米で動画配信が急成長 DVDの売上を上回り、17年には映画館の興収も超える見込み
2015年6月18日 06:00
[映画.com ニュース] アメリカ人が映画のストリーミングやダウンロードに支出する金額が、DVDレンタルやセルに支出する金額を今年初めて上回るようだ。これは世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるプライスウォーターハウス(PwC)の調査によるもので、フォーブス・ジャパンが報じた。
アメリカ大手のネットフリックスやHuluなどのデジタルストリーミングサービス、AppleのiTunes Storeなどのダウンロードサービスを合わせたデジタルホームビデオ業界の今年の売上は、前年から増えて95億ドル(12.9%増)、DVDの小売り・レンタル業界の売上は、前年から減少し78億ドル(9.8%減)になる見込み。
ネットフリックスの調査によると、テレビ番組をストリーミング視聴する人の75%が「決められた時間でなく、自分のタイミングで見たい」と回答。各サービスで、番組のエピソードを複数回分、一気に視聴するユーザーも増えているようだ。ネットフリックスは2014年に1900万人の新規ユーザーを獲得し、全世界のユーザー数が5740万人に達した。会員数は伸び続けており、今年の第一四半期には6000万人を突破している。HuluとAmazonプライムも14年にユーザー数が倍増しているという。
また、映画のストリーミングは、映画館の売上にも追いつく勢いをみせているようだ。PwCは、17年にストリーミングとダウンロードによる売上は120億ドルとなり、全米の映画館の売上の118億ドルを超えると予測。市場全体が拡大する中で、ストリーミングがより大きなシェアを獲得すると見ている。
では、日本のビデオソフト市場、動画配信市場はどうか。日本映像ソフト協会(JVA)によると、14年のビデオソフト総売上金額は、前年比8.7%減の2299億2300万円となり、10年連続で前年を割り込んだ。一方、デジタルコンテンツ協会の独自調査によると、14年の動画配信(VOD)市場規模は約1255億円(前年比102%)と推定。市場規模は順調に増加し、19年には2020億円まで成長すると推定している。
なお、アメリカのユーザーは従来のエンタテインメントが持つコミュニティ性(つながりのある集団性)に引き続き価値を見出しており、音楽ライブイベントや映画館は今後も一定のシェアを持ち続けるだろうとPwCは分析。映画館の売上は19年までに年平均4%で成長し、アメリカの消費支出の成長率を上回ると予測。世界的な映画館業界の成長率はさらに高く、19年までに年平均5.7%で成長し、485億ドルに達すると見られている。特に成長著しいのが中国で成長率は年平均15.5%、19年には現在の倍以上の売上規模になると予測している。
ユーザーは、モバイル端末などで視聴する動画配信サービス(デジタル)と映画館での鑑賞(従来メディア)という二者択一ではなく、自分が好きなコンテンツを鑑賞するタイミングや方法について、より柔軟に、自由に、利便性を追求して選択していくものと思われる。アメリカ国内の傾向と世界的なトレンドが日本にも波及するのか。「定額&見放題」を武器に、国内のHulu、dTVといった各動画配信サービスはユーザーの奪い合いを激化させており、今秋にはコンテンツホルダー直営型の新しい映像配信サービス「ボノボ」もスタート予定。同じく今秋上陸予定のネットフリックスのサービススタートが、国内にどのようなインパクトを与えるのか注目される。