「SING シング」監督が明かす“実写からアニメで成功するまでの道のり”
2017年3月24日 21:30
[映画.com ニュース] 「ミニオンズ」のユニバーサル・スタジオとイルミネーション・エンタテインメントが組んだ長編アニメ「SING シング」(公開中)のガース・ジェニングス監督が、映画.comのインタビューに応じた。
動物たちが人間のように暮らす世界。経営難で閉鎖寸前の劇場支配人バスター(マシュー・マコノヒー)は、大規模な歌のオーディションを開催して歌自慢によるコンサートを開き、劇場に活気を取り戻そうとする。ザ・ビートルズ、フランク・シナトラ、テイラー・スウィフト、レディー・ガガ、スティービー・ワンダーからきゃりーぱみゅぱみゅまで、古今東西のヒットナンバーが65曲以上も使用され、作品に彩りをもたらしている。ジェニングス監督は、バスターの秘書ミス・クローリーの声も担当している。
映画ファンには、エバーグリーンな青春劇「リトル・ランボーズ」の監督・脚本を手がけた人物といえばピンとくるのではないだろうか。同作をいたく気に入ったイルミネーション・エンタテインメントのCEO、クリス・メレダンドリが直々にラブコールを送り、初めて実写映画の監督と組んだというから、ほれ込み具合がうかがい知れる。メレダンドリからオファーを受けたジェニングス監督もすぐさま企画に魅了され、ミーティングの直後に脚本執筆に取りかかった。「滅茶苦茶ワクワクしたよ。とにかくいろんなポテンシャルが見えてくるアイデアだった。これだけのキャラクターがそれぞれの道のりがあって、あれだけたくさんの音楽を使っていけるということに、とても興奮したんだ」。
とはいえ、初のアニメ作品への挑戦は決して楽なものではなかった。ジェニングス監督は「最初はとにかくワクワクしていたからプレッシャーは感じなかったが、パリに拠点を移して作業を始めたら、ある日突然『俺、何もわかっていないかも、アニメ作りについて』って思ってしまった。実写とアニメだとプロセスがまったく違うから、20年来ずっと同じチームと一緒に実写(作品)を作ってきたのに、(本作では)知らない方(スタッフ)と映画作りをすることも含めて、圧倒されてしまった」と苦労を明かす。だが、徐々に順応し「6カ月過ぎるころには、本当にアニメの製作というのに無茶苦茶ハマっていたし、作業が終わるころには、ミュージックビデオを含めた20年間の映像作りの経験には価値があった、意味があった、って思うほどスキルを応用することができていたんだ」と語るほど今回の経験が大きな財産となったようだ。
本作は世界興行収入5億9000万ドル(3月24日現在)を突破し、続編製作も決定している。ジェニングス監督にとって、初のアニメ作品は大成功を収めたといえるだろう。状況を俯瞰(ふかん)して「何よりもまずキャラクターに感情移入できたということなのかな、と思う。映画が終わるころには、“どのキャラクターも成功してほしい”と皆すごく応援してくれていたよ」と考察した。ジェニングス監督の言葉が示すとおり、バスターを筆頭に、生活に追われる主婦や歌手を夢見るギャングの息子、引っ込み思案の少女といったキャラクターたちが、逆境を乗り越えて輝きを放ち始めるのが本作の大きな魅力。ポジティブ思考が売りのバスターに命を吹き込んだマコノヒーにおいては、脚本段階からジェニングス監督の頭にあったという。「マシューは、歌うようなという意味ではなく、非常に音楽的な声だと思う。彼の声には、何かリリカルな資質を感じるんだ。素晴らしいエネルギーとパーソナリティ、華麗さを声にも出してくれて、なんと言ってもアニメの場合、体が使えないから声で全部表現してもらわなければいけないだけに、彼のような特別な声が必要になってくるのさ」と魅力を語った。
バスターのキャラクターに象徴されるように、本作にはあふれんばかりの音楽愛が詰め込まれている。対して、前監督作「リトル・ランボーズ」は、少年たちの自主映画製作の道のりを温かなまなざしで描いていた。ジェニングス監督は、何かに熱中する人々にひかれるのではないか? そんな質問を最後にぶつけると「うわっ、そんなの聞かれたことないな! 確かにそういった部分は共通しているところでもあるし、僕とも共通しているかもしれないね。なんだかカウンセラーと話しているみたいで面白いよ」と興味津々。「次の作品では、自分が今までやったことを繰り返さないように気をつけなきゃね」とほほ笑んだ。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。