、バブル経済真っただ中にあるレバノンの首都、ベイルートの超高層ビルの建設現場を捉えたドキュメンタリー「セメントの記憶」が公開された。ベイルートへ亡命した元シリア兵のジアード・クルスーム監督が、青く美しい地中海を眺望する高層ビルの地下に作られた劣悪な居住空間で寝泊りしながら働くシリア人移民・難民労働者たちの姿を、1日中響き渡る現場の音とともに映し出す。来日したクルスーム監督に話を聞いた。

--レバノンの建築現場で働くシリア難民の労働者という題材を選んだ理由を教えてください。

「軍隊から逃げ、亡命を決意し初めて訪れたベイルートの景色が非常に印象的でした。美しい街に近代的な高層ビルが次々と建てられ、そこにシリアの未来を見たような気がしたのです。今のシリアは内戦で完全に破壊され尽くしていますから。そしてもうひとつは音です。ベイルートは建設ラッシュで、朝の7時から夜の7時までノンストップで工事音が響いているんです。そこで、自分がシリアに兵士としていたときに戦争の音に囲まれていたことを思い出し、シリアの戦争の音とベイルートの建築の音から構想が浮かび、その後シリア人の労働者コミュニティを知りました。人権も社会保障もなく働く彼らを撮ろうと思ったのです」

--建設中の高層ビル内部での撮影はどのように行ったのですか? ゲリラ的には行えないと思いますが。

「全て許可を取ってビル内に入りました。交渉は難しく、約1年掛かりました。オーナーにはシリアの労働者を撮りたいなどとは言わずに、新しく建てられる美しいビルを撮りたいと言ったのです。その時、条件として、被写体としてふさわしくないものがあるので地下には行かないようにと言われ、労働者たちの境遇を知ったのです。地下に作られた穴を初めて見て、これを映画にしたいと確信しました。毎日穴を拠点に労働者が上って行って、そして帰っていく映像を撮ろうと。労働し、地下で寝食し、そこで祖国が破壊されている模様をテレビで見る。そんな虚無がフリッツ・ラングの『メトロポリス(1926)』とも重なりました。彼らがあんなに劣悪な環境で生きているとは思わなかったのです。11日間でビルのきれいな部分の映像を撮り、そこからこっそり地下に潜って5日間で労働者の生活を撮ったのです。最終的にオーナーにばれて、追い出されましたが」


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(C)2017 Bidayyat for Audiovisual Arts, BASIS BERLIN Filmproduktion
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--ご自身が軍隊から逃れて亡命すること自体、簡単なことではなかったのでは?

「大変な困難を極めました。もちろん重罪になります。私は最前線に行って武器を持って派兵されるところで、人を殺すことに関わりたくない、それもシリア人同士の殺し合いに関わりたくないと逃れたのです。軍を抜け、最初の8カ月間はダマスカスの自宅から出ずに囚人のような生活をしていました。秘密警察がいる中での生活は非常につらいものですし、軍から抜けたことが知られているので、シリアにいても生活は困難でした。(密入航させる)スマグラーを3000ドルで雇い、フェイクIDを作ってベイルートに入国しました。50パーセントの確率でつかまりますが、私は人生をそのリスクにかけたのです。最後の検問所で咎められましたが、私の宗教が政権側のアラウィ派でそのアクセントを話せたので、通過できたのです」

--シリアの家族とはどのように連絡を取っているのですか?

「電話やスカイプで連絡は取れますが、家族とは7年会っていません。ヨーロッパに呼び寄せることも簡単ではありません。帰れるのであれば帰りたいですが、今の政権のままでは無理です。帰れたとしても、自分の生まれ育った街は破壊され、帰っても何を見たら良いのかわからず、想像ができません。祖国に帰っても祖国がないというつらい状況になると思います」

--今はドイツでシリアに関する作品を作ることが使命だと感じていらっしゃるのですね。

「それは間違いありません。現在、新作に着手しています。次はフィクションで、シリア人男性の難民とドイツ人女性のラブストーリーです。ドイツに住めなくなった若いふたりがポーランドに行き、彼らはそこで出会った人々から大戦時のポーランドについて知り、国境と世代を超えた戦争の連鎖の物語を描く予定です」

セメントの記憶」は、ユーロスペースほかで公開中。

(映画.com速報)

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