【映画メシ!沖縄番外編】写真家・武安弘毅が心酔する、入魂のナポリピッツァ
2018年4月20日 10:52
[映画.com ニュース] 素敵な映画には、素敵なカロリーを――映画.comが美味しい食べ物を求めてさすらう「映画メシ!」沖縄番外編をお届けします!いつもと趣きを変え、ナビゲーターとしておすすめのお店を紹介してくれたのは、写真家の武安弘毅さん。沖縄を拠点に世界中を駆け巡る武安さんが、オフィシャルカメラマンを務める「島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭」で映画を鑑賞後、ぜひ訪れてほしいと願うお店が那覇・県庁前にありました。
武安さんは1980年、北海道・札幌生まれだが、沖縄で暮らし始めてもうすぐ20年になる。パンクロックバンド「Hi-STANDARD」のボーカル・難波章浩が主宰した「ULTRA BRAiN」にフォトグラファーとして所属し、世界の音楽誌で活躍。現在は、ロックバンド「MONGOL800」のオフィシャルカメラマンも務めている。
自宅の庭に大型のバーベキューコンロを所有する武安さんは、ゲストをもてなす際には嬉々とした表情で漬け込んだ肉を豪快に焼き上げるグルマンだ。そんな武安さんが紹介するのが、県庁前にたたずむピッツェリア「BACAR」。爽やかな笑顔の店主・仲村大輔さんに出迎えられ、食前酒としてすすめられたバカール風カンパリレモン(カンパリソーダ+自家製レモンのグラニータ)を飲み干すと一気に食欲が沸いてくる。
午後6時の開店と同時に客席は綺麗に埋まり、ひっきりなしにオーダーが飛び交う。薪窯焼きのナポリピッツァは、マルゲリータとマリナーラ(ともに1620円)の2種類のみ。シンプルなメニューだからこそ、ごまかしがきかない。武安さんはマリナーラの大ファンで、「ニンニクをがしがし削ってくれて、もう間違いのない逸品」と笑顔を引っ込め、焼きたてのピッツァと真剣勝負。まさに“瞬殺”と言えるほどのスピードで平らげてみせた。
ピッツァを口いっぱいに頬張る武安さんと筆者を目を細めながら見つめる仲村さんは、東京・中目黒の名店「SAVOY(現・聖林館)」で研鑽を積んだ。約5年間ほど働いていたそうで、「味に感動したんです。手紙を送ったり、直談判みたいなものですね」と振り返る。今年11月で開業10周年を迎えるが、真摯な面持ちで生地にトマトを塗り込む仲村さんの姿は、どこまでも美しい。こちらの視線に気づいたのか、「トマトはこしているだけなんですよ。ただ、トマトは選んでいます。派手さはないけれど、素材の味がダイレクトに伝わりますから」と照れ笑いを浮かべる。
さらにBACARの醍醐味は、ピッツァだけにあらず。「揚げ芋とコロンナータ産ラルド」(600円)は、塩漬けした豚のラード(イタリア語ではラルド)を薄く切り、蒸した後にちぎって揚げた芋にかけた料理。芋の甘さとラードの塩気が渾然一体となり、絶妙な味わいを提供してくれる。また、「魚介のサラミ仕立て三種盛り合わせ」(1680円)も見過ごすことができない。沖縄県産の島ダコ、マグロ、メカジキの燻製は断面が印象的で、一度食べたら病みつきになる。
食いしん坊の武安さんは、沖縄の食文化を牽引し続けている仲村さんに対し、「味だけじゃない、スタイリッシュでもある。文化としてひとつひとつ、こだわって作っている姿が格好いい」と最敬礼。さらに、「大事なゲストが来たとき、自分たちが誇れるものを食べてもらいたいじゃないですか。『沖縄なのに、なんでピッツァ?』って顔をした人、いっぱいいたけど、ここで食事をすればみんなが喜んでくれる。それが誇らしいですよね」と胸を張る。自身については、「沖縄暮らしも来年で20年。素敵な出会いがいっぱいあって、沖縄じゃなかったら出来なかった事も多いと思う。写真も、一生懸命やってきて良かった。個人の活動や活躍に地域や場所は関係ないと思って頑張ってきた。これからも帰って来る場所は沖縄だから、どんどんトライしていきたいですね」と思いを明かした。
ダニー・ボイル監督や英クリエイティブユニット「TOMATO」などから高い評価を得る、ライフワークの夜景写真「真夜中写真部」はインドネシアでの写真展が決まるなど、じわじわと広がりを見せている。「故郷の北海道でもやりたいのでは?」と水を向けると、「撮るものにはこだわるけど、写真展をする場所にはそんなにこだわっていないんだよね」と心憎い言葉が返ってきた。