宝塚退団直後、ブロードウェイで武者修行をした柚希礼音が「超一流スターたちのやさしさに感激!」
2015年10月23日 04:00
[映画.com ニュース]宝塚歌劇団で絶大な人気を誇った元男役トップスターの柚希礼音が、宝塚退団後初めての舞台となるのが「プリンス・オブ・ブロードウェイ」(10月23日開幕)。数々の名作ミュージカルを生みだしてきたハロルド・プリンスが自らの人生をミュージカル・ショーに仕立てた本作で、ブロードウェイの現役トップスターたちとともに、唯一の日本人キャストとして歌い踊る。語学の習得や準備のために7月から単身ニューヨークへ乗り込み、稽古に励んでいた柚希に、ニューヨークでの独占取材を敢行した。
稽古場では通訳に頼ることなく共演者となごやかに談笑し、いざ稽古が始まると、柚希にしかできない圧倒的なパフォーマンスを堂々披露。しかししかし稽古が始まった当初は「あまりの衝撃に立ち往生して、押しつぶされそうになった」時期があったという。
「あまりにも共演者のみなさんがすごすぎて、最初の1、2週間は心が折れそうでした。私が宝塚にいたときは、稽古場で稽古を重ねていくうちにだんだん上達していくという感じだったんですね。でもこちらの方々は初日に譜面をもらって歌稽古を始めたときから、もうCDを聴いているみたいなレベル。完璧に歌いこなしているんですよ! それでガチガチになっていたとき、ボイストレーナーの先生に『トニー賞を獲ったような人たちの中で、自分は大丈夫かなとか心配してるんじゃない?』と言われたんです。図星でした(笑)。そのときその先生が『みんなだってレオンみたいに踊りたいって絶対思ってる。あなたにはあなたにしかできない何かがきっとあるよ』と言ってくださって。そこからちょっと、前向きにがんばろうと思えるようになりました」
そんな柚希にとって大きな助けになったのが、世界の頂点に立つ超一流スターたちのやさしさだった。
「本当に、出演者1人1人がものすごく親切にしてくれたんです。つねに誰かが『レオン、大丈夫?』って気遣ってくれて。もし私たち日本人の中に1人だけ外国の方がいたら、自分ならここまでやさしくしてあげられたかな? と思うくらい。ブロードウェイの第一線ってどうなんだろうって想像したときは、もっとピリピリとした厳しい雰囲気かと思ってたんですけど、本当に第一線の方々こそお互いをリスペクトし合って、どんどん高め合っていくんですね」
2幕の「ブロードウェイ・ベイビー」の場面では、トニー・ヤズベックに何度もリフトされるデュエットダンスが見もの。いままで男役として相手役をリフトする立場だった柚希としては、リフトされる気分は?
「もうすっごく申し訳なくて。でも、自分が宝塚でリフトしていたとき、どうせするなら『ほんとすみません~』って乗られるより、上げたときにパーッと華やかに、気持ちよさそうに決めてくれた方がやりがいがあったなと思って、思い切ってやらせてもらっています。トニーさんはすごいしカッコいいんですけど、自分だったらあそこの表情はこうするなとか、ついつい男役目線で見てしまう(笑)」
「プロデューサーズ」の演出・振付家スーザン・ストローマンらと場面を作り上げていく経験は、「宝塚時代とは何もかもが違う」新鮮な驚きをもたらすものだったという。
「ストローマンさんは演出もされているので、お芝居を含んだ場面作りをされる方。完璧に踊りこなすところまで作ってから私たちに渡し、踊りにくいかどうかをすごく聞いてくださるんです。『自分が気分よく踊れないとその人のよさが出ないから』って。トニーさんもよくするためにいろいろ提案されるから、何度も何度も振りが変わりました。『ねえレオン、ここは僕が膝で滑ってこう見上げた方がよくないかな?』とか、リフトも『もっと増やしたほうが盛り上がるよね?』って。スーザンさんとトニーさんとが一緒に考えながら進めていく稽古が多かったんですが、自分に合った振りをつけていただけるという経験ができて、感謝しかないです」
ニューヨークでの3カ月で、1人の人間としても、パフォーマーとしても大きな成長を遂げた柚希。まずは「プリンス・オブ・ブロードウェイ」でその成果を見てほしい。
「世界は広いな、果てしないなとつくづく思いましたね。このすごい出演者の中で、自分はどう見えるだろうとか、ファンの方々が幻滅しないだろうとか、たくさん考えて悩んだんですけど、やっぱり自分が楽しみながらやることが大事なんじゃないかと。そうしたら、それを見た人も楽しくなってくれるんじゃないかと思うようになって。自分がここにいて、挑戦しているものを楽しんで見ていただけたら最高にうれしいです」
「プリンス・オブ・ブロードウェイ」は10月23~11月22日、東急シアターオーブで、11月28~12月10日、梅田芸術劇場メインホールで上演される。
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