インドネシア人監督、自国の文化に「逆カルチャーショックを受けた」
2014年10月30日 22:30

[映画.com ニュース] 第27回東京国際映画祭アジアの未来部門に選出された「太陽を失って」が10月30日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、ラッキー・クスワンディ監督とプロデューサーのサマリア・シマンジュンタックがティーチインに出席した。
長年のニューヨーク生活を終え故郷ジャカルタに戻った32歳の同性愛者ギアと、かつての恋人ナオミの再会を軸に、亡き夫の愛人を探す49歳の未亡人、白馬の王子様を待つ24歳の女の3人がそれぞれの物語を紡ぐ。宗教、同性愛、買春などの繊細なテーマを通して、現在のジャカルタにおける社会の風潮を痛烈に風刺する。同映画祭では、本国でカットされたシーンもインターナショナルバージョンとしてそのまま上映された。
自身も主人公と同じく同性愛者であるクスワンディ監督は、本作の脚本は自分の経験に基づいていると語る。「私はダブルマイノリティ」だといい、「アメリカから帰国した際に、中国系インドネシア人であること、同性愛者であることで『私たちに存在する場所はない』と感じた。逆カルチャーショックを受けたんです」と本作を撮ることになったきっかけを明かした。
原題の「Selamat Pagi, Malam」の意味については、「原題は『夜よ、おはよう』という意味。ジャカルタの昼間は本来の街の精神が欠けているけど、夜になると活気づいて本来の姿を現すんだ」と解説。さらに、劇中で人々がインドネシア語と英語を混ぜて話すことに触れ、「ジャカルタではよくあること。例えばインドネシア語で『お水を下さい』と言っても、ウエイターは英語で返してくるんです」と、自国への劣等感や、西洋への強すぎる憧れが、ジャカルタ文化の危機を招いているとして警鐘を鳴らした。
本作が第25回シンガポール国際映画祭のクロージング作品に選ばれるなど、今世界的に注目を集めるクスワンディ監督。今後の計画については「まずは休暇ですね」と笑いながらも「次の長編は探偵のおばあちゃんを主人公にした作品。舞台はリゾートの島だから、日本でも撮れたらいいですね」と話し、観客を喜ばせた。第27回東京国際映画祭は10月31日まで開催。
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