【佐々木俊尚コラム:ドキュメンタリーの時代】「ダライ・ラマ14世」
2015年5月17日 06:00
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[映画.com ニュース] チベットの自由と世界平和を訴え、ノーベル賞を受賞した偉人。観音菩薩の化身とされるチベット仏教の最高指導者。ダライ・ラマ法王14世は、まさに生きている神話だ。あまりにも偉大すぎてなんだか遠く、「きっといつも寡黙で、たまに口を開くときには名言が出てくるんだろうなあ」「慈愛に満ちた仏のような人なんだろうなあ」というような凡庸な感想しか持てない。
しかしこの映画で見るダライ・ラマには、非常に驚いた。そういう神話化された存在ではなく、機関銃のように喋り、ジョークを言いまくり、親愛の情をこめて誰にでもハグしてあげている生身のお坊さんがそこにいる。
記者会見で「あなたの生まれ変わる場所は?」と記者に質問され、「地獄です」と即答。ブラックすぎるジョークに、記者が思わず「やめてください!」。こういうびっくりするような面白いシーンがたくさんあって、2時間のあいだ見ていてまったく飽きさせない。
本作は、ダライ・ラマが訪日した際のオフィシャル動画を依頼された写真家親子が、ダライ・ラマに密着して撮影したものだ。さまざまなダライ・ラマの発言が散りばめられ、そしてやはり彼のことばはとても重くて、名言に彩られている。
「変革は空から降ってくるものではありません。政府から与えられるものでもありません。心の中から変わらなければなりません。だれかがスタートを切らなければなりません」
映画では、日本の街頭で若者たちにダライ・ラマへの質問を募り、その質問の様子を録画してダライ・ラマに見せて答えてもらうという趣向も用意されている。最後に監督自身が投げ掛ける質問への答が、驚くほどにストレートだ。
「僕らは世界平和のために何ができるでしょうか」
「日本は科学的にも技術的にも高い水準にあります。しかし心の充足を得られている人は少ないように感じます。多くのストレスを抱え、孤独で、時には自殺さえしてしまう。英語を話すことが必要です。英語を覚え、もっと世界に出てください。日本の若者は視野が狭くなっているせいか、ちょっとしたことですぐに挫折してしまう。英語を覚えて、外の世界に出てください。アフリカや南アメリカの途上国に行って、それらの国に貢献してください。そのことは必ず自信につながるはずです」
狭く息苦しい社会から出て、外の世界に貢献することによって、われわれは自信を取り戻せるのだということ。若者たちだけでなく、日本人には世界でさまざまな役割が用意されている。ダライ・ラマのこのメッセージを真摯に受けとめたい。
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