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中井貴一、熊本・菊池映画祭を堪能 行定勲監督も興奮の映画裏話を披露

2016年3月6日 15:00

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中井貴一と行定勲監督
中井貴一と行定勲監督

[映画.com ニュース] 熊本で行われている「菊池映画祭2016」2日目となる3月5日、映画祭の目玉「特集 中井貴一」が開催され、日本を代表する俳優・中井貴一主演の「その木戸を通って」「東京上空いらっしゃいませ」、そして中井の父・故佐田啓二さん主演の「この広い空のどこかに」の3本が上映された。

同映画祭ディレクターの行定勲監督は、約1年前から「菊池映画祭にゲストとして来てほしい」と中井にオファー。「僕にとって中井貴一さんは、ずっと映画を一緒に撮りたい人No.1の俳優です。映画をやりたいと思いながら先に『趣味の部屋』という舞台を一緒にやり、初演と再演、2度やっていますが、そのときに中井さんから“あの映画の現場はこうだった”とか“あの監督はこんな監督だ”とか、映画の裏話をいろいろと聞くわけです。それがものすごく面白くて。僕だけが聞くのはもったいない! ぜひ、菊池映画祭のゲストとしてそれを語ってほしいと思いました」と理由を明かした。

一方、中井は「行定さんの熊本愛、菊池映画祭のアピールがものすごくてですね」と、行定監督の“熱”について語る。オファーを快諾したのは、その熱はもちろん「菊池という町は──食べ物がうまい、温泉がいい、人がいい、空気がうまい、何てったって水がうまいんです! と熱く語られ、今日こうしてやって来ました(笑)。温泉、いいですね」と菊池の魅力を体感した様子だ。

行定監督が「中井さんの話は本当に面白い! 話し方がうまい!」と絶賛するように、どの回のトークショーも秘話だらけ。「その木戸を通って」は、亡き巨匠・市川崑監督が1993年に撮ったハイビジョンドラマだが、「実験的な映画」だと言う。

「市川監督から、この映画はどこにも公開しない、ギャラも安い、でも後世には役に立つ映画だ、だからやってくれないか? と言われて引き受けた作品です。市川監督と仕事をしてみて思うのは、彼が一番好きだったのは、演出ではなく編集。編集マンになりたかったと話していました。編集を見据えて演出するので、今のシーンの演技はとっても良かったけれど、4秒を2秒にしてくれと言われる(苦笑)。ものすごく緻密な演出でした」。

同作は、市川監督がハイビジョンを試したくて製作した意欲作。現在はCG処理や特殊メイクの技術が当たり前になっているが、当時はそうはいかない。「ハイビションだと細部までクリアに映ってしまう。美術セットの小さな釘1本も映ってしまうので各部のスタッフは大変でした。時代劇なので俳優はカツラをかぶるわけですが、特殊メイクはない時なので、顔のアップのシーンになるとカツラの網部分が目立ってしまうことがあって。アップを撮るたびに『網が見えている』と、何度も何度もテイクを重ねる。あまりのテイク数に『時代劇ですから、カツラですから、そりゃそうですよ!』って、監督にキレたことがあります(笑)」。

映画にまつわる裏話だけでない。ヘビースモーカーだった市川監督がタバコを選ぶ基準はパッケージの美しさであったこと、入れ歯を作るときに歯医者で歯並びがきれいになるよう歯の位置を指定したことなど、尊敬とユーモアとを織り交ぜながら話すエピソードの数々に、会場からは常に笑いが起きていた。

東京上空いらっしゃいませ」の回では、相米慎二監督がどれだけ周囲の人々に愛される素晴らしき“人たらし”であったかということ、佐田さん主演の「この広い空のどこかに」の回では、中井の名前は小津安二郎監督が命名したものであること、佐田さんと小津監督は仲がよかったがその間を取り持ったのが中井の母だったことなどが明かされた。

「菊池映画祭2016」は3月6日まで開催。6日の会場は菊池市文化会館。

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