J・ジャームッシュ製作の恋愛映画「ポルト」監督、A・イェルチンとの思い出語る
2017年9月29日 14:00

[映画.com ニュース] ジム・ジャームッシュが製作総指揮を務め、ポルトガル第2の都市ポルトを舞台に、異国の地で再会した孤独な男女を描いた映画「ポルト」が、9月30日から公開される。2016年に自動車事故で死去したアントン・イェルチンさんが主演し、古い港町を舞台に美しい映像でつむがれる、刹那的なラブストーリーだ。第70回ベネチア国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞し、本作で長編劇映画デビューを果たしたゲイブ・クリンガー監督に話を聞いた。
ポルトガル北部に位置する港湾都市ポルト。26歳のジェイクは家族に勘当されたアメリカ人。32歳のマティは恋人ともにこの地へやってきたフランス人留学生。それぞれの事情でこの街にやってきた2人には、かつて束の間の肉体関係を結んだ過去があった。ある日、考古学調査の現場で互いの存在に気づいた2人はカフェで再会し、軽い気持ちで一夜の関係を結ぶ。その一夜が2人の人生を大きく変えていく。マティ役に本作が初主演作となるルシー・ルーカス。
35ミリ、16ミリ、スーパー8と様々なフォーマットで、一目で惹かれあった男女の内面と未来を交差させて描き出している。「私は、物語を語る前に、今回は、いろんなカメラや許される限りいろんな道具を使って、さまざまな実験をしてみたいと思ったのです。初の長編作品ということで、キャラクターやロケが大規模ですと大変なので、ふたりの男女が部屋に閉じこもるような小ぶりな映画を目指しました。でも、それは間違いで、簡単だろうと思って始めたら、実はとても複雑なことになってしまった(笑)」と振り返る。
ワンシーンごとに美しい画は「ポルトという街の持つ魅力だ」という。「私たちももちろん努力したけど、街自体が協力者になっていろんなことを伝えてくれた。実は、ふたりが語り合うカフェの外観は映画の中のようにとても美しいけれど、店内はよくある蛍光灯のライティングだったのです。ですから、撮影時にクラシックでソフトな明かりに変えました」

製作総指揮を務めたジム・ジャームッシュとはどのような関係を築いたのだろうか。「今回のジムの仕事は、監督である私の自由を守ることだと言っていました。なので、私がこの物語を語るうえで必要だと思うことができるよう、他の人が邪魔をしないように守ってくれ、彼自身も私に何か具体的なアドバイスをすることはなかった。私を信じてくれたのです」
イェルチンさんの27歳という早すぎる死の直前に撮られた本作。古くからの友人でもあったという、イェルチンさんとはどのような部分で共鳴しあったのだろうか。「まずは映画への愛。あと、彼の演技に対する芸術性に深い尊敬を抱いていました。自分の演技についてとてもシリアスにとらえていました。批判するわけではありませんが、今はハリウッドにいる若い役者は、単にきれいに映りたいという人が多いと思うのですが、彼は自分自身がアーティストだと意識していたところに尊敬を感じます。私は、人生において、学べる人を自分の近くに置いているのですが、アントンも私にいろんなものを教えてくれました。この作品を作ったことで、アントンと一緒に映画を作ったというタイムカプセルの意味合いになったと思います」
繊細な心理描写と鑑賞後に得も言われぬ余韻を残す物語展開は、良質なヨーロッパ映画そのものだが、監督自身はブラジル生まれのアメリカ育ち。生まれ故郷のブラジルで撮る構想もあるという。「ブラジルの中の日本人コミュニティが住むエリアで撮りたい構想があります。ブラジルに住んでいる日本人家族で、小津安二郎の映画のような現代劇をとってみたい。大きな日系人コミュニティがありますが、世代によってアイデンティティが変わってきていて、そういう部分を描きたいと思っています。プロデューサーを見つけて日本で撮ってもよいかもしれませんね」
「ポルト」は、9月30日から東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。
(C)2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants
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