小劇場界の異端児・劇団鹿殺しが15周年のバックステージもので熱く人生を応援!
2015年12月26日 21:30

[映画.com ニュース] 劇団鹿殺しを初めて認識したのは10年近く前のこと。クイーンのフレディ・マーキュリーをコピーしたり、オリジナル曲を使った寸劇の路上パフォーマンスをあちこちでゲリラ的に行い、「鹿ハウス」という郊外の一軒家で共同生活を送りながら芝居づくりをしている、まさに青春まっただ中の劇団をテレビの深夜番組で特集していたのだ。その直後、某演劇雑誌の忘年会でパフォーマンスを披露した彼らに直接会って惹かれ、公演を見て衝撃を受けた。なんたるエネルギー! ロックでカオスで泥臭いのにカッコよく、見る者をブンブン揺さぶるそのパワーときたら!
この劇団名からエグい世界を想像し、二の足を踏んでしまっている人もいるかもしれない。しかし! 劇団鹿殺しはけっしてキワモノでもゲテモノでもない。音楽があって濃厚な世界観にはどこか郷愁を誘う愛らしさがあり、必死で生きているみっともない人間を応援するようなやさしさのある、実に真っ当なエンタテインメント集団なのだ。その劇団が順調に成長を続け、15周年を迎えるというのだから感慨深いのである。
もともとは関西の大学で活動していた演劇サークルの先輩・後輩だった丸尾丸一郎(劇作家・俳優)と菜月チョビ(演出家・俳優)が、つかこうへいの芝居をやりたくて旗揚げしたのが15年前。劇団名はそのころからのものだ。その強烈なインパクトは「善し悪しですね」と菜月は笑う。

菜月「劇団名だけは知っているという人も非常に多いんです。別にバイオレンスをやりますよとか、そういうつもりで付けたわけではなかったんですけど、思った以上にコワがられた(笑)。これは村野四郎さんという詩人の『鹿』という詩から取ったものなんです。鹿が崖っぷちにいて、猟師に銃で狙われているのを知りながらも夕陽をじっと見ている姿を描いた作品で。自分たちとしては、『生と死』というのがテーマとして出てくるし、自分たちの崖っぷち感だったり、命懸けだっていうことを表したつもりでいたんですよね」
オリジナルの作品で勝負しようと決めた鹿殺しは、10年ほど前に上京。彼らがすごいのは、共同生活をしながらバイトをせず、最初から表現活動だけでちゃんと経済的にも自立できていたという点だ。
菜月「最初から『お芝居をしてお金をもらうのだ』という考えで、それがしたくて始めたんです。お芝居に関わることだけでお金を稼ごうってみんなで言い合って。それができるためだったら何でも努力をしよう、お金を払ってもらえるようなお芝居を作ろう、2年間はとにかく文句を言わないで集中してやろうって約束していました。共同生活で辛いことなんかはなくて、奇跡のようにうまくいっていたんですよ」
東京に来て10年。劇団鹿殺しが急成長を遂げた代表作といえば、2008年初演、10周年の再演でロングランを果たした「電車は血で走る」。故郷の関西、宝塚線沿線を舞台に、生と死が、喜劇と悲劇が、ノスタルジーとファンタジーが渾然一体となった、掛け値なしの感動作だった。
この作品でブレイクし、鹿殺しは菜月の海外留学、その期間の活動休止、歌手のCoccoの初舞台を始めとする外部とのコラボなど、さまざまな試行錯誤をしながら大成長。2015年にはマンガが原作の田口トモロヲ監督作『ピース オブ ケイク』で丸尾が劇中劇を担当。劇中に登場した劇団めばち娘としてリアルに公演を打つという面白いコラボでも好評を博した。

そして、いよいよ15周年。「キルミーアゲイン」でテーマとなるのは、芝居づくりとバックステージ。真っ正面からの自画像的作品で、「集大成」となる作品を目指している。
自分たちの姿をも反映したこの新作は、笑って泣けるという意味では「王道」だと口をそろえる。トランペットなどの管楽器で構成された楽隊やダンスが入る構成は、いわゆるミュージカル的なものとは違うが独特の楽しさがいっぱいだ。
菜月「鹿殺しって笑って泣けてというそういうイメージをもっている人もいると思うんです。でも、きれいな照明を浴びていい話をして、悲しい話があってみんな泣いてスカッとするという、そういう「笑って泣ける」とは違うんですよね。自分が客席で見たときのように、がーんと殴られたような感じになって、殴られて悔しいなと思ってほしい。目の前に夢の世界が広がるから見に来てというよりは、自分も何かしたくなる。悔しくなって『よしっ、身体を鍛えようかな』って思ったりだとか。見た人が自分の身体で何かしたい、何かできないだろうかって気持ちになるようなエンディングにしたいなっていつも思っています」
「キルミーアゲイン」は1月9~20日本多劇場。1月28~31日大阪ABCホールで上演される。
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