イタリアの現状を見事に反映した「7分間」に出演した2人の女優が語る
2016年10月30日 22:00
[映画.com ニュース] イタリアのとある繊維会社の事業の大半が売却され、工場の従業員組合は休憩時間の7分間短縮に同意するよう求められた。組合の11人の女性たちはその是非について議論する。世代、肌の色、国籍も異なる女性たちの議論はヨーロッパの現在を浮き彫りにする。監督のミケーレ・プラチドは「シチリア!シチリア!」などで俳優としても知られ、本作が監督12本目。主演のオッタビア・ピッコロ、アンブラ・アンジョリーニが来日した。
オッタビア・ピッコロ(以下、ピッコロ):この作品は、ステファノ・マッシーニが書いた戯曲の映画化です。プラチド監督がマッシーニとともに脚本を書いています。私とキダル役の女優は舞台でも同じ役を演じ、映画に起用されました。監督は私とキダル以外の役は舞台とは別の女優を選びました。舞台とは別の個性を持った人間に演じさせたかったのだと思います。ここにいるアンブラや歌手のフィオレッラ・マンノイアなどが選ばれました。
アンブラ・アンジョリーニ(以下、アンジョリーニ):原作となった舞台の初回を見に行って、自分がやりたかったと、心の底から思いました。その後にプラチド監督から依頼され、少しだけ運命を信じるようになりました。
ピッコロ:撮影は常に3台のカメラで行われました。映画の撮影という感じではなく、本当のミーティングを撮っているように一部始終を撮影していました。だからみんな気を抜くことができませんでした。この手法によって、緊張感が画面に生まれ、女優たちの魂を映し出すことができたと思います。
ピッコロ:私はずっと昔から舞台に立っているので、驚きはしませんでした。
アンジョリーニ:舞台を始めたのは最近ですが、確かに本作の撮影は、舞台に近い感じでした。全てがあらゆる局面で正しく進行しなければならない、という感じです。交わされる会話だけではなく、適切な動作を瞬時に選ばなければいけません。最初から演じるキャラクターに完璧になりきっていなければならないのです。
ピッコロ:本作の特筆すべき点は、話を聞く大切さを描いていることです。何か問題が起きた時には相手の言っていることに、まず耳を傾ける。すぐに答えを出すのではなく、お互いの話を聞き合うこと。そういう時間を持つことは、今は贅沢になってしまいましたが、そのことについての映画でもあると思います。
ピッコロ:実際、映画は戯曲と同じものを描いていると思います。ドラマとしてのダイナミズム、メッセージも、映画のなかに盛り込まれています。労働問題、移民問題、イタリア人と外国人との対立、さらには世代間の問題など、今のイタリアが抱えている状況を反映しています。これだけイタリアの現実を描いた作品は例がありません。社会のさまざまな側面を浮き彫りにしながら、決断することの不安というものも描き出しています。ただ、プラチド監督はこの戯曲の演出を舞台で手掛けていないので、アプローチが違っていて、私は新鮮に感じました。
ピッコロ:監督は、私が舞台でやっていたビアンカ像を気に入ってくれていました。ただ、舞台の演じ方から、少し取り除く作業が必要でした。舞台の方が動作などでどうしても大げさになる部分があるので、監督から「いや、やりすぎだ。そこまでやる必要はない」と言われたこともありました。
ピッコロ:情熱をもって仕事をする人です。気持ちが入ったときは、魂を込めてのめり込み、すっかり中に入ってしまうタイプですね。
アンジョリーニ:監督は演じるにあたって、私にスキンヘッドにするように言いました。幸いなことに監督とは別の舞台をやることになっていたので、ドレッドヘアにすることで許してもらいました。気まぐれだし、独善的な部分を持っていますが、ハートで仕事をするタイプだと思います。ルールなどは無視して、ひたすら熱い演出で迫ってきます。いい経験をしました。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。