黒田昌郎監督、劇場版「フランダースの犬」に込めたヒロインへの思いを吐露
2017年10月15日 20:30

[映画.com ニュース]1975年にフジテレビ「世界名作劇場」で放送された作品を劇場版としてリメイクした長編アニメーション「フランダースの犬(1997)」が10月15日、京都国際映画祭2017で上映され、メガホンをとった黒田昌郎監督、アニメーション演出家の奥田誠治氏が、よしもと祇園花月で行われた舞台挨拶に出席した。
本作はイギリス人作家ウィーダの同名小説を基に、少年ネロと愛犬パトラッシュの友情を描いた物語。音楽・映像もテレビアニメ版から刷新され、情景は当時のフランダース地方のものに近づけて描かれており、一部にCGも使用されている。また、ネロとパトラッシュの死の場面もテレビ版とは異なり、各エピソードも劇場版独自の翻案・演出が加えられて進行していく。
MCを務めたアニメーション評論家・藤津亮太氏からテレビ版製作当時の心境を問われた黒田監督は「ウィーダの原作は文庫本で72ページ。(テレビ版は)これを1年間、週に1本放送しなくてはいけない。ほとんどの内容はオリジナルになると感じた」と述懐。一方、放送された52エピソードの内、39本分の絵コンテを担当していた奥田氏は、同作が話題を呼んだ理由として「黒田さんが暗い話にしなかったから」と分析した。「私は悲劇を売り物にして始まる物語が苦手なんですが、『フランダースの犬』は日常をきちんと描き、それが積もり積もって、最後に泣ける。結果として泣けるというのは、作品として正しい。気持ちよく仕事ができた」と振り返っていた。
奥田氏の意見に同調した黒田監督は「僕にとっては、ネロは苦しくもなく、辛くもなかった。ジェハン爺さんやヒロインのアロア、パトラッシュと一緒にいれるだけで幸せだったんだと思う。つまり貧しい現状に不満は持っていなかった。悲しくするのをやめて、明るさを徹底的に出したかった」と告白。「なにもなくても、これだけあれば幸せという心を持っている少年を通じて、現実の世界で満ちあふれている子どもたちにメッセージを送りたかったんです」と思いの丈を述べていた。
劇場版の製作は、京都国際映画祭総合プロデューサーを務める奥山和由氏の鶴の一声でスタート。黒田監督は、アロアの回想形式という手法をとったのは「(テレビ版の)ラストシーンで、アロアを置いてけぼりにしてしまった。彼女をひとり残していってしまったことが、申し訳なかったんです。詫びを入れなくてはいけなかった」と説明。そして劇場版のラストシーンについて「ネロとパトラッシュがちらっと出てきて『いつも一緒だよ』と。この言葉を言わしたかった。アロアに『いつも一緒なんだよ』と伝えたかったんです」と意図を明かしていた。
京都国際映画祭2017は、10月15日に閉幕。
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