佐藤健×綾野剛×本広克行監督、一流のストイックが創出した“前人未到のアクション映画”
2017年10月1日 15:00

[映画.com ニュース] どの分野でも、一流の人間に共通することは“ストイックであること”だろう。思考の深度、ビジョンの創造性、実行においての完成度の追求。佐藤健と綾野剛が映画「亜人」(9月30日公開)の撮影で見せたそれは、「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」で実写邦画興行収入歴代1位を打ち立てた本広克行監督であっても、「ここまでやるか」と舌を巻かざるを得ない境地だった。(取材・文/編集部、写真・江藤海彦)
桜井画門氏による人気漫画が原作。死ぬことのない新人類“亜人”だと発覚した研修医・永井圭(佐藤)が、テロリストとして大量虐殺を企てる亜人・佐藤(綾野)と対立し、壮絶な戦いを繰り広げる。
不死身が登場する作品は数あれど、今作ほど、2人の不死身が驚異的なスピードでエンドレスにぶつかり合う映画は希だ。主演・佐藤は、オファー当時から「見たことのないアクションを作れる」と確信に近い直感を抱いた。「るろうに剣心」シリーズでもタッグを組んだアクションチームと話し合いを重ね、「ただ“すごいこと”をすればいいのではない」と決意を固めた。キーワードは「『亜人』だからできるアクション」だった。
対する綾野は、当初はオファーに困惑していたそうだ。演じる佐藤という男が、あまりにも圧倒的な悪だからだ。「誰が佐藤役をやるのかは、主演にとってとても大事なこと。健に連絡すると『一緒にできたら嬉しい』と言葉をもらったので、決断しました」と振り返る。「僕は原作キャラに似せることが大前提。ですから、佐藤役は表層的にも、内面的にも圧倒的に見えないといけない。監督と話し、準備期間がしっかりあると確証を持てたことが大きかった」。
圭は不死身であること以上に、人間としても多面性があるキャラだが、佐藤は「漫画を読んだときから永井圭には共感していた」という。「自分と近い人間だと思うんです。パーソナリティをすんなり理解でき、気持ちもわかる」と、役づくりに迷いはなかった。
また佐藤は自ら圭のセリフを提案していたそうで、本広監督はそのクオリティの高さに目を見張り、感激を覚えながら物語に盛り込んでいったという。「おばあちゃん(吉行和子)の家での撮影時、健くんは別にある大事なシーンのセリフをブラッシュアップしてくれていた。読んだら短くなっているし、わかりやすいし、ギャグもあるし完璧。そこまで集中し、磨いてくれるのは初めてだった」(本広監督)。
佐藤のそうした行動は、前述の「圭への共感」に起因する。「どの局面でも『圭だったらこうする』と、何となくわかるんです。それに伴った行動をとりたかった。圭はクレバーかつ合理的で、状況を客観的に見て、何が最善かを判断できる人間。だから僕も、最善策を常にとらないといけない。僕のなかで、あるシーンは最善策ではないと思っていたので、セリフを提案させていただいたんです」。
一方で綾野は、バトルシーンについてこう語る。「僕のなかで、佐藤がSAT(特殊急襲部隊)と対峙する場面と、圭とのラストバトルが主軸でした。ラストに関して明確に見えていたのは、圭の計画の中で、僕がどれほど追い詰められるかの重要性です。ギリギリの拮抗をしつつも時には僕が凌駕する、どんでん返しが連続する頭脳戦を作りこんでいく作業でした。だからこそ(中盤の)SAT戦は“戦争”。脳で考えず、手数を倍に増やしてもらい、何をやっているかわからないスピードでひたすら致命傷を与えていきました。『これから、この佐藤と戦うのか』という圧迫感を観客に与えておきたかったからです」。
さらに本広監督は「2人とも芝居オタク。本当に体もよく動くし、役も徹底的に考える」と感心しきりで、「撮影中、ある程度、俳優さんって諦めてくれるものなんです。でもね、この人たちは絶対に諦めない。粘る、粘る。面白いから付き合いますし、それが映像の成果に出ている」と言葉を継ぐ。佐藤は「最後までどうまとめるか悩んだのは、亜人同士のバトルがいかに終わるか。結果、最高の形が見つけられたと思います。どうしてもセリフを足したくなりがちですが、最終的にセリフを排除し、表情でいきました」と自信をのぞかせた。
佐藤「世の中に、新しい映画のスタイルを提案できるとワクワクしています。多面的なきらめきがある原作から、あえて要素を抽出し、特化して作った潔さ。そして、ここまでのスピード感で展開されるジェットコースター的な完成度。潔い勇気を持って作っている点が、漫画原作実写化の例としても提案できる」
(C)2017映画「亜人」製作委員会 (C)桜井画門/講談社
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