“NEXTカメ止め!”となるか? ロングラン上映中の短編映画「カランコエの花」

2018年10月13日 12:00

メガホンをとったのは新鋭・中川駿監督
メガホンをとったのは新鋭・中川駿監督

[映画.com ニュース] 上映館数わずか2館からスタートした「カメラを止めるな!」が、映画祭での評判やSNSでの口コミの“パワー”によって、異例のヒットを記録している。東京・新宿K's cinema、池袋シネマ・ロサにしっかりと根づき、その後“感染拡大”と転じた同作だが、“NEXTカメ止め!”とも呼べる作品は、今後現れるのだろうか。その可能性を秘めた意欲作が、現在渋谷アップリンクでロングラン上映されている――それは新鋭・中川駿監督がメガホンをとった短編「カランコエの花」だ。

深川栄洋監督、森義隆監督、今泉力哉監督を輩出した映画学校「ニューシネマワークショップ(NCW)」が配給を務める本作は、社会的議論を巻き起こしているLGBTという題材を、その当事者ではなく“周囲の目線”で繊細に切りとってみせている。第26回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)のコンペティションで最高賞を獲得するなど、グランプリ6冠を含む計13冠に輝くという高評価を得てきた。

7月14日に新宿K's cinemaで「1週間限定」公開されると、期間中は連日満席を記録。その反響を受けて、8月18日から渋谷アップリンクでの公開が決定すると、短編作品ながらも再延長を重ね、現在まで上映が継続している。封切り当時の「カメラを止めるな!」と同じく、局地集中型の上映ながらも、作品が灯した火種は未だに消えそうになく、リピーターや新たな観客を呼び込み続けている。

自身の体験に基づいて手がけた「尊く厳かな死」では、ある家族が「母親の尊厳死を受け入れるか否か」という問題に直面し葛藤するさまを描き出した中川監督。登場人物たちの感情を丁寧に積み重ね、全編を通じて「尊厳死」という軸から外れることなく展開していく物語は、まるで観客にまで決断を迫るような熱量を帯びていた。そして、新作「カランコエの花」では「身近にLGBTの人がいるとしたら?」というシンプルな問いかけで見る者の心を激しく揺さぶってみせる。

描かれるのは、ある高校の2年生のクラスで「LGBTについて」の授業が行われたことをきっかけに、クラス内にLGBT当事者がいるのではないかという噂が広まっていく様子だ。心ない“犯人探し”はもとより、当事者を緩やかに締め付けていくのは、いくつもの過剰な配慮。無意識に自衛してしまう者、当事者から目を背けさせようとする者、抱えきれない苦しみのあまり真実を共有してしまう者、そして気づかぬふりをしてしまう者――いくつもの“対話”の機会が奪われていく。短編だからこそのストレートなストーリーテリング、「デメキン」「花のち晴れ 花男 Next Season」で注目を集めた主演・今田美桜ら若手キャストの豊かな表現力、悲痛さを増すエンドロールの仕掛けが、39分間の世界を描出するピースとして隙間なく機能している。

ネタバレ厳禁の「カメラを止めるな!」は、鑑賞した者同士でしか共有してはならない内容の“秘匿性”の高さが、未見のファンを呼び込むために功を奏した。一方、本作の終映後にスクリーンから投げかけられるのは、劇中の人物たちが避けてしまう“対話”への誘(いざな)いだ。LGBTについて知る、話す、そして他者の意見に耳を傾ける――鑑賞者同士を結び付け、それらのアクションへと転じさせる力を内包しているのだ。「カランコエの花」を劇場へ見に行く行為を“水をやりに行く”という。大勢の映画ファンによって継続的に水が与えられ続ければ、全国各地の劇場へと“開花”が拡大していくはずだ。

(映画.com速報)

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