向井理、堤幸彦監督作「神の舌を持つ男」で“産みの苦しみ”を痛感
2016年9月13日 08:00
[映画.com ニュース] 向井理主演、堤幸彦監督作の映画「RANMARU 神の舌を持つ男」(中略タイトル)の撮影現場が、このほど静岡県内で報道陣に公開。向井をはじめ共演の木村文乃、佐藤二朗、堤監督が取材に応じた。
堤監督が構想に20年を費やしたコミカルミステリードラマ「神の舌を持つ男」を映画化。舐めたものの成分を分析できる主人公・朝永蘭丸(向井)、ハイテンション女・甕棺墓光(木村)、ツッコミ鋭い常識人・宮沢寛治(佐藤)という腐れ縁のポンコツ3人衆が、人里離れた山奥にある鬼灯村を訪れ、「子殺しの温泉」にまつわる謎と事件に挑む。
この日の撮影は、村に暮らす男が陥没した穴から死体となって見つかったため、蘭丸一行、木村多江演じる医師・武田竜胆(通称りん先生)、村の老婆、警察ら関係者が現場に殺到するシーン。老婆は「鬼子の呪いじゃ」とわめきたて、蘭丸たちが否応なく怪事件に巻き込まれていく場面だ。今作のために敷いたアスファルトの道路の側で、コミカルな掛け合いが繰り広げられた。
堤組の現場は、リハーサル前に行われる“段取り”がユニークだ。該当シーンのキャスト・スタッフを集め、おおまかな流れや演技などを確認する工程だが、堤監督は台本片手に指示を飛ばす間、その場で思いついたギャグやアイデアを次々に盛り込んでいく。それにより現場は常に笑いが絶えず、カットが刻々と変容していくライブ感も興味深い。
例えば光が「鬼子の呪い?」と問うセリフは「お肉の呪い? 牛や豚が怒るみたいな?」、老婆たちの「りん先生に違いね。りんじゃ」とのつぶやきは「りんだ、リンダ、山本リンダ!」という絶叫に。台本の変更は珍しくないが、堤組は変更点の量とトリッキーさが普通ではなく、キャスト・スタッフには湯水のごとく湧き出る堤監督のアイデアを即座に咀嚼(そしゃく)し実行に移す、理解力とスピードが求められる。
段取りに関する質問をぶつけると、堤監督は「僕なりの『もっとくだらなくて面白い』というものを入れています。ほとんど話も発展しない、瞬間風速のようにそこだけで終わっていくんですけどね」とニヤリ。キャスト陣に対し「向井さんはふんどし姿で早朝の街を疾走したり、無茶ぶりにも楽しんで応えてくれる。作品が彼に愛されているのを感じています。以前、別作品でご一緒した木村文乃さんは、撮影の合間に『えぐい笑いがいける』と踏んでいて案の定ハマりました。佐藤さんは昔からの仲間ですし、ほかの2人が動的なぶん、鎮める役が必要。そのトライアングルは見事」と称賛し、「過去作では2人組のボケ・ツッコミを主にやっていましたが、3人組も表現の幅が広がって面白い」と手応えをにじませた。
即興的な手法で生まれる空気感が今作の血肉となるが、対応の苦労は並大抵ではない。向井は、「スケールアップしたわけのわからなさ。ドラマ以上に、監督からの要望を何も考えずにやっています」と振り返った。それでも向井は、「監督の“世界”が飛び抜けている。それをどれだけ置いてけぼりにしないで応えられるか」と真摯な姿勢を明かす。だが、「連ドラを超えるものを作らないといけないから、こんなことになっているのかな。僕も被害者のひとりです(笑)」と、改めて“産みの苦しみ”を痛感している様子だ。
さらに木村も、「スタッフさんも私たちも堤監督からの挑戦状をつきつけられて、皆それに応えています」と語り、「光のテンションをまた戻さなければいけなくて。ドラマから癒えた傷が、また抉られた気持ちです(笑)」と苦笑いを浮かべる。ともあれ、俳優として刺激的な現場であることは疑いようがない。言葉ではぼやきつつも、それぞれの瞳には意欲の炎が宿っており、キャスト陣は取材が終わるとカメラの前に躍り出ていった。
「RANMARU 神の舌を持つ男」(中略タイトル)は、6月中旬~7月末に撮影され、完成は10月末を予定。12月3日に全国で公開される。
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