シリアの人々が撮影した動画で惨状伝える映画「シリア・モナムール」監督に聞く
2016年6月17日 14:30
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[映画.com ニュース]シリア内戦初動時に、戦地の人々が携帯電話やハンディカメラなどで撮影し、YouTubeやSNSにアップロードされた生々しい映像を用いて製作されたドキュメンタリー「シリア・モナムール」が、6月18日から公開される。オサーマ・モハンメド監督が、自身の状況と作品について語った。
パリに亡命したモハンメド監督に、包囲攻撃を受ける街で暮らすクルド人女性のシマヴからメッセージが届き、2人の映画製作と愛を語る往復書簡が始まる。1001人のシリアの人々が捉えた映像で、シリア内戦の現実と戦争の恐怖を突きつけるとともに、絶望の中に普遍の愛を映しだす。
Youtubeにアップロードされた、トラックの荷台に積まれて死んでいる父親に抱きつき、空を見上げ体を震わせながら泣いている少年の映像を見たことが、本作製作のきっかけとなった。
「映画を作るために私はオンライン上にあるアノニマスな映像群に一つの強いイメージを構成することを考えました。闇に葬ろうとするシリアの記憶を命がけで記録し続けているこのアノニマスな映像作家たちは一体誰なのか? と。シマヴが私の前に登場したとき、そのアノニマスの一人がついに私の扉を叩いてくれたと思った。そして、彼女は私を祖国シリアへ再度導いてくれたのです。シマヴと出会い私は勇気付けられました。アノニマスなイメージを象徴する物は、知性と威厳のある女性だったのです。シマヴとは女性であり、真実のメタファーなのです。私はシマヴを追いかけるようになりました。そして、シマヴも私=映画を追いかけるようになりました」
亡命中のパリで、自国の人々が殺されていく悲劇をどうとらえたのだろうか。「悲劇はシリアの人々が民主化への希望と国に対する美意識を持ったときに起こりました。シリア人にとっての最大の悲劇は私たちの未来が破壊されたことでした。政権はこれまで長年に渡りシリアの人々が思い描いてきた理想的な未来絵図を誰にも知られぬよう静かに破壊してきました。そして、対外的にたった一つだけの国のイメージを作ろうとしたのです。しかし、2011年に私たちはシリアとは、『多様性・シリア国』であると気がついたのです。私たちの国は、人種や宗教や政治信条などが同時に平和的に共存し、正義と自由が根底にあると再認識したのです」
そして、映画作家としてシリアの現実を伝えることに責務を感じた。「遠く離れたパリに居ながらも、『多様性・シリア国』の一員であり続ける責務を全うしたかったのです。世界はシリアで起きていることを知るべきです。それは、シリアだけで起きている現実なんかではありません。全人類が共有しているたった一つの世界で起きている現実なのです。同じ_「時」を共有しながら、人々が平和に暮らせる国もあれば、人々が無残にも殺され国を追い出される現実も同時刻に発生しているのです。多くの同胞が殺されていく現実を、私は遠く離れた安全なパリで見ながら惨めにも空虚な時をさまよっていました。そして、自分自身をその空虚から救い出したかったと告白します」
2011年のカンヌで政権批判をするプレゼンテーションをしたことで政府から脅迫を受けた。家族にも危険が及び、家族親族のほとんどが海外に逃れた。「私は政権のブラックリストに乗ってしまい、危険なので絶対に戻ってくるなと言われました。政権は長年人々に殺害を予告し脅迫をすることで恐怖心を植え付けてきました。実際不当に逮捕されそのまま行方が分からなくなった者は数多くいるのです」
それでもいつの日か、シリアに戻る希望を持ち続けている。「シリアの地にいる自分を想像したいです。自分の中で未だ止まっている、ある『時』を解放したいです。そして、シリアでもう一度泣きたいです。シリアで、素晴らしいシリアの人々についての映画が作りたいです。母の墓参りがしたいです」
「シリア・モナムール」は6月18日から、シアター・イメージフォーラムほか全国劇場公開。
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